白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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地雨

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押さえては居るけど異様な空気を作り出してる人物に「隠せてませんよ。」等ど、言える人物は1人しか居ない。射殺ばかりに睨まれてもどこ吹く風で、涼しい顔でお茶をすする。

「流石、豊太閤だな。オレにはできねぇ」

ほうたいこう?須藤さんに続き宗さんも頷いてる。俺も頷きたい。こんな状態の晃さんに注意出来るなんて世界ひろしといえど如月さんだけだ。俺、如月さんを見習っていこう。

ギロンと晃さんに睨まれて慄いた。早く話せってことだよね。話すしかない。如月さんがいれてくれたお茶を1口飲んだ。

「園長息子はかなり理不尽で、一方的に約束を取り付けてきました。了承してないけど、アイツの中では了承した事になってて、思い通りにならないと誰彼当たり散らす。そうなった場合 1番可哀想なのが 園に居る小さい子達で、訳の分からないままに当たり散らされるのかと思ったら、断れなくて。夜じゃなく昼間なら人目もあるし安全かなって」

「それで 頼んでた昼食を断ったんですね」

静かに事実だけを確認してきた如月さんにうんと頷く。

「そうです。待ち合わせは公園だと指定されたけど、そこから歩いて直ぐのところに飲食店があるし問題ないと思って出かけました。会って昨日の件を話して移動する段階になり、車を使うと聞いて 抵抗したけど、ナイフを突きつけられて・・ 携帯も出せってなって。大人しく言うことを聞きました。
車には一緒に捕まってた男が来てて 俺が車に乗れば隣に乗り込んで来た時・・・ナイフを顔に・・」

「殴り損ねた」

ボソッと言ってるけどみんなに聞こえてるから。

「逃げないと殺されると思い、逃げだすチャンスを作ることにした。まずは お昼も食べてなかったし お腹が減ってるだろうから お昼を作ることにしました。ちょうど魚屋があったからそこで魚を買ってフライにするからと話をしたりして。あの場所に連れりて行かれた時も 昼食を作ること言えば中年男性が怪しんでたけど、俺がすすんで着いてきたって 園長息子が都合良く 脳内で書き換えた情報をいえば 理不尽な扱いは受けなかった」

「鈴君は料理が出来たの?」

「一通りは、家庭料理ですが」

感心する声が上がる中

「俺もまだ食べたことない 舌を切り落とすか?」

なんか一人だけ物騒な人物がまじってますよ刑事さん。

「余計な事を言って 怯えさせないで下さい。鈴君 続きを」

「はぃ。で、まずは汚かったキッチンを片付けてた時に見つけたレシートにタバコの灰を水で炭みたいにして箸の先で字を書いてズボンのポケットに直し そのまま料理して食べ終えたのを片付けて トイレに入った時に窓を見つけて、その時にレシートを外に」

「偉いね、連れてこられた子が一緒に買い物してるから、違うのかと思ったが、かなり冷静に対処してる」

「あのレシートも買い物リストからアイツらが買ったものと時間が一致してる。それも2枚もあるとなると完璧な証拠だしね。かなり助かったよ」

須藤さんと宗さんに褒められちゃった。
ギロンと晃さんに睨まれてる2人は明後日の方向に向いた。

「上手く時間稼ぎが出来てた筈だ。なのに なぜ あんな事になってたんだ」

時間稼ぎではない。逃げ出すチャンスを作ってたのに。あのとき見られなければ殴られずに済んだのに。はぁ~、俺って爪が甘い?園長息子にも言われてしまったけど、そんな風にも見えるのかな?でも、アイツにみすかれてるのも気持ち悪いな。
「おい!」
「はい!」

「はぁ~」

晃さんに 「おい」と言われ、反射的に「はい」と答えてしまたら盛大にため息を吐かれてしまった。

「鈴 なんで あんなことになってたんだ?」

「えっっとぉ~、その、項を見られて・・・」

恥ずかしい所は省略したい。

「番の証とされる噛み跡をみられたんですね。他の番の噛み跡に比べれば傷も小さいですし綺麗です。ですから 余程近づかなければ気が付きませんよ」

確かに如月さんの仰る通り。オレの場合 入院してたから手当の次いでと 看護婦さんが 項の手当てもしてくれたので 綺麗な噛み跡?だと大絶賛された。酷い人はでこぼこしたり、噛み跡のケアを滞って傷痕が化膿して 目立ちやすくなるそうだ。
だからか 俺に付いてる噛み跡は近づき よく見ないと分からない。

「なるほど 眼球を抉り出し損ねた」

ひぃー!!
表現がエグイよ、晃さん。

「あー、それで 身の危険を感じて逃げ出した。と」

「はい。俺がβだと 信じてましたから、噛み跡をみつけて 驚いてる時に振り切って玄関のドアを開けることは出来たけど捕まってしまって」

「怖い思いをしたね。こんな時に聞くのも心苦しいけど 我々もあのグループには目を付けてたから。アイツらの会話で人の名前や数字とか 気になる会話とかなかった?」

「ケンジさんが来るまではなにもしない。夜にならないと来ないからって」

「賢治ね、他には?」

ほか?

