白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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豪雨

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食欲作戦は上手く行った。でも マンションにもう一人待機してた。そうそう 上手くはいかないよな。
「貴方もお昼食べました?良かったらいっしょにお昼食べません?」

にっこり 笑ってお昼を誘いながら部屋の中を伺う。生活感が全くない。必要最低限のもしか置かれてない部屋にもう一部屋あるのか。

声を掛けられた中年の男性は眉間に皺を寄せて、何言ってんだと、俺を見据えるが そんな視線は無視する。

「これ、下処理したいから台所 借りていい?」

勝手に動こうとした俺の胸倉を掴かみ怒鳴る中年男性。

「おい!!拓也 」

「大丈夫ですよ。コイツ 雌イキ やりたいみたいで、進んで付いてきたんですから」

バカだバカだと思ってたけど、ここまでバカだと怒る気も失せて一層 笑えてくる。
ナイフで脅して連れてきたなんて 頭から抜け落ちてんだな。

「はっ、そーゆーことか。あははは そーとー好きもんだな。よしよし  タップリ 楽しませてやるから期待してな」

胸倉から手を離し 手を背中に回し豪快に叩く。バカのいい分を信じて満面の笑みだ

「おれ、買い物いってきます」

中年男性とバカを残して1人で買い物に行ってしまった。
チャンスは絶対に来ると信じて台所で下処理を始めたいけど、食べたら食べっぱなしの汚い台所の掃除からだ。

「魚 冷蔵庫に入れさせて」

「勝手に使え」

先ずは洗い物を始めるも、中年男性がしっかりと見張られた中でやらないと行けなかったが平気な振りをし続けた。。

ゴミを仕分けしながら、ある物を見つけてこっそり細工してポケットに忍ばせた。粗方纏めたごみを隅に置き 魚に取りかかる。

魚をフライ用に開き終わった頃に買い物から帰ってきた男に買い物袋をそのまま渡された。

米を研ぎ 手際良く料理を進める。

「手慣れてんな」

「一人暮らし初めて3年だから」

得意げに3年だと説明してるが、心の中で4年だバカと、返しておく。

「もうすぐ出来るけど お皿とか出してもらえる」

またも 動き出したのは買い物に行った 男だ。
この中で立場が一番下なんだろう。
バラバラのお皿や茶碗を使い何とかお昼を整えた。


「うめぇな」

ザクと衣が音を立てる中 具である身がふんわり出てくる。一緒に粗食すれば上手く混ざり合いアジの旨味が口いっぱいに広がる。味噌汁は玉ねぎとワカメ。サラダは作れなかったが、タップリ刻んだキャベツのせん切り。

「 レモンが欲しかったな」

男はちゃっかり タルタルを買ってきてる。ソースと醤油はあったが レモンはない。

元々 最低限の調味料しか無かったのに贅沢だなと思うが 食欲が満たされて 油断が生まれる、そうすれば逃げ出すチャンスがあるはずだ。

食べ終わり 食器を回収して洗い トイレにはいった。小さな窓を見つけて小さくガッツポーズを取った。キッチンを掃除してる時に見つけた 2枚のレシート、タバコの灰を炭変わりに使い箸の先で〔たすけて505〕と書いた物をズボンのポケットに忍ばせてた。このマンションの名前は分からないけど505号室だ。この周辺で高い建物はこのマンションしかない。なら、これを見つけてくれた人ならと願いを込め窓から外に投げる。
お願い 誰か気が付いて!!
トイレから出るとそのままキッチンの掃除をし続けてると、中年男性が 後ろから抱き着いてシャツを託しあげて肌をま探る。

「お前やりたいんだろ。こっち来いよ」

耳許で誘いの言葉を言ってるが気持ち悪い。

「拓也さんが言ってましたけど ケンジさんが来るまで何もしないって言ってましたよ」

「そうだけどよ、好きもんなんだろ?」

ぞわぞわして気持ち悪い。直ぐにも跳ね除けたい気持をグッと堪え冷静に対応する。

「興味がある有るけど 経験はないので」

「鈴の言う通りですよ。そいつ何にも知らないまっさらなんですから」

「隅々まで綺麗にしとけよ」と俺を突き飛ばし足音を立てて去って行く中年男性。
俺の事ならなんでも知ってる風を装うのは腹が立つけど今回は助かったと胸をなで下ろした所に今度はバカがシャツの中に手を入れてきた。

