風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

四十三話

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慌ただしい毎日はあっという間に過ぎて、気づけば文化祭が明日へと迫っていた。
姫川は最終確認を行うため、各会場を他のメンバーと手分けをして回っていた。
今日の姫川の相棒は清木であった。このままいけば来年は清木が中心となって文化祭を取り仕切ることになる為、今のうちから自分が伝えられることは伝えておこうという考えが姫川にはあった。
「清木も経験したと思うが、企画書の選定からこの前日の見回りまでが一応、文化祭の準備の流れになる。今年は俺たちが取り仕切っているが、来年からは清木が主体となって動くことになるだろうからよく覚えておけよ。」
各催し場を回りながら説明する姫川の言葉の必要な部分だけを抜き出し、清木が真剣にメモを取っていく。
「最後に各会場を回って、備品や必要なものが揃っているか。不備、不具合がないか確認する。あとは明日、搬入されるものがあれば搬入経路と搬入物の種類、個数などを担当者と打ち合わせるんだ。各会場を回って前日まで俺たちが手伝いをするのは勿論、生徒たちの負担を減らすためという事もあるが、何か問題が起こった時に店側の内情を知っている方が直ぐに対処できるという側面も大きい。当日生徒会は、本部を設け、文化祭の総合進行に携わるので忙しい。だから俺たちは裏方に徹して、店側のサポートをしたり危険な人物や困った客がいないか巡回したり・・・」
長々と説明しながら姫川がさり気なく清木の方に目を向けると、メモを取るのもそこそこにキラキラした目で見上げてくる清木と目が合った。
「なんだ?」
その純粋で己を崇拝しているような眼差しに姫川が若干顔を引き攣らせながら言葉を返す。
「いや、真剣に説明をする先輩の顔が余りにも凛々しくて、格好良くて、思わず見惚れてしまいました。そんなクールな顔をして実に情熱的に語りかけてくれる先輩のうちに秘めたる熱い想いを僕が次の世代に引き継いでいくのだと思うとそれだけで感無量です。」
「わかったから、もういい。やめろ。」
清木にまた変なスイッチが入ってしまったと姫川は呆れる。
「お前、メモはもういいのか?」
一生懸命に姫川なりに話したのに、顔を見られていただけなど笑えない。そう思って姫川が清木に問えば、
「はい。大切なことは全てメモしました。後の細かいところも頭の中でいつでも再生可能です。先輩の美しくて低い声を忘れようがありません。」
と、はっきりと答える。
姫川と2人の時の清木が以前にも増して変態じみていくことに少し怖さを感じながら
「そうか・・・お前のその無駄な記憶力はもっと他の事で発揮したほうがいいと思うぞ。」
と呟くように返すことしかできなかった。
その時、
「随分と仲が良いんだな。山田の次はそいつをたらし込んでいるのか?俺が知らない間に男を手玉に取るのが上手くなったもんだな。」
恐ろしく低い声が背後から聞こえ、思わずビクッと姫川は後ろを振り返った。
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