「うーん。あっ!完全防音だって自慢してた」

「他は?」

「えー、・・・・ごめんなさい。もう無い」

「そう、小さな事でも思いだしたら報せて」

晃さんを遺して3人は帰って言った。




3人が出ていくと直ぐに動き出した晃さん

「我慢ならん!!風呂にいくぞ!!!」

「え?」

俺を担ぎ上げてと風呂場に直行すると素早く服を脱がされた。





「アッ、あのさ 晃さん 服を着たまま風呂に入るタイプ?」

「服を着たまま風呂に入って何を洗う?」

「そりァ、服のまま風呂に入ってるし・・・服 かな?」

「洗濯機は何を洗うつもりだ」

「えー、そうだな 下着??」

妙な会話が成り立ってることに驚く。
だって、俺は恥ずかしがる隙もなく全裸にされて  そのまま椅子に座らされて全裸洗われて 湯船の中に優しく入れられ、傍で見守ってくれているが、服は着たままなのだ。びしょ濡れになりながらも俺の世話を焼いてくれた晃さん。

「踏み込んた時 あいつらは 服は着てたし乱は無かった。・・・言いたくなれば言わなくていい」

ポツリと聞かれたけど、聞きたくないって気持も見え隠れするけど、知りたいって気持ちも見え隠れする、複雑な声音だ。

「うん・・・・・ちょっと胸触られた」

何も無かったといえば語弊がある。なので嘘をつかずに正直に話すことにした。

「そうか、ほかは?」

「・・・噛み跡 晃さんが触るとゾクゾクして気持ちいい。でも、 他の人が触るとゾワゾワして気持ち悪いし発狂する」

「Ωにとって 項は急所だと言われてる程敏感な場所とされてる」

「なんか そんな話もしてたな」

「そうか」

「そろそろ出るか?」

「うん」

頷けば 腕をお湯の中に入れて来て 軽々とお湯の中から俺を掬い上げる。

体を拭かれてパジャマを着せられ布団に運ばれる。

「食欲はあるか?」

口の中切ってるし食べても染みるだろうし、このまま眠ってしまいたい。

「寝る」

俺の答えを聞いた晃さんが一緒にベッドに潜り込んで抱きしめられて。
安心できる場所で規則正しい心音を聞いてると落ち着くと、自然と瞼が重たくなり眠りに着いた。








寝入った鈴にキスをし、ベッドから起き上がり着替えを済ませ 家を出た。



「何処までわかった」

俺の一声で如月が説明を始めた。

「御手洗 俊ですが5年前ほどから裏の方ではかなりのプレミアがついて販売されてましたね。完全会員制での視聴で」

「そうか」

「ネットで配信された録画の物を手に入れてきました。かなり悪趣味ですが見ますか」

「見よう」

全裸の1人の男に何人もの男が群がり好き勝手に弄び、道具の様に扱ってる。優しさの欠片は何処にも見受けられない。
【さてさて、次は何が見たい?】

下品な言葉の羅列が続く。
自分の身に降りかかる訳では無いので好き勝手に指示する。本当にそんな事すれば確実に死ぬ物まである。
 【でわ 抽選です】

画面の中央で文字のスピンが始まった。スピンの上に【ストップ】のテロップで文字が止まった。

【ピアスですか?何処に付けましょうか?皆さんどこが良いですか?】

視聴者を煽ったテロップの後
【 1番の投票が多かった 両乳首とペニスに付けましょう】

そして、覆面を被った男が 最高の玩具を手に入れた子供のように、楽しそうに男を嬲りながら長い針で何度も刺す。最終的に穴を開けられピアスが付けられた。ずっと悲鳴を上げてた男は最後はぐったりと崩れ落ちる。

