創造した物はこの世に無い物だった

ゴシック

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第1章 光の導き手

第25話 Defeat

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 ※心の中では「」と()の意味が逆転しています。
 「」 心の声  () 会話

 心の中 闇のドーム内

 そこは、〝闇〟だった。

 光を全て遮断し、目を開けているのか閉じているのかも解らなくなる程の闇。

 静寂が空間を包み、音すらも感じていないのかと思い始めた時。

 ユウトは視界の先に、黒い塊を発見した。

 人の様な形をしているが、性別を確認する事はできなかった。

 (誰だ、お前?どうやってここに来た)

 静寂を破ったのは、ユウトではなく黒い塊だった。

 黒い塊から発せられた声は、男か女か解らない変声機を使用している様な声をしていた為、やはり性別の判断はつかなかった。

 (俺はユウト。ここには歩いて来た)

 (違う。ここに〝光の人間〟が入る事は出来ない筈だ……そうかお前、〝つがい〟か)

 黒い塊に見えていた存在は、ゆっくりと立ち上がり黒い人型である事を認識させた。

 (何を言ってるんだ?番いってどういう事だ)

 (お前、何しにここに来た?)

「話が噛み合わない……なんなんだ?こいつは」

 (……単刀直入に言わせて貰うが、このドームを消えてくれないか?)

 (は?)

 (ここは、俺の心の中だ……お前がもしドームの主なら、早急に消して欲しい)

 (……)

 (とは言え、身体の主は俺だから拒否権なんて無い様な物だけど)

 ユウトが言葉を終えた瞬間、目の前の人型は姿を消えていた。

 そして気が付くと、腹部に激痛が走っていた。

 (……がはっ!)

 先程姿を消した黒い人型は、ユウトの至近距離まで迫り、腹部に痛烈な蹴りを浴びせていた。

 (なんだ……誰かと話をしていたと思ったが、相手はただの埃だったな)

 腹部を右脚で蹴られたユウトは、その場で上体を前に傾けた。

 そして下がった頭に向けて、黒い人型は身体を回転させて追撃の左脚蹴りを打ち込んだ。

 (っ!……)

 吹き飛ばされたユウトは、地面を数度転がりドームの壁寸前で停止した。
 
  (埃と話をしていたなんて、〝俺〟もどうかしてたな)

 意識が朦朧とし、立ち上がれずにいたユウトの頭上から再び声が聞こえた。

 (消えるのは、お前なんだよ)

 倒れているユウトを黒い人型は左手だけで軽々と持ち上げ、右手に〝黒い炎〟を纏わせた。

 (じゃあな)

 ユウトの顔面目掛け炎の拳が放たれ、炎はユウトの全身を包むと、そのままドームに激突した。

 ユウトは衝撃によって意識を失うと、炎に包まれながらドームの外へと追放された。

―*―*―*―*―

 心の中

 (ふわあっ!な、何?)

 ユウト(女)は、入る前と同様に銃の手入れをしていたが、火ダルマの状態で出てきたユウトに驚きの声を上げて駆け寄った。

「創造するのは、火が消えているユウト」

 ユウトの身を包んでいた炎は、ユウト(女)の創造によって瞬時に消え去った。

 (大丈夫?ユウト)

 (あ……れ、俺……一体何を?)

 (何をって、僕が聞きたいんだけど?)

 (イテテ……駄目だ。ドームに入る前の記憶までしか覚えて無い……一体何があったんだ?)

 (それについても、僕の方が聞きたいんだよね)

