ドールの菫の物語

その姿に心奪われて

　マスターは読書が大好き、僕もその影響で本を読むのが大好きになった。
　僕はつい今日は本を読んでいる間にウトウトとして寝落ちてしまった。

「ん？　寝ちゃったか……お休み菫（すみれ）」

　マスターの声に反応したかったけれど、睡魔が僕を包み込んでいく。
　僕はぐっすりと寝ていたようで、次に目覚めた時にはマスターは本を片手にして何かを飲んでいた。
　ぼんやりした意識でその姿を見つめていたけれど、不意に心がドクンと高鳴る。

「（カッコいい……マスターが凄くカッコいい……）」

　声に出さないでそんな事を考えていると、また僕は睡魔に意識を預けた。
　マスターは飲んでいた飲み物を置いて、チラッと僕を見つめて微笑む。
　よく寝ているな、と思われたかもしれない。
　でもなんでだろう、夢に出てきたマスターはとてもカッコよく見えて心が奪われるような感覚を受けたのは、僕がマスターを好きだから？
　そんな事を夢うつつの状態で思っていると、髪の毛を撫でられる感覚で目覚める。

「んぅ……」
「起きたかい菫。よく寝てたね」
「おはよ……う……マスター……」
「あはは、まだ眠いなら寝ててもいいよ。私が傍に居るから」
「うぅん……マスターの傍に居るっ……ふあぁぁ」
「ふふっ、菫……おはよう」

　マスターから額にキスされて僕の鼻にはカモミールの香りが感じられた。
　マスターの服から感じれたその香りに僕はまた急激に眠気が襲ってくる。
　目を擦る僕にマスターは抱き上げて腕に抱くと、ポンポンと背中を叩いてきた。

「素直に寝な？　たまにはぐっすり寝る事も必要さ」
「ごめんね……起きたら……マスターと……お話するからっ……」
「あぁ、分かった。お休み菫」
「お休みなさい……マスター……」

　僕はマスターのカッコいい一面を見れて心を奪われたんだと思う。
　ドクンドクンと打つ心臓がマスターの温もりを感じると早く打つから。
　これが恋に落ちたって事なんだろうな、と浅い知識の僕はそう感じた。
　僕はどんなマスターも好きだけれど、今日見たマスターは別格。
　好きだよマスター、その姿で僕を魅了しててね？？