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第2章 紡がれる希望
第24話 誓いの騎士
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アメリカ中央拠点クレイドル 北部
「「ユウキ!!」」
茫然と上空を見上げたユウキの元へと駆け寄った二人は、光の灯っていない瞳をしたユウキが一人で現れた事から全ての顛末を悟り口を閉ざしてしまった。
(……姫)
ヨハネは結晶の小部屋が創造されていた場所へと視線を向けたい気持ちを抑え正面に立つ少女に視線を向け続けた。
「え?……誰?」
ヨハネの正面に立つ少女は、大鎌を引き摺りながらヨハネへと歩み寄り始めた。
しかしその瞳は、ヨハネではなく背後に座り込んでいるユウキに向けられていた。
「…………ユウトハ?」
少女の瞳は、徐々に黒く染まり身体全身を覆う様に〝赤黒い水〟が出現し始めた。
「女に用はないの……シンデ」
そう告げた瞬間少女は、表情を変えないまま引き摺っていた大鎌をユウキに振り投げた。
「そうはさせん!」
回転しながらユウキに向けて投げられた大鎌を、ヨハネは大刀を正面に構えて受け止めた。
「くっ!……はぁぁぁぁあ!!」
甲高い音を立てて防がれた大鎌は、少女の殺意を証明するには十分な程に重くヨハネは、予想以上の力に目を見開いたが渾身の力を振り絞り大鎌を少女に向けて跳ね返した。
(なんだ……〝力が抜ける〟……あの属性の影響か?)
「ジャマシタ……ワタシノ」
少女は、跳ね返された大鎌を避ける事なく立ち尽くしていた。
大鎌は少女の身体を貫き鮮血が吹き出していたが、少女は微動だにする事なく立ち尽くしヨハネに黒い瞳を向けた。
「そう………シニタイノ」
少女は自身に突き刺さった大鎌を、徐に引き抜くと霧のように姿を消した。
(またか……相手が姿を眩ませた時に意識を向けるべきは背後……だが例外はある)
ヨハネは両手で構えていた大刀を、勢い良く地面へと突き刺した。
(奴が姿を眩ませた方法が、クライフと同じ仕組みならば警戒を一点に絞る戦略は愚策)
突き刺した紅蓮の大刀は、徐々にその赤みを強め自身の周囲に位置する地面に紅の亀裂が広がっていった。
(この策は……奴ならば釣れる筈だ)
『焔の大陸』
紅蓮の炎が地底で爆発を起こすと、周囲に存在した地面は近辺から次々に隆起し始めた。
「近くにいなければ意味ないんでしょ?私だってそれくらい知ってるよ……残念でした⭐︎」
少女は霧になった場所から殆ど移動しない状態で、再び姿を現した。
(油断は戦場において最大の敵だ)
『業火の柱』
その瞬間少女の足元は、紅蓮に染まると同時に少女の身体全体を呑み込む程の巨大な炎の柱が燃え上がった。
(私の姿を視認出来なくなれば、追撃されないと油断し姿を現すだろうと読んでいた)
「あぁぁぁぁああ!!」
炎の柱に包まれた少女は、自身の属性を解放させ柱となっていた炎を周囲に弾け飛ばした。
少女の身体には、先程の赤黒い水が纏わり付いており少女が貫かれた腹部に水が張り付くと、その傷は徐々に〝治癒〟されていった。
「お前の属性は水属性二種のようだな……その内一種は、異質な属性だ」
ヨハネは霧の様に姿を消す方法としては、クライフが使用していた水属性を身体に纏わせる方法を考察した。
そして傷を治癒する方法としては、ヒナやクライフが使用しているマイナスの水属性特有の治癒特性を考察したが、緑色である筈の水属性が赤黒い所からユカリやファイスの様に異質な属性である事を予想した。