「ちょっ、ゃめ」
「味見くらい させろ・・・おい、これなんだ?」

右の項を見られた。
相手は驚いてる間に、ありったけの力で振りほどき持っていた丼鉢を思いっきり園長息子に投げ付け駆け出した。玄関にたどり着き 急いで鍵を開け裸足で飛び出すが 捕まってしまった。諦めたくない俺は抵抗して思いっきりケリを入れるがカスリもしない。

「舐めた真似しやがって」

思いっきり頬を殴られ後ろに倒れると中年男性が馬乗りになってきた。

「そいつΩだ!!」

「はっ?βだっていってただろ?」

「右の項に噛み跡が」

「ぁぁあん?」

髪を鷲掴みに掴むと 左を向かされ中年男性が確認すると口角が持ち上がる。

「おいおいおい、なにが経験ないだよ。ヤリまくりじゃねぇーかよ」

噛み跡をベロリと舐め上げられて、余りの気持ち悪さには悲鳴をあげた。

「いやぁぁぁぁー!!!」

バンと頬を叩かれ痛みはあるが、気持ち悪さに方が勝ち めちゃくちゃ暴れるが「押さえろ」と 声を張り上げて命令すると二人ががりで押さえ込まれた。

「好きなだけ叫べよ。完全防音だからな」

げへへへへへへっ、笑うと噛み跡ともう一度ベロッと舐め上げられ俺は悲鳴をあげる。

「兄貴が初物好きで我慢したが、ヤリまくりのコイツに我慢する必要ねぇーなぁー」

襟首を掴むと力まかせにビリビリに破かれる。なんとか振りほどこうと抵抗するも押さえつけられて身動きが取れない。

「まだ 新しいな」

「淫乱じゃねぇかよ」

「昨日 迎えにきてた あの男か。かなり生意気な金持ちだったな」

「へぇー、そうか 生意気な金持ちか。おい、名前は」

「本人に聞いて下さい」

晃さんだけには迷惑をかけられない。絶対に教えられないし、知られるわけにはいかけない。

「なるほど、カメラ持ってこい」

腕が緩み走る足音が遠ざかると直ぐに戻ってきた。

「しっかりと撮れよ。最高の1本になるからな」

イヤらしい顔が胸に近づき舌を這わせてきた。

「ぃやーーーーー!!!!」

脚を押さえてる園長息子がズボンに手をかけ脱がしはじめた。

抵抗をするが全く力及ばず 好き勝手に身体を弄る。
泣きなが叫び声を上げるが男達の手は止まらない。

「おい ちゃんと撮れてるか」

「バッチリ」

「よし、これからが本番だ」

男の手が秘所に延び指が少し入った時 ピーポーン

ピタリと止まった男達はココが何処か思い出したようだ。
わざわざこんな所でしなくてもいい。と、思いが一緒になったんだろう。
馬乗りになってた中年男性が俺から下りると髪を鷲掴みにし、俺を引き摺り始めた。その間も執拗に玄関のチャイムと同時にドンドンドンドンドンと打ち鳴らす音に「たすけて!!!」と、声を張り上げる。

「あーはっはっはっ、防音は完璧だ。叫べ叫べ  いい画が撮れる」

ぱーんぱーん
乾いた音がたて続けに響く。
鷲掴みにしてた手を離され床に上半身を打ちつけ、ドアの方に目を向けた。
ドアノブが回り ドアの縁に何人もの手がかかり 扉がすばやく開けられ晃さんの姿が目に飛び込んできた。
突然の乱入に男達は遅れを取ったのか 走る足音に「にがすな!!」と怒涛の声が交じる。

園長息子はナイフを振り回し、中年男性は俺の襟首を持ち俺の首筋にナイフを当ててる。

「こ、コイツがどうなっても良いのか?」

「鈴を返せ」

晃さんの脅威の威圧でガタガタと小刻み震える相手に 晃さんは「鈴の首の皮1枚でも傷つければ、おまえの寿命を減らしてやる」そういいながら 1歩 1歩 慎重に近づいてくる。
あと一歩で、手が届く所まで来た時 ナイフを晃さん投げ付けた中年男性は逃げ出そうともがいてたが如月さんによって取り押さえられてた。

