ドールの菫の物語

影葉 柚樹

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神様

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「菫(すみれ)」
「なぁにマスター?」
「ちょっと洗濯物干してくるから大人しくしててね」
「はーい」

 マスターと共に生活し始めてかれこれ半月、僕は愛情を沢山もらって幸せ。
 僕に心……感情を与えてくれた神様はとても優しい神様。
 人間になりたいと強く願っている僕にチャンスを与えてくれた。
 それは普通なら考えれないものだとマスターは言っていた。
 普通なら動く事も話す事も出来ない人形が、こうして話したり、動いたりするのはおかしいんじゃないかなって思う。
 でもマスターもママも「運命」だと言って受け入れてくれて愛情を与えてくれた。
 ベランダでマスターが洗濯物を干しているのを眺めていると心が動く気がした。

「マスター……」

 マスターの事を考えると心が苦しくて、マスターに触れられていると心は穏やかになって、マスターの愛情を受けると心が喜ぶ。
 これが感情であると教えてくれた神様。
 僕が本当に人間になれたら神様にお礼を言いたいな。
 僕にとって神様がくれたチャンスがなかったら、僕はこの人生を歩めてなかったから。

「ふぅ、冷えてきたね~」
「マスター!」
「んー? どうしたの菫」
「大好き♪」
「ふふっ、私も大好きよ菫」

 僕の願いが叶う日があるとしたら、それは僕が人間となってマスターを守る素敵なナイトになった時だって思うのはおかしい事?
 マスターの手に包まれた身体全部でマスターに愛を捧げる。
 こんなにも僕はマスターを好きだって伝えたい。
 人間になったらマスター、どうか僕だけを愛してね?
 僕の心はマスターの物だよ。
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