「あはぁ♡よく見てるねオマエ」
少女は、不気味な笑みを浮かべ身体に纏わり付く水に優しく触れた。
「これが、私の愛なの……そして私の身体を傷付けようとした害虫には……最も残酷な愛をあげる⭐︎」
少女は両手で大鎌を構えると、再び霧の様に姿を眩ませた。
『愛』
突如合わせ鏡の様に現れた複数の大鎌の刃は、ヨハネの首を囲む様に円状に出現すると、首を刎ねる様に引かれた。
「くっ!」
ヨハネは咄嗟に、しゃがみ込む事で大鎌の刃を避けた。
「ハズレちゃった⭐︎」
しゃがんだヨハネの目の前に現れた少女は黒く澱んだ瞳で、ヨハネを凝視すると地面を切り裂きながら勢い良く大鎌を振り上げた。
「あまり……図に乗るなっ!」
自身に向けて振り上げられた大鎌目掛けてヨハネは、紅蓮の炎を纏った大刀を払った。
『業火の剣』
双方の刃がぶつかり合った瞬間に、強烈な衝撃波が周囲に広がり転生前のヨハネ戦で積み上げられたビル群の瓦礫は周囲に吹き飛ばされた。
「さっき貴女が避けた技には、〝私の名前〟を名付けてあるの⭐︎確実に愛を与えられる技だから……でも、貴女は避けちゃった……避けちゃ駄目なんだよ?」
「悪いが、私が受ける愛はただ一人……そして私が向ける愛も一人だけだ!」
均衡していた斬撃の内ヨハネの属性を纏わせた大刀は、徐々に紅蓮の炎が勢いを増していき少女を呑み込む程に巨大な紅の斬撃が少女に向けて放たれた。
「…………」
無言のまま斬撃内に消えて行った少女は、障壁によって影響を受けていなかったビル群を薙ぎ倒しながら後方へと吹き飛ばされて行った。
「くっ!」
ヨハネは払った大刀を地面に突き刺し立ち上がると、苦悶の表情を浮かべながら少女の吹き飛んだ方向を見つめていた。
(あの属性……恐らく触れた者の〝属性を奪う事で自身の治癒〟を行なっている。この仮説ならば先の大鎌を防いだ時に感じた妙な脱力感にも合点がいく)
息を整えたヨハネは、大刀を引き抜くと土煙を放つビル群に意識を集中させようとした時ヨハネの脳裏に、一抹の不安が過った。
(予想以上に消耗が激しい……これ以上属性を奪われる事は好ましくない)
ヨハネの不安は徐々に膨れ上がり、少女に向けていた意識が逸れ始めていた。
(属性を奪われ力を消耗しているだけではない……私と奴の実力差では勝ち目が)
そこまで考えた時ヨハネは、ハッと我に帰り大刀を握っていた左手で自身の頬を叩いた。
「……何を恐れる必要がある……転生した私は、天月のヨハネではない」
再び大刀を両手で握り締めたヨハネは、決意を秘めた眼差しで瓦礫と化したビル群を見つめた。
「私はもう人から讃えられる様な存在ではない……何者でもない今の私は、一人の人間として……一人の女として……かけがえのない姫の為ならば無敵の盾にも不屈の矛にもなると私自身に誓った」
ヨハネが大刀を構えた瞬間に、正面に山積みになった瓦礫は周辺に吹き飛び中から身体全体に赤黒い属性を帯びたルアが姿を現した。
「殺す……ころす………コロス」
ドス黒い瞳でヨハネを見つめたルアは、大鎌に属性を纏わせると姿を眩ませることなくヨハネに向けて地面を蹴り飛んだ。
『嫉妬』
ルアは、身体を回転させながら横薙ぎに大鎌を払った。
すると大鎌の刃から赤黒い水が、刃の形状を保ったまま硬化しヨハネに向かって放たれた。
「攻撃を避ければ後ろの女達に当たるよ⭐︎」
笑みを浮かべながら忠告したルアだったが、その瞳は黒く澱んだままヨハネに向けられていた。
「知っている」
ヨハネはそう言うと、両手で握り締めた大刀を天高く掲げた。
