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そして、異世界人になる
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□□□〈クラム〉
ついに二人の王にも知られてしまった。王に説明はやはり無理だった。あんな直接的に話したら上手くいくものもいかない。王はやまとさんを抱えて部屋に行ってしまったし。
私は二人の王から詳しい説明を求められたが王の心情の全てまではわからない。知っている全てを話したが納得はしては…ないだろうな。
やまとさんが好きなのはわかりますが、それでは相手に伝わりません。
あ、肝心なこといい忘れた。
□□□
「王、ここは何処ですか!?我々は会議に向かっていたはずです!」
「クラム落ち着け」
王は一度行方不明になっている。魔物退治から帰った王は二人の王に報告をしに行く途中でいなくなったのだ。
城は大騒ぎで総出で探したがそれでも全く足取りが掴めず不穏な空気が漂っていた。2.3日したある廊下でばったり王に会った時は幻かと思うほど驚いた。
無事に生還した事に皆で喜びあった後、何処に行っていたか聞くと不思議な話をしていた。記憶の一部が欠損してしまったのかと誰もが思って話を聞くのをそっとやめた。何故なら着ていた防具も剣も全てを失い、身につけていたのは簡易的な服装だったからだ。
そして、ずっと思い更けてはぼーっとしていた。
今思えば王はおかしくなった訳でもなんでも無かったと言える。
「向こうに椅子があったはずだ」
「王、この場所わかるんですか!?なら、」
「無理だ…帰り方がわならない」
「?」
「とりあえず、座るぞ」
すぐに帰れないと知り王が言っていた椅子へ座る。二人でうなだれながら無言の時を過ごした。王はここへ来た事があるのか…にわかに信じがたいが瞬時に別の場所に来たとしか思えないぐらい変虚地だった。
どれぐらい時間がたっただろう。そしていつまでこうしているのだろう。わけのわからない場所で不安でしかない。魔物はいないだろうか…
たったった…!
足音が近づいてくる。情けない事に怖くて見れない。王が戦う素振りは見せていない事から命の危険はないようでほっとした。小さな生き物か、足音が軽い。
「フィグ…」
王の名をそう呼ぶ声に驚き思わず顔を上げてみると小さな少年だった。
「やまと…」
「フィグ~!逢いたかった~!」
抱きつく少年は嬉しそうに名前を呼んでいた。王もその少年を知っていたようで安心した様子。わからない関係だが今はこの方に頼る他ない。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王、すぐ帰りましょう!」
「……。」
「会議に行く途中ですよ!!」
「…わかってる」
「少年が帰り道を知ってるならすぐ聞いてください!早く!!」
「はぁ…わかった…」
王のなんと言う露骨に嫌そうな顔…
「やまと…すぐ帰りたい」
少年は残念そうだが私達には責務が残っています。すみませんがすぐに帰らせていただきます。
案内された場所にたどり着くが帰り道は既に無くなっているとのこと。途方にくれる私達を少年は今日は遅いからと部屋に招いてくれた。王に焦りはなくどちらかと言えば嬉しそうにも見える。
森を抜けると賑わしく眩しい道を歩いた。自分でも信じられない周りの景色に目を疑う。小さなドアの前で立ち止まる。入るとそこはまるで牢屋のようだった。
「ここは一体…」
思わず声が出るが少年の家だった。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王!少年は囚われの身ですか!?」
「違う、ここでは多分これが普通だ」
「そうですか」
いろいろと聞きたいですが…これ、王の靴の上に靴。剣が鞄置き場。ソファーがうわ!防具じゃないですか!知らないとは言え王も怒らないのですね。
「王…いいんですか?」
「別にいい」
「彼の名前はやまとだ。優しい。あと、絶対傷つけるな」
「わかりました」
少年はやまとと言う名前らしく。私達に気を使いながらもてなしてくれた。冷たい甘い食べ物は口に良くあった。
普段は業務があるらしく朝早くから日が落ちるまで帰ってこない。有難い事にその間に我々の食事も用意してくれていた。
「王、やまとさんはどういう方ですか?」
「俺がここへ飛ばされた時に助けてくれた」
と言うことは恩人ではないですか。いや現に私も助けられています。帰り道すらわからない我々によくしていただいてます。ベッドまで借りて自分は布一枚で寝てくださって申し訳ない。
やまとさんは私達を店に連れていってくれたんですが…騒がしい、実に騒がしく眩しい。人も大勢いて賑わっている。これも不思議な体験の一つとしましょう。ん、何ですかこれは?18に斜めの線。見慣れない模様ですが。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王はご存知ですか?」
「いや、知らん」
「18はわかりますが大きな模様のような。ここだけ他の場所から隔離されてます」
「そうだな」
「入ってみます」
「やまとが何か言って…」
〈終了〉
「ダメです!入らないで下さい!!ここは…快楽いえ、ダメです!」
「なんだ?」
絶対ダメなんですって!!やまとさん何で全然止めないんですか!私は思いっきり見てしまったじゃないですか!
