社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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そして、異世界人になる

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「好きじゃないのか?」

「いや、好きなんだけどね」

「大好きと言った」

「いや…まぁ、言ったんだけどさ」

「なら、やまとがこの国を見て決めて欲しい」

まさかの俺に委ねるパターン。普通に考えて無理。う~ん困った。

「ほら、やまとさん困ってます」

 部屋に戻り何で急速にフィグが俺に好意ができたか聞いた。
フィグはどうやら一番初めに出会って帰り際にまた会いたいと思ったらしい。菓子パン食べてやってるの見ただけだよな…。しかも即答で帰るって体半分入れてたし。全然わからない。

2回目にクラムさんと来た時に好きだと確信を持っていたらしいが。18禁コーナー見たぐらい?どこで好きになったのか全くわからない。

んで、3回目は俺に会うために手立てを探して偶然見つけてこっちに来れたとか。俺に会いに来てくれたのか…岩男って思ってごめん。

「やまとに好きって言われたのに会えなくなるのが嫌だった。あのまま婚儀をしたら二度と会えない」

「そうなんだ」

「妃を迎えればそうなります」

うーん、いや別にフィグの事嫌いじゃないんだ。寧ろ好き。ただ、この国に残るかは別問題。だって俺、働いてるし。魔物怖いし。死にたくないし。

悩んでる俺をフィグは見つめる。いや、格好いいけども流されないからな。一番重要な事聞いてないし。

「やまとは俺の事…」

「まて、フィグ。先に俺に言うことがあるはず、話しはそれからだ。わからない以上俺は帰る」

フィグは眉間にシワを寄せ考えた。フィグはクラムさんを見たがクラムさんもわからない様子だったが俺はこれを聞かない限りは無理だ。

「あ、因みに魔物怖いんですけど」

「それは大丈夫です。王がやまとさん会いたさに大量に倒したお陰で平和になりました」

「…そうですか」

魔物問題解決したな…どんだけ会いたかったんだよ。

□□□

フィグの謹慎は本人により無理矢理解除され俺はナグマを知るためフィグの仕事場に来た。部屋には剣が沢山置いてあり防具もある。あ、あれ俺が鞄掛けた剣だ。

ナグマ国の詳しい説明は割愛しますが寒い国で我々がいう魔法みたいなのが生活基盤らしい。なので、料理も灯りもお風呂もみんなそんな感じです。

俺は全く使えないので灯り一つも消せません。四六時中誰かと一緒にいないと生活ができない状態。俺の何もできなさっぷりに無力を感じますがそれは置いときます。

あれからずっとフィグは悩んでいる。だけどあれを聞かない限りは無理だ。
城を案内されながら明日の話をしようと切り出した。明日は俺が帰る日だ。

「あーフィグ?」

「なんだ」

「明日なんだけど…」

これを言うとフィグが物凄く落ち込む。はぁ…世話が焼ける。仕方ない別の話をするか。

「ねぇ、フィグって今さらだけど年いくつ?」

「20」

「はぁ!?」

年下だったのか…ふけて…いや。まあ異世界人だしな。肌がプニプニしてたのはそのせいか。

「やまとは?」

「24」

「年下だと思った」

あーそれは、ありがとうございます。

「俺のが年上だったんだな」
「そうだな」
「クラムさんは?」
「24」
「へぇークラムさん俺と同じなんだ」

そんな話をしながら案内されたのは城の一番高い展望台。吹雪いてる…寒い!寒すぎる!
フィグは指を指し説明するがまったく見えない!

「フィグ!全然わかんない!」

寒くて耳がちぎれそうだ。なんで平然としていられるんだよ!

「寒い!!」

俺が声をあげるとフィグが抱き締めてくれたが、冷たい服が当たりさらに寒い!全然あったまらない!部屋に帰る!

「フィグ離して!帰る!」

「嫌だ!」

こんな時だけ自己主張するなよ!!