「姫の騎士として……仇なす者は、私が全て斬り伏せてみせよう」
『黄昏の終幕』
ヨハネが力強く振り下ろした斬撃からは、蒼炎の斬撃が放たれた。
双方の放った斬撃は、中央で衝突すると地響きを轟かせルアの後方に存在するビル群のガラスを全て破る程の強風を発生された。
「あはは⭐︎…………あれ?」
満面の笑みを浮かべていたルアは、視線の先に違和感を感じ表情を曇らせた。
ルアの放った赤黒い斬撃が、徐々に真紅に染められ始めていた。
ヨハネの放った斬撃は、マイナスの炎の内部にプラスの炎が含まれており二種類の属性力に押し負け始めたルアの斬撃はヨハネの属性によって赤く染まり始めていた。
「言っただろう……最強を自分で名乗る者にその先は無いと」
ヨハネの斬撃が、ルアの斬撃を上書きすると横薙ぎに放たれた斬撃は消滅しルアは、蒼炎に呑み込まれて行った。
―*―*―*―*―
ルアとの戦闘が終わり、辺りに静寂が広がりユウキを守る様に立っていた二人は、茫然とヨハネの後ろ姿を見つめていた。
「……」
土煙の舞う瓦礫を見つめていたヨハネだったが、小さく溜息を吐くと身を翻しユウキに向けて歩み寄った。
「二人とも有難う……私が戦闘をしている間に姫……ユウキを守ってくれて」
「いえ、それはこちらの台詞です……ユウキを守って下さり有り難うございました」
ユウがお辞儀をする姿を見たウトは、釣られる様に『ありがとう』と言いながらお辞儀をした。
「いや、まだ終わりではない……奴がこの程度で終わる筈がない」
「あれでまだ生きてるんだ……しぶとい」
「それ程までに、奴のユウトに対する想いは強いのだろう」
ヨハネはそう告げると、大刀を地面に突き刺し依然として空を茫然と見上げているユウキの前にしゃがみ込んだ。
「すまないが、少しの間だけ二人とも後ろを見ていてくれないか?」
「え?……分かりました」
「分かった」
二人は、ユウキとヨハネから視線を逸らすように逆方向に身体を向けた。
「姫……失礼」
そう告げるとヨハネは、ユウキの顎を指で軽く抑えると反応のないユウキに口づけを交わした。
「…………」
口づけを終えたヨハネが顔を離すと、今まで反応のなかったユウキの頬が徐々に赤みを帯びていき顔から湯気が出始めていた。
「私なりの誓いだ」
「……へ?」
口を閉ざしていたユウキが、ようやく口を開き発した声は裏返った調子外れの声だった。
「しかし安心して欲しい……我が国で接吻は挨拶だ」
「位置間違えてませんか?」
「私の想いの現れだ」
ヨハネから煌々とした瞳を向けられたユウキは、顔を赤らめたまま目線を逸らした。
その瞳は、本人が気付かぬ内に光の灯った瞳へと変わっていた。
「失った者の創造は何度でもやり直せる」
「え?」
顔を上げると、ユウキにヨハネの真剣な眼差しが向けられていた。
「それ程までに想っている人なのだろう?……私と対峙した時に伝わって来た強い想いならば必ず成し遂げられる……その為ならば私の全てを貴女に捧げましょう」
「ヨハネ……」
ヨハネはゆっくりと立ち上がると、突き刺した大刀を引き抜いた。
「二人とも姫を頼んだ……奴は私が必ず討つ」
振り向いた二人は、ヨハネに向けて力強く頷いた。
「はいっ!任せて下さい!」
「任せて」
二人の返答に頷いたヨハネは、大刀を両手で構えるとルアが飛ばされた瓦礫に向けて視線を向け力強く握り締めていた。
―*―*―*―*―
そんな中、瓦礫の下敷きになっていた少女は身体全体を属性で覆い赤黒く染まっていた。
「あはは♡……あの女………絶対にユルサナイ」
