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17:掴めなくて
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不思議な感覚、落ちているのか、浮かんでいるのか、上下左右が分からない。
ただそこに「いる」、それだけの感覚を覚えている。
どこにいるかとか、どうしてここにいるのだとか、全く分からない。
そこに「いる」だけの状態の私は伏せてる瞳から流れ落ちる涙には気付かない。
静かに身体が何かに包まれていく感じがして、伏せていた瞳をそっと開く。
黒い何か、それが私の身体をグルグルと包み始めて縛り上げようとするのが伺えた。
「……」
逃げないと捕まる、捕まればこの状態から戻れない、そう本能的に察しても私の身体は動きを見せない。
動かそうとしても重たくて動きが取れない、どうしたらいいんだろうかと視線だけを空間を見る為に動かす。
その視界さえも奪う黒い何かが蠢く。
ダメだ、閉ざされる、そう感じた私の