「悪趣味もここまで行くと同じ人間だとは思えないな」

「吐気がする」

誰でもここまで悪質なものを生み出してる奴らが悪いと解る。見てるだけ、煽りに乗っただけ としてるが それを面白可笑しく見てるのだ。実際に傷付けた奴らと同じ罪だと同罪だと叫びたい。
だが、警察も暇ではない。この手の物は、大元の根源を断ち切れば画面の向こうの奴等は蜘蛛の子を散らす様に去って行く。
たまに コピーをばら撒く奴はサイバー班が消していくが余りにも悪質な物を煽る様なら手錠のプレゼントが贈られるだけだ。

実際にこんな理不尽な扱いを受けてきた子が世の中を恨んで無差別に人を傷つけてるとしても、この世の中の法に則りこの子を捕まえなければ 世の中に矛盾を生むことになる。

過去の犯罪から行動範囲を調べ 住宅してるであろう周辺を監視カメラで調べさせてたら、御手洗 俊の映像がが数点出てきた。

「この周辺を徹底的に調べろ」

「よっ!戻ってきたか。ッで  わざわざ呼びたしてまで話したい事とは」
そこには珍しい顔ぶれが並んでるが仕方ない。幾つも絡み合ってる事件だ。
何時もはいがみ合ってるが今回ばかりは仲良くしてもらわないと困る。何度も同じ説明はしたくない、わざわざ呼び出して来てもらったのだ。

「息子の 佐々木 拓也は暴力団と繋がり麻薬の売買と強制わいせつ罪」

2課の主任 東は関係ないと興味を持ってない顔だ。

「ひかり園の原 人志 理事長は横領だ」

少しは興味がでたのか顔を上げた東。

「それとも もう一つ、原は 祠堂 正嗣と繋がりがある」

同時に息を呑む2人。
釣れた。これで時間短縮で証拠を揃えて悪の根源に辿りつける。

「おいおいおいおい、どっから引っ張ってきたんだ」
「本当か!」

今回マトリの指揮官をしてた須藤が身を乗り出し、東も驚きの声をあげる。
資料を手渡しながらあえて名前を伏せて説明を始めた。ソレは小さな事。普通ならそこまで気にならない事だ。だが、俺はすべてを知りたくて 隅々まで読み込んで頭に入れたかった。

「先ずは説明を聞いて欲しい。初めは小さなきっかけだ、チョットした手続きでパッと見は完璧な物だ。1箇所おかしいと 気が付けば 隅々迄 見たくなるもの。調べれたら 所々おかしい、探っていてば自然と原にぶつかった。原の周辺を調べればギャンブルに株と次々と金を使い込んでる」

「ありえねぇ~、児童養護施設の給料じゃぁ やりくり出来ねぇな」
「久々にデカそうだな」

「張り切ってくれて構わない。が、先ずは殺人と重軽傷を出してる俺達から手柄は貰う。後は好きにしてくれ、贈収賄、選挙違反、横領だ。好きな所から叩け」

「チィ、最初の手柄を持っていくのかよ」

「情報提供してやったんだ。文句いうな」

すかさず、如月が2人に指示をだす。

「原と佐々木拓也は犬猿の中だと有名ですが、1部では かなり仲がいいとの情報を掴んでます。須藤さんは今まで通り其方をお願いします、東主任は原をお願いします」

「文句は受け付けん。大元は必ずここだ。われわれは今まで通り事件を追うがどこかで合うはずだ、情報は共有したい」

1つの名前を指差して1人1人の顔を見渡し 頷き それぞれの持ち場に引き上げた。

「鈴君が襲われてる映像がありすが 確認しますか」

流石の俺も動揺した。あの場所に一緒に踏み込んだのだ。鈴は衣服を剥ぎ取られてたが奴等の着衣の乱はなかった。何も無かったと信じたい。信じてるがもし万が一が有れば正気が保てない。

「貴方が思ってる程ひどくは無いでしょ。そうですね、例えていえば 顔面を削ぎ落としたいと、いったところでしょ。見て 懸念を払拭した方が楽ですよ」

如月は家族以外で俺の事を1番理解してるや奴だ。そいつが進めるのだから、酷くはないと信じて決心して見ることにした。

「見よう」




たしかに 最悪な場面は無かった。
が、鈴の手料理どころが 鈴の甘い肌を味わい 可愛らしい胸についてるピンクの果肉まで味わってる、クソっ!

「アイツの胃袋を引き摺り出して燃やしてやりたいな」

「それ、猟奇犯罪ですよ」

「なんのために医学がある?胃袋を引き摺り出し 代わりの物でも埋めとけば人間生きられる」

「なにを埋めるつもりですか」

「溶岩石とかどうだ?伝導率がいいから年中温めくてすむ」

「すばらしい考えですね」

「だろ」

少しでも刑を重くしてやると心のなかで誓い、証拠集めに手を貸してやることにした。
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