少女の纏っていた赤黒い属性は、赤色を完全に失い真っ黒に染まっていた。
「「ユウキ!!」」
茫然と上空を見上げたユウキの元へと駆け寄った二人は、光の灯っていない瞳をしたユウキが一人で現れた事から全ての顛末を悟り口を閉ざしてしまった。
(……姫)
ヨハネは結晶の小部屋が創造されていた場所へと視線を向けたい気持ちを抑え正面に立つ少女に視線を向け続けた。
「え?……誰?」
ヨハネの正面に立つ少女は、大鎌を引き摺りながらヨハネへと歩み寄り始めた。
しかしその瞳は、ヨハネではなく背後に座り込んでいるユウキに向けられていた。
「…………ユウトハ?」
少女の瞳は、徐々に黒く染まり身体全身を覆う様に〝赤黒い水〟が出現し始めた。
「女に用はないの……シンデ」
そう告げた瞬間少女は、表情を変えないまま引き摺っていた大鎌をユウキに振り投げた。
「そうはさせん!」
回転しながらユウキに向けて投げられた大鎌を、ヨハネは大刀を正面に構えて受け止めた。
「くっ!……はぁぁぁぁあ!!」
甲高い音を立てて防がれた大鎌は、少女の殺意を証明するには十分な程に重くヨハネは、予想以上の力に目を見開いたが渾身の力を振り絞り大鎌を少女に向けて跳ね返した。
(なんだ……〝力が抜ける〟……あの属性の影響か?)
「ジャマシタ……ワタシノ」
少女は、跳ね返された大鎌を避ける事なく立ち尽くしていた。
大鎌は少女の身体を貫き鮮血が吹き出していたが、少女は微動だにする事なく立ち尽くしヨハネに黒い瞳を向けた。
「そう………シニタイノ」
少女は自身に突き刺さった大鎌を、徐に引き抜くと霧のように姿を消した。
(またか……相手が姿を眩ませた時に意識を向けるべきは背後……だが例外はある)
ヨハネは両手で構えていた大刀を、勢い良く地面へと突き刺した。
(奴が姿を眩ませた方法が、クライフと同じ仕組みならば警戒を一点に絞る戦略は愚策)
突き刺した紅蓮の大刀は、徐々にその赤みを強め自身の周囲に位置する地面に紅の亀裂が広がっていった。
(この策は……奴ならば釣れる筈だ)
『焔の大陸』
紅蓮の炎が地底で爆発を起こすと、周囲に存在した地面は近辺から次々に隆起し始めた。
「近くにいなければ意味ないんでしょ?私だってそれくらい知ってるよ……残念でした⭐︎」
少女は霧になった場所から殆ど移動しない状態で、再び姿を現した。
(油断は戦場において最大の敵だ)
『業火の柱』
その瞬間少女の足元は、紅蓮に染まると同時に少女の身体全体を呑み込む程の巨大な炎の柱が燃え上がった。
(私の姿を視認出来なくなれば、追撃されないと油断し姿を現すだろうと読んでいた)
「あぁぁぁぁああ!!」
炎の柱に包まれた少女は、自身の属性を解放させ柱となっていた炎を周囲に弾け飛ばした。
少女の身体には、先程の赤黒い水が纏わり付いており少女が貫かれた腹部に水が張り付くと、その傷は徐々に〝治癒〟されていった。
「お前の属性は水属性二種のようだな……その内一種は、異質な属性だ」
ヨハネは霧の様に姿を消す方法としては、クライフが使用していた水属性を身体に纏わせる方法を考察した。
そして傷を治癒する方法としては、ヒナやクライフが使用しているマイナスの水属性特有の治癒特性を考察したが、緑色である筈の水属性が赤黒い所からユカリやファイスの様に異質な属性である事を予想した。
「あはぁ♡よく見てるねオマエ」
少女は、不気味な笑みを浮かべ身体に纏わり付く水に優しく触れた。
「これが、私の愛なの……そして私の身体を傷付けようとした害虫には……最も残酷な愛をあげる⭐︎」