「離したらやまとは帰る」
「いや、寒いから!」
「嫌だ」
「離せ!」

「やまとが好きだから嫌だ」

あ、今ここで言うんかい。俺はもっと暖かい静かな場所でティーでもしながら聞けると思ってた。
もう、寒いからなんでもいい!

「もういい!フィグから聞けたからいい!」
「何をだ?」

「フィグが二人の時に初めて好きって言ったから残るって言ってるんだよ!部屋に帰る!!」

フィグはゆっくりと腕を離して俺の手首を引っ張り早歩きで俺の部屋に戻った。はぁはぁ息を吐き寒さに震えながら俺は濡れた服を脱いだ。

寒い!!寒い~!!

「フィグお風呂入れて欲しい!髪も濡れて寒い!」

後ろから暖かい肌が当たりじんわりと冷たい体を暖める。

「やまと…本当か?」
「ん…まぁ…」

改めて静かな所に来ると恥ずかしいかも。
向きを変えられ目が合う。

「フィグが俺に言わず皆にばっかり言うから…」
「…悪かった」
「でも、まだ凄い不安」
「取り除く。全部」
「俺こっちで何もできないよ。電気も消せない」
「いい」
「妃様怒るんじゃない?」
「断ったから大丈夫」
「お互いの事知らなさすぎじゃない?」

「やまと…俺には愛があるから大丈夫だ」

「い、いつの間に!」

「やまと好きだ。一生守るから妃になってくれ」

「…………はぃ」

パンツ一丁でプロポーズされた俺はフィグと口づけをした。フィグのキスは練習など要らないぐらい上手かった。

「フィグ…俺まだ言ってない事が」

「なんだ」

「フィグのファーストキスは俺なんだよね」

「そうだ」

「俺、男の人と付き合うの初めてなんだけど。どっちがどっち?」

「……。」

ベッドで仰向けにされ俺はフィグを見ると目が光るのがわかった。そして、その夜悲鳴が響き渡ったのだった。

□□□

「やまと何で帰るんだ」

「だから、説明したじゃん」

俺は夏休みがもうない為、仕事にもどらなくてはならない。フィグには帰らないと言ったが一度帰らねば!いや、本当に何も持ってきてないからね!玩具とプリンしか!

駄々をこねるフィグを説き伏せるクラムさん

「王、やまとさんが説明したじゃないですか。しかも丁寧に分かりやすく。本来説明とはこうするんです。王は言葉がたらなさ過ぎです。やまとさん、お待ちしてます」

「はい、クラムさんまた来ます」

天井から落ちる雫はフィグの言う通り「黒い雫」でそれに体が触れるとモヤモヤが現れた。俺がまた来る頃には上手くいけばもっと簡単に行き来できるかもって。念のため雫の入ったビンをもらい向こうに帰る。

「フィグまたね」
「待ってる」

暫くフィグとお別れは寂しいけどね。フィグが消えて行く俺の口にキスをして「愛してる」と言った。後ろからクラムさんの人前で!という声を聞きながら俺は戻った。



「へぇーそうだったんですね」
「そうだったんです」

「河口君が辞めるなんて言うから驚きました」
「俺もまさか自分が通常運転から外れるとは思わなかったです」

「いつ行くんですか?」
「今からです。松君にはお世話になったので最後に挨拶を」

「う…寂しくなります。今までありがとうございました!お幸せに!」

「こちらこそ、松君ありがとう!」

手を振る河口君の横には大きな男の人がいるあの人かな。幸せそうだな~



「何で来たんだよ!待ってるって言ったじゃん!」

「やまとが全然戻らないから迎えにきた」

「仕事を辞めるには3ヶ月前に辞めて引き継ぎとかあって…まいっか。ん、あれ?俺、結局フラグ回収したことになるのか?」

「なんだそれは…」

「もーいいから、イカ公園に行こう」

「わかった」

 というかイカ公園から向こうに行けるの何でだ?と思いながら黒い雫の入る小瓶を見た。

…イカ墨?

               
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