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大お見合い大会 3
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大お見合い大会が開始されて間もなく、ヴァルナルはコルネリアとユリアーネの様子を見ようと、警備の輪に近づき楽しそうに談笑する我が愛娘達の姿を見つめていた。
当然の事ながら、その両手にはペンと紙を握りしめ、愛する姉妹に近づく男共を全員チェックし、メモを取っていた。
そして何故か背には巨大なバスターソードを担いで…。
この親馬鹿侯爵の様な男が街中を歩いていれば、間違いなく衛兵さんに通報される事だろう…不審者だと。
だが、この場に集まった子供達の親は、侯爵であり資産家であるヴァルナルを知らぬ者などいなかった。
故に通報される事も無ければ、当然だが捕まる事も無い。
ただ、背負ったバスターソードは如何なものかと、場違いでは無いかと、彼の部下でもある騎士達にやんわり注意を受けた。
まあ、そんな注意ごときでこの親馬鹿ヴァルナルが大剣を手放すはずも無い。
彼の背負った大剣は、美しいくも愛らしい姿の娘達の柔肌に、ついフラフラと欲望のまま近寄り手を触れようとする者が居れば、即座に斬り捨てるつもりで担いでいるのだから、すぐに手に出来ない場所に置いておくなどあり得ない事なのである。
是非ともこの機会にアルテアン家とお近づきになりたいと願うのは、何もお見合い大会に参加している子供達だけではない。
その親たちも同様に考え、事実ウルリーカの周りには華やかに着飾ったご婦人方が沢山集まり、さながらお茶会の様相を呈していたのだが…鬼気として娘を見守るヴァルナルには、何か邪魔したら斬られるのではないかと感じて誰もが声を掛け無かった。
なので遠巻きにヴァルナルの動向を注視していた参加者の父兄達であったのだが…その為、異変に気付くのが遅れた。
それが何処から発されたものなのか分からない。
だが、確かに悲鳴の様な声が聞こえた。
すわ、事件か!? っと騎士や衛士達がこの場に集う若人やその親族を護るため駆け寄ろうとした時、それを見た。
見上げた視界いっぱいに広がる、空の青とは違うより深い青色の何か。
それをみて騎士達が呆けたのは一瞬の事。
すぐに若人達を守るべく半分は走りだし、もう半分は両親達の元へと駆け、近衛騎士達は王族一家を護るべく走り出す。
ヴァルナルは娘達を背にして囲む騎士や衛士達の姿を見るや否や、1人にしてしまっていた愛する妻の元へと走る。
「うううううウルリーカ! だだだだだだだ大丈夫か!?」
大声をあげて妻の元へと駆け寄るヴァルナル・デ・アルテアン侯爵。
しかしそんな彼など目もくれず、彼の愛する妻はまるで彫刻の様に天を睨み付けて微動だにしなかった。
注意して良く見れば気付いていただろうが、彼女の周りの空間は少しだけ歪んで見える。
お分かりの方も多いかと思うが、ウルリーカ侯爵夫人の周囲には、妖精族の長であるナディアを筆頭に、天鬼族のアーデ、アーム、アーフェンが姿を消してしっかりとガードを固めていたのである。
そればかりか、実はコルネリアとユリアーネにも、幾人もの妖精達が姿を消して、この大会中は常に警護していたのだ。
異常事態となったこの時、全妖精は護衛対象人物を守るべく即座に結界を張ってもいた。
なので、ヴァルナルが不用意に近づくと…、
「んぐぁぁ!」
っと、まぁ…見えない壁にしたたかに顔から突っ込む事になる。
顔を抑えて地面でジタバタもがくヴァルナルを見たウルリーカは、
「ちょっと落ち着きなさい!」
っと、冷たい目で自身の旦那を睨み付けながら一喝した。
「大奥様…。これはマスターの邸でも観測されている様です」
姿こそ見えないが、そうウルリーカに耳打ちしたのはナディアの声。
「そう。で、これは一体何なのかしら?」
肝が太いのか、周囲が阿鼻叫喚の大騒ぎをしているというのに、落ち着き…いやむしろ貫禄さえ漂わせる侯爵夫人。
「マスターからの念話では、あれは他の星の姿を空に浮かべた幻影であると」
「げんえ…ああ、幻の様な物なのね?」
ナディアの話の中に出て来たマスター…つまりは長男であるトールからの情報だと言うだけで、ウルリーカはより冷静になれた。
「仰る通りです」
当たり前のことだが、冷静になれたのはナディアも同じ。
「…そう。では、少し移動しましょうか」
「どちらへ?」
この大混乱の練兵場の何処へ移動しようというのか、ナディアは目的地を訊ねた。
「それは王家ご一家の元へよ。この状況を説明しなければならないでしょうしね。ほら、あなた! いつまで転がっているんですか! さっさと服に着いた土を落としなさい! 陛下たちの元へいきますわよ!」
未だ顔面を抑えて蹲るヴァルナルの襟首を引っ掴み、ウルリーカはずんずんと王城へと向かい歩きはじめた。
ヴァルナルは結構大柄な男性であり、背負った大剣もかなりの重量である。
それを片手で掴んで引きずり歩くウルリーカ…流石はアルテアン家最強のゴッド母ちゃんである…。
当然の事ながら、その両手にはペンと紙を握りしめ、愛する姉妹に近づく男共を全員チェックし、メモを取っていた。
そして何故か背には巨大なバスターソードを担いで…。
この親馬鹿侯爵の様な男が街中を歩いていれば、間違いなく衛兵さんに通報される事だろう…不審者だと。
だが、この場に集まった子供達の親は、侯爵であり資産家であるヴァルナルを知らぬ者などいなかった。
故に通報される事も無ければ、当然だが捕まる事も無い。
ただ、背負ったバスターソードは如何なものかと、場違いでは無いかと、彼の部下でもある騎士達にやんわり注意を受けた。
まあ、そんな注意ごときでこの親馬鹿ヴァルナルが大剣を手放すはずも無い。
彼の背負った大剣は、美しいくも愛らしい姿の娘達の柔肌に、ついフラフラと欲望のまま近寄り手を触れようとする者が居れば、即座に斬り捨てるつもりで担いでいるのだから、すぐに手に出来ない場所に置いておくなどあり得ない事なのである。
是非ともこの機会にアルテアン家とお近づきになりたいと願うのは、何もお見合い大会に参加している子供達だけではない。
その親たちも同様に考え、事実ウルリーカの周りには華やかに着飾ったご婦人方が沢山集まり、さながらお茶会の様相を呈していたのだが…鬼気として娘を見守るヴァルナルには、何か邪魔したら斬られるのではないかと感じて誰もが声を掛け無かった。
なので遠巻きにヴァルナルの動向を注視していた参加者の父兄達であったのだが…その為、異変に気付くのが遅れた。
それが何処から発されたものなのか分からない。
だが、確かに悲鳴の様な声が聞こえた。
すわ、事件か!? っと騎士や衛士達がこの場に集う若人やその親族を護るため駆け寄ろうとした時、それを見た。
見上げた視界いっぱいに広がる、空の青とは違うより深い青色の何か。
それをみて騎士達が呆けたのは一瞬の事。
すぐに若人達を守るべく半分は走りだし、もう半分は両親達の元へと駆け、近衛騎士達は王族一家を護るべく走り出す。
ヴァルナルは娘達を背にして囲む騎士や衛士達の姿を見るや否や、1人にしてしまっていた愛する妻の元へと走る。
「うううううウルリーカ! だだだだだだだ大丈夫か!?」
大声をあげて妻の元へと駆け寄るヴァルナル・デ・アルテアン侯爵。
しかしそんな彼など目もくれず、彼の愛する妻はまるで彫刻の様に天を睨み付けて微動だにしなかった。
注意して良く見れば気付いていただろうが、彼女の周りの空間は少しだけ歪んで見える。
お分かりの方も多いかと思うが、ウルリーカ侯爵夫人の周囲には、妖精族の長であるナディアを筆頭に、天鬼族のアーデ、アーム、アーフェンが姿を消してしっかりとガードを固めていたのである。
そればかりか、実はコルネリアとユリアーネにも、幾人もの妖精達が姿を消して、この大会中は常に警護していたのだ。
異常事態となったこの時、全妖精は護衛対象人物を守るべく即座に結界を張ってもいた。
なので、ヴァルナルが不用意に近づくと…、
「んぐぁぁ!」
っと、まぁ…見えない壁にしたたかに顔から突っ込む事になる。
顔を抑えて地面でジタバタもがくヴァルナルを見たウルリーカは、
「ちょっと落ち着きなさい!」
っと、冷たい目で自身の旦那を睨み付けながら一喝した。
「大奥様…。これはマスターの邸でも観測されている様です」
姿こそ見えないが、そうウルリーカに耳打ちしたのはナディアの声。
「そう。で、これは一体何なのかしら?」
肝が太いのか、周囲が阿鼻叫喚の大騒ぎをしているというのに、落ち着き…いやむしろ貫禄さえ漂わせる侯爵夫人。
「マスターからの念話では、あれは他の星の姿を空に浮かべた幻影であると」
「げんえ…ああ、幻の様な物なのね?」
ナディアの話の中に出て来たマスター…つまりは長男であるトールからの情報だと言うだけで、ウルリーカはより冷静になれた。
「仰る通りです」
当たり前のことだが、冷静になれたのはナディアも同じ。
「…そう。では、少し移動しましょうか」
「どちらへ?」
この大混乱の練兵場の何処へ移動しようというのか、ナディアは目的地を訊ねた。
「それは王家ご一家の元へよ。この状況を説明しなければならないでしょうしね。ほら、あなた! いつまで転がっているんですか! さっさと服に着いた土を落としなさい! 陛下たちの元へいきますわよ!」
未だ顔面を抑えて蹲るヴァルナルの襟首を引っ掴み、ウルリーカはずんずんと王城へと向かい歩きはじめた。
ヴァルナルは結構大柄な男性であり、背負った大剣もかなりの重量である。
それを片手で掴んで引きずり歩くウルリーカ…流石はアルテアン家最強のゴッド母ちゃんである…。
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