少女は両手で大鎌を構えると、再び霧の様に姿を眩ませた。
『愛』
突如合わせ鏡の様に現れた複数の大鎌の刃は、ヨハネの首を囲む様に円状に出現すると、首を刎ねる様に引かれた。
「くっ!」
ヨハネは咄嗟に、しゃがみ込む事で大鎌の刃を避けた。
「ハズレちゃった⭐︎」
しゃがんだヨハネの目の前に現れた少女は黒く澱んだ瞳で、ヨハネを凝視すると地面を切り裂きながら勢い良く大鎌を振り上げた。
「あまり……図に乗るなっ!」
自身に向けて振り上げられた大鎌目掛けてヨハネは、紅蓮の炎を纏った大刀を払った。
『業火の剣』
双方の刃がぶつかり合った瞬間に、強烈な衝撃波が周囲に広がり転生前のヨハネ戦で積み上げられたビル群の瓦礫は周囲に吹き飛ばされた。
「さっき貴女が避けた技には、〝私の名前〟を名付けてあるの⭐︎確実に愛を与えられる技だから……でも、貴女は避けちゃった……避けちゃ駄目なんだよ?」
「悪いが、私が受ける愛はただ一人……そして私が向ける愛も一人だけだ!」
均衡していた斬撃の内ヨハネの属性を纏わせた大刀は、徐々に紅蓮の炎が勢いを増していき少女を呑み込む程に巨大な紅の斬撃が少女に向けて放たれた。
「…………」
無言のまま斬撃内に消えて行った少女は、障壁によって影響を受けていなかったビル群を薙ぎ倒しながら後方へと吹き飛ばされて行った。
「くっ!」
ヨハネは払った大刀を地面に突き刺し立ち上がると、苦悶の表情を浮かべながら少女の吹き飛んだ方向を見つめていた。
(あの属性……恐らく触れた者の〝属性を奪う事で自身の治癒〟を行なっている。この仮説ならば先の大鎌を防いだ時に感じた妙な脱力感にも合点がいく)
息を整えたヨハネは、大刀を引き抜くと土煙を放つビル群に意識を集中させようとした時ヨハネの脳裏に、一抹の不安が過った。
(予想以上に消耗が激しい……これ以上属性を奪われる事は好ましくない)
ヨハネの不安は徐々に膨れ上がり、少女に向けていた意識が逸れ始めていた。
(属性を奪われ力を消耗しているだけではない……私と奴の実力差では勝ち目が)
そこまで考えた時ヨハネは、ハッと我に帰り大刀を握っていた左手で自身の頬を叩いた。
「……何を恐れる必要がある……転生した私は、天月のヨハネではない」
再び大刀を両手で握り締めたヨハネは、決意を秘めた眼差しで瓦礫と化したビル群を見つめた。
「私はもう人から讃えられる様な存在ではない……何者でもない今の私は、一人の人間として……一人の女として……かけがえのない姫の為ならば無敵の盾にも不屈の矛にもなると私自身に誓った」
ヨハネが大刀を構えた瞬間に、正面に山積みになった瓦礫は周辺に吹き飛び中から身体全体に赤黒い属性を帯びたルアが姿を現した。
「殺す……ころす………コロス」
ドス黒い瞳でヨハネを見つめたルアは、大鎌に属性を纏わせると姿を眩ませることなくヨハネに向けて地面を蹴り飛んだ。
『嫉妬』
ルアは、身体を回転させながら横薙ぎに大鎌を払った。
すると大鎌の刃から赤黒い水が、刃の形状を保ったまま硬化しヨハネに向かって放たれた。
「攻撃を避ければ後ろの女達に当たるよ⭐︎」
笑みを浮かべながら忠告したルアだったが、その瞳は黒く澱んだままヨハネに向けられていた。
「知っている」
ヨハネはそう言うと、両手で握り締めた大刀を天高く掲げた。
「姫の騎士として……仇なす者は、私が全て斬り伏せてみせよう」
『黄昏の終幕』
ヨハネが力強く振り下ろした斬撃からは、蒼炎の斬撃が放たれた。