 二人は怪訝とした表情をしながら、不気味な存在感を放ち続ける黒いドームを見つめていた。

―*―*―*―*―

「ピーポーピーポー!治癒のお時間です!」

 ヒナは倒れているレンに駆け寄ると、属性による回復を始めた。

「……」

 ユキはレンをじっと見つめていたが、レンが意識を取り戻したと同時に目を逸らした。

「う……ん、僕は……負けちゃったのかな?」

 倒れた状態のレンは、そっぽを向いていたユキに声を掛けた。

「手合わせに勝ちも負けも無いでしょ?……男の意地って奴も、案外侮れない物なのね」

「ははは、君に伝える事が出来たなら……僕は少しだけ成長する事が出来たのかな」

 レンに視線を合わせたユキは、向けられた屈託の無い笑顔に赤面し、再びそっぽを向いた。

「な、何言ってんの!あんたなんかまだまだよ!」

 ユキはそう言い、扉に向けて歩き出した。

「回復ありがとうヒナ……ユキ、どこに行くんだい?」

 傷の回復を終えたレンは、ヒナにお礼をすると扉へと向かうユキに声を掛けた。

「気晴らしにルクスの様子を確認しに行くのよ」

「一人で?」

「足手まといは要らないのよ」

 レンに視線を合わせずに歩み始めたユキの隣に、レンは足早に歩み寄った。

「それじゃあ僕も行こうかな」

「要らないって言ってるでしょ!」

「足手まといにはならないから、良いよね」

「うっ……はぁ、分かったわよ……好きにして」

 レンは真剣な眼差しでユキを説得すると、ユキは意外とあっさり諦めた。

「あんた達はどうすんの?」

 ユキは、修練場に残っていたカイ達三人に声を掛けた。

「あ?そうだな……鍛錬だけだとマンネリになるし、実戦も必要だな!それに……俺も戦いたかったしな!」

「シュウ起きろ、実戦の時間だぞ?」

 カイは眠っているシュウを起こす為に、優しく肩を叩いた。

「んゅ……後一周……すやすや」

「一周ってなんだよ!地球がか?そんなに待てるか!……さっさと起きろ!」

 エムの叫びで目を覚ましたシュウは、カイに手を引かれながら修練場を後にした。

「私も行きましょうか?レン」

「ヒナ、君はユカリの側にいてあげて欲しい。いつ目を覚ますのか解らないけど、誰かいてあげた方がユカリも寂しくならないだろうからね」

「わかりました!……レン、ユキ、怪我には気をつけて下さいね」

「……ありがとう」

 ユキはヒナの優しい言葉に小声で感謝の言葉を呟くと、カイ達の後を追って転移エリアへと向かって行った。

「それじゃあ、行ってくるよ!ヒナ」

「はいっ!全員無事に帰ってきて下さいね!」

 ヒナの見送りを背に、レンはユキの後を追って駆け出した。

―*―*―*―*―

「ここから僕達の冒険が始まるんだね!楽しみだなぁ……ねっ!お兄ちゃん!」

 さっきまで寝ていたとは思えない程興奮していたシュウは、転移エリアをウロウロと動き回っていた。

「ちょっと!鬱陶しいんですけど!」

 視界を彷徨いていたシュウに苛ついていたユキは、満面の笑みを浮かべるシュウに怒りの声を発した。

「同感だな……ちょっとは大人しくしやがれシュウ!素振り百回やらせるぞ?」

 ユキの言葉には反応しなかったシュウだったが、エムの一言を聞いた瞬間にピタリと動きを止め、カイの背後に隠れると涙目で二人を見つめていた。

「お前、ユウトの割には気が合いそうだな!」

 エムは、呆れ顔をしていたユキを見つめて笑みを浮かべた。

「あんたと気が合っても嬉しくないんですけど?」

 ユキは相変わらず、腕を組んでそっぽを向いていた。

「あいつといるよか、よっぽどマシだぜ!ずっとお前のままで良いんじゃねえか?」

「お前じゃない……ユキよ」

 自分をユキと認めてしまった事に気づきハッとなると、誤魔化す様に転移エリアを起動させた。

「……良い?強い奴の相手は私がやるから」

「今回は実戦練習だからな!俺達は雑魚の相手でもして、転生後の小手調べでもしてるぜ!お前に獲物はくれてやるから感謝しろよ!」

「なんで感謝しなきゃなんないのよ!」

 笑みを浮かべるエムに対して、ユキは怒りのツッコミを入れた。

「ユキがみんなと仲良くなれて良かったよ」

「どこが!」

 隣で優しく微笑むレンにもツッコミを入れた瞬間、五人は白い光に包まれ消えていった。
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