王が余計気になっている。ダメだ、一度気になると確かめずにはいられない王だ。くぅ…少しだけ見せたらわかってもらえるだろうか。
チラ
王…だから駄目って言ったんですよ私は。
私は凄い国に来てしまった。良くみたらあちらこちらで欲にまみれている気がする。こんな国があったとは…ここは目に毒なものが多すぎる。
□□□
「王、こちらには文字と言うのがあるんですね」
「そうだ、はぁ、はぁ」
腕立て伏せをしながら話をする二人は徐々にこちらの国を理解し深めていった。
あのぷるんとした甘い食べ物も美味でした。あれは私の中でも群を抜いて1番好きな食べ物になりました。お礼も込めて紙にしたためたい。
「王、お礼を紙に書いてみようと思います」
「……。」
「俺が書く」
「わかりました」
珍しい、王が書くとは。まずは練習、文字と言葉が一致しませんからあの美味しいプリンの文字から書いてみますか。おそらく一番大きな文字がプリンと言う文字のはず。
こうして帰るまで二人で試行錯誤しながら書き上げた。
帰りかたは…お察しください。無事に城に帰る事ができたのはやまとさんのおかげです。
ついに二人の王にも知られてしまった。王に説明はやはり無理だった。あんな直接的に話したら上手くいくものもいかない。王はやまとさんを抱えて部屋に行ってしまったし。
私は二人の王から詳しい説明を求められたが王の心情の全てまではわからない。知っている全てを話したが納得はしては…ないだろうな。
やまとさんが好きなのはわかりますが、それでは相手に伝わりません。
あ、肝心なこといい忘れた。
□□□
「王、ここは何処ですか!?我々は会議に向かっていたはずです!」
「クラム落ち着け」
王は一度行方不明になっている。魔物退治から帰った王は二人の王に報告をしに行く途中でいなくなったのだ。
城は大騒ぎで総出で探したがそれでも全く足取りが掴めず不穏な空気が漂っていた。2.3日したある廊下でばったり王に会った時は幻かと思うほど驚いた。
無事に生還した事に皆で喜びあった後、何処に行っていたか聞くと不思議な話をしていた。記憶の一部が欠損してしまったのかと誰もが思って話を聞くのをそっとやめた。何故なら着ていた防具も剣も全てを失い、身につけていたのは簡易的な服装だったからだ。
そして、ずっと思い更けてはぼーっとしていた。
今思えば王はおかしくなった訳でもなんでも無かったと言える。
「向こうに椅子があったはずだ」
「王、この場所わかるんですか!?なら、」
「無理だ…帰り方がわならない」
「?」
「とりあえず、座るぞ」
すぐに帰れないと知り王が言っていた椅子へ座る。二人でうなだれながら無言の時を過ごした。王はここへ来た事があるのか…にわかに信じがたいが瞬時に別の場所に来たとしか思えないぐらい変虚地だった。
どれぐらい時間がたっただろう。そしていつまでこうしているのだろう。わけのわからない場所で不安でしかない。魔物はいないだろうか…
たったった…!
