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そして、異世界人になる
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しおりを挟む「王、無事に帰れ安堵しました」
「そうだな」
何やら険しい表情の王。
「どうかなさいましたか?」
「いや、皆が心配しているから報告へ行く。お前は先に休め」
「いえ、私も報告へ」
「いい、先に休め」
護衛を引き連れ二人の王の元へ行ってしまわれた。気を使って下さったのか…
「クラム様!ご無事で!!」
案の定、前回の王のように皆が身を案じ心配してくれていた。理由を話すとやはり周りの口数が減ったのがよくわかる。王もこのように信じてもらえなかったのだなと前回の態度を反省した。自分が経験しない限り理解は確かに難しいだろうと私も思い深くは話さなかった。
口下手な王が何を説明したかわからなかったが後日婚姻が破談になるような言葉を言ったのはこの時に断りをいれていたと後でわかった。
王はすでにやまとさんに大いなる好意を寄せていた。
「クラム、何故あちらの国に行けたかわかるか?」
「そうですね…突然でしたから。角を曲がったと思ったらもう移動していました」
「…そうだな」
あれから何度もその場所に足を運んでは確認していたが異変は無かった。
「今日もですか?」
「……。」
「討伐もこなした。魔物も落ち着いている」
「だからといって毎日のように来ても…」
フィグは考えていた、やまとは何か条件があるのではと探っていて実際に戻れた。向こうから帰る時は必ず夜でしかもあの行為のすぐ後。こちらからは全く意図せず来れてしまう。
何か必ず手がかりがあるはずだと。やまとに見送られながらも次を考えていたフィグは会いに行く術を掴むべく思考を凝らしていた。
どうしたらやまとに会える…
「っ…やまと…やまと…会いたい」
と己を慰めその精液を容器に入れ同じ場所で垂らしてみたがモヤモヤは現れなかった。
体液ではないのか…だとしたら何だ。行為は関係なく別の要素なのか
といいつつ夜な夜な暇があればやまとで抜いているフィグですがある日偶然、向こうに行ける手立てがわかる。
やまとに会う為の思考に時間を多く取りたく魔物狩りをしまくったお陰で国は平和になった。その功績を祝い更にお祝い事を重ねようと婚姻ムードが沸き上がっていた。
「フィグ、よくやった。これで魔物も落ち着く」
「こんなにも早く安堵が訪れるとはな」
「お前も待たせていた妃を迎えてはどうだ?」
「前も話したが必要ない」
「何故だ、今ならすぐにでもできる。顔合わせをしてみたらどうだ?」
「必要ない」
二人はフィグが奥手だと思い気を利かせたがそれが大間違いだった。
一方相変わらず上手く説明ができないフィグにはそれ以上話せる事はなくしっかり自分の想いを伝えなれないまま、知らない内に話が進められていた。
顔合わせの段取りを勝手にし、何も知らぬフィグを部屋に呼んだ。急にそんな事になりこのまま好きでもない相手と婚姻などできるはずもなく。相手を見るなり丁寧なお断りした。
「口づけが下手な人は嫌だから慣れた人がいい」
と貞操をぶち破る最大級の言葉で破談の宣告をした。周りは唖然としクラムは額を抑え部屋を出る王を追った。
「待ってください!」
聞く耳など持たない王の腕を引っ張り引き留めた。
「王!何て事を言うんですか!」
「必要ないと言ったのにあいつらが勝手にするからだ」
「にしても、あれは無いです!」
「俺は断った」
「王!口づけをしてる未婚の方などおりませんよ!」
クラムの顔を見て確信して言った。
「いる」
「ま…まさか…王…」
腕を振り切り歩きだすとあの廊下の角へ。上から何か一滴落ちてきたと思ったらフィグの肩に落ちた。黒いモヤモヤが現れフィグを吸い込む。
「王!!」
「俺はやまとに会いに行く」
そういうと天井を指差し消えてしまった。王の仕草が気になり上を見たが今はまたもや王が消えてしまいこの後の処理に追われる羽目の方が気がかりだった。
□□□
はぁ…王が逃げたせいで私が全部請け負う羽目になったのだが。仕方ないから妃には機嫌も悪く性格も悪い上に変わっていると伝え帰ってもらった。後日別の方を紹介するのだが、それはいい。
王が確信めいた様子で天井を指したが…これか。黒い染みのような…これが手がかりか。
数日後
そろそろ帰ってくるはず!もし、このままやまとさんと暮らされては困ります!
例の場所で待ち構えながら王の示した天井を見た。
ん?
天井から滴り落ちた黒い液体が身体に付いた。モヤモヤが現れ顔を突っ込む。辺りを見渡すと王とやまとさんの姿を見つけた。この雫が原因だったとその時に知るがそんな事より二人の元へ行く。
そこで私が見たのは王がやまとさんの目を手で隠しながら唇にキスをしている所だった。
「王…なんて事を」
私は王の秘密裏を目撃してしまった。
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