俺は晃さんに素早く掛けられた上着の中に保護された。

「鈴!!」

「晃さん!」

「誰に殴られた」

「へ?」

「時間が無い、正直に答えろ だれに なぐられた」

3人とも確保されたのか刑事に捕まってた。園長息子は「アイツは俺が育てて」などと 刑事に説明してるし、1人は諦めて項垂れてる。中年男性だけが 未だにガタガタと震えてる姿を見れば、「アイツに殴られた」とは、言えずに目を反らした。「なるほど、角田か」

俺から離れると真っ直ぐ中年男性に近づき 綺麗な右ストレートでぶっ飛んだ中年男性。

「連れて行け」

冷たい声が響き3人は刑事達に連れ出されてた。

「やぁー、初めまして 須藤と言います。一つだけ確にぃぃ」
「近寄るな」

ニコニコと優しそうなお兄さんが挨拶してくれてたのに晃さんに抱き込まれて須藤さんが見えなくなった。

「はっ!あのな 俺は物凄く大事な事を聞きたいんだよ。お前に 阻止する権利はない」

「鈴は大怪我を負っている、直ちに病院に搬送する必要がある」

「須藤さん!クローゼットの奥から男性2名 発見!!救急車をお願いします!!!」

俺は晃さんを押し退け立ち上がり隣の部屋に走った。

二人共知ってる。
園で一緒に育ってきた仲間。
ずっと呼んでた 呼び名で呼んだ

「なお、やす」

「鈴兄ちゃん」
「鈴兄」

二人ともΩだ。俺を見ると抱き着き 声をあげて泣き始めた。

救急車が到着し2人は乗せられてた運ばれた。

俺も一応 乗せられるが、須藤さんにひとつだけ確認を取られた。

「コレ 書いたのは鈴君?」

見せられなのは2枚のレシートだ。裏に たすけて505と書いてる。

「はい」

「辺りを探したけど2枚しか無かったけど」

「2枚しか書けなかったから」

「コレがあったから 踏み込めたんだよ。お手柄」

「良かった、ちゃんと想いが届いたんだ」

嬉しくて涙がて溢れた。

「もう良いか?大怪我を負ってるんだ、時間を取られたくない」

受け答え出来てるし、大きな出血も無い。見た目はちょっと 痛々しいが、大怪我をしてる風ではない。俺自身「大怪我 してません」と、何度も 主張しても聞き入れてもらえずに最終的には如月さんに「猛獣があばれる前にさっさと救急車に乗って検査受けて下さい」と、言われておとなしく救急車に乗る事にした。

救急隊も苦笑いしてるが、晃さんはいたって大真面目に言ってるので 誰も突っ込めない。
しかもだ 乗り込むのに晃さんにお姫様抱っこで乗りこみ晃さんの膝の上に座らされた。

救急車の中で 眼光鋭く睨まれつつも 一通りの手当をしてくれた救急隊の人にひっそりと心の中で謝った。


病院では如月さんが用意してくれた服をありがたく受取り袖を通した。一通りの検査の結果は、打ち身と打撲だ、あと口の中を切ってるだけ。痛み止めと化膿止めと湿布を貰って帰宅。

その間 必要最低限の言葉しか話してくれない晃さんに耐えきれなくて 「ごめん」と、謝った。

「断われと言ったはずだ」

重低音の声を響かせながら なんとか自分を保って威圧を押さえてる晃さん。

「あのさ、ゆっくりでいいから話してくれないかな?」

なぜか一緒に家に来てる須藤さんと宗さん。

時折り 晃さんの額に浮かんだ青筋がピクピクなるけど見なかったことにして、正直に話すのが一番だと分かるけど、話せないこともある。困ってると人数分のお茶を持って現れた如月さん。

「番に許可が貰えない」と、伝えなかったんですか?飽きられながら聞いてきた如月さん。
その方法が使えたならどんなに楽だったか。

でも、なんとなく話しが出来る切っ掛けは出来た。
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