足音が近づいてくる。情けない事に怖くて見れない。王が戦う素振りは見せていない事から命の危険はないようでほっとした。小さな生き物か、足音が軽い。
「フィグ…」
王の名をそう呼ぶ声に驚き思わず顔を上げてみると小さな少年だった。
「やまと…」
「フィグ~!逢いたかった~!」
抱きつく少年は嬉しそうに名前を呼んでいた。王もその少年を知っていたようで安心した様子。わからない関係だが今はこの方に頼る他ない。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王、すぐ帰りましょう!」
「……。」
「会議に行く途中ですよ!!」
「…わかってる」
「少年が帰り道を知ってるならすぐ聞いてください!早く!!」
「はぁ…わかった…」
王のなんと言う露骨に嫌そうな顔…
「やまと…すぐ帰りたい」
少年は残念そうだが私達には責務が残っています。すみませんがすぐに帰らせていただきます。
案内された場所にたどり着くが帰り道は既に無くなっているとのこと。途方にくれる私達を少年は今日は遅いからと部屋に招いてくれた。王に焦りはなくどちらかと言えば嬉しそうにも見える。
森を抜けると賑わしく眩しい道を歩いた。自分でも信じられない周りの景色に目を疑う。小さなドアの前で立ち止まる。入るとそこはまるで牢屋のようだった。
「ここは一体…」
思わず声が出るが少年の家だった。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王!少年は囚われの身ですか!?」
「違う、ここでは多分これが普通だ」
「そうですか」
いろいろと聞きたいですが…これ、王の靴の上に靴。剣が鞄置き場。ソファーがうわ!防具じゃないですか!知らないとは言え王も怒らないのですね。
「王…いいんですか?」
「別にいい」
「彼の名前はやまとだ。優しい。あと、絶対傷つけるな」
「わかりました」
少年はやまとと言う名前らしく。私達に気を使いながらもてなしてくれた。冷たい甘い食べ物は口に良くあった。
普段は業務があるらしく朝早くから日が落ちるまで帰ってこない。有難い事にその間に我々の食事も用意してくれていた。
「王、やまとさんはどういう方ですか?」
「俺がここへ飛ばされた時に助けてくれた」
と言うことは恩人ではないですか。いや現に私も助けられています。帰り道すらわからない我々によくしていただいてます。ベッドまで借りて自分は布一枚で寝てくださって申し訳ない。
やまとさんは私達を店に連れていってくれたんですが…騒がしい、実に騒がしく眩しい。人も大勢いて賑わっている。これも不思議な体験の一つとしましょう。ん、何ですかこれは?18に斜めの線。見慣れない模様ですが。
〈アイコンタクト フィグ・クラム〉
「王はご存知ですか?」
「いや、知らん」
「18はわかりますが大きな模様のような。ここだけ他の場所から隔離されてます」
「そうだな」
「入ってみます」
「やまとが何か言って…」
〈終了〉
「ダメです!入らないで下さい!!ここは…快楽いえ、ダメです!」
「なんだ?」
絶対ダメなんですって!!やまとさん何で全然止めないんですか!私は思いっきり見てしまったじゃないですか!
王が余計気になっている。ダメだ、一度気になると確かめずにはいられない王だ。くぅ…少しだけ見せたらわかってもらえるだろうか。
チラ
王…だから駄目って言ったんですよ私は。
私は凄い国に来てしまった。良くみたらあちらこちらで欲にまみれている気がする。こんな国があったとは…ここは目に毒なものが多すぎる。
□□□
「王、こちらには文字と言うのがあるんですね」
「そうだ、はぁ、はぁ」
腕立て伏せをしながら話をする二人は徐々にこちらの国を理解し深めていった。
あのぷるんとした甘い食べ物も美味でした。あれは私の中でも群を抜いて1番好きな食べ物になりました。お礼も込めて紙にしたためたい。
「王、お礼を紙に書いてみようと思います」
「……。」
「俺が書く」
「わかりました」
珍しい、王が書くとは。まずは練習、文字と言葉が一致しませんからあの美味しいプリンの文字から書いてみますか。おそらく一番大きな文字がプリンと言う文字のはず。
こうして帰るまで二人で試行錯誤しながら書き上げた。
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