双方の放った斬撃は、中央で衝突すると地響きを轟かせルアの後方に存在するビル群のガラスを全て破る程の強風を発生された。
「あはは⭐︎…………あれ?」
満面の笑みを浮かべていたルアは、視線の先に違和感を感じ表情を曇らせた。
ルアの放った赤黒い斬撃が、徐々に真紅に染められ始めていた。
ヨハネの放った斬撃は、マイナスの炎の内部にプラスの炎が含まれており二種類の属性力に押し負け始めたルアの斬撃はヨハネの属性によって赤く染まり始めていた。
「言っただろう……最強を自分で名乗る者にその先は無いと」
ヨハネの斬撃が、ルアの斬撃を上書きすると横薙ぎに放たれた斬撃は消滅しルアは、蒼炎に呑み込まれて行った。
―*―*―*―*―
ルアとの戦闘が終わり、辺りに静寂が広がりユウキを守る様に立っていた二人は、茫然とヨハネの後ろ姿を見つめていた。
「……」
土煙の舞う瓦礫を見つめていたヨハネだったが、小さく溜息を吐くと身を翻しユウキに向けて歩み寄った。
「二人とも有難う……私が戦闘をしている間に姫……ユウキを守ってくれて」
「いえ、それはこちらの台詞です……ユウキを守って下さり有り難うございました」
ユウがお辞儀をする姿を見たウトは、釣られる様に『ありがとう』と言いながらお辞儀をした。
「いや、まだ終わりではない……奴がこの程度で終わる筈がない」
「あれでまだ生きてるんだ……しぶとい」
「それ程までに、奴のユウトに対する想いは強いのだろう」
ヨハネはそう告げると、大刀を地面に突き刺し依然として空を茫然と見上げているユウキの前にしゃがみ込んだ。
「すまないが、少しの間だけ二人とも後ろを見ていてくれないか?」
「え?……分かりました」
「分かった」
二人は、ユウキとヨハネから視線を逸らすように逆方向に身体を向けた。
「姫……失礼」
そう告げるとヨハネは、ユウキの顎を指で軽く抑えると反応のないユウキに口づけを交わした。
「…………」
口づけを終えたヨハネが顔を離すと、今まで反応のなかったユウキの頬が徐々に赤みを帯びていき顔から湯気が出始めていた。
「私なりの誓いだ」
「……へ?」
口を閉ざしていたユウキが、ようやく口を開き発した声は裏返った調子外れの声だった。
「しかし安心して欲しい……我が国で接吻は挨拶だ」
「位置間違えてませんか?」
「私の想いの現れだ」
ヨハネから煌々とした瞳を向けられたユウキは、顔を赤らめたまま目線を逸らした。
その瞳は、本人が気付かぬ内に光の灯った瞳へと変わっていた。
「失った者の創造は何度でもやり直せる」
「え?」
顔を上げると、ユウキにヨハネの真剣な眼差しが向けられていた。
「それ程までに想っている人なのだろう?……私と対峙した時に伝わって来た強い想いならば必ず成し遂げられる……その為ならば私の全てを貴女に捧げましょう」
「ヨハネ……」
ヨハネはゆっくりと立ち上がると、突き刺した大刀を引き抜いた。
「二人とも姫を頼んだ……奴は私が必ず討つ」
振り向いた二人は、ヨハネに向けて力強く頷いた。
「はいっ!任せて下さい!」
「任せて」
二人の返答に頷いたヨハネは、大刀を両手で構えるとルアが飛ばされた瓦礫に向けて視線を向け力強く握り締めていた。
―*―*―*―*―
そんな中、瓦礫の下敷きになっていた少女は身体全体を属性で覆い赤黒く染まっていた。
「あはは♡……あの女………絶対にユルサナイ」
少女の纏っていた赤黒い属性は、赤色を完全に失い真っ黒に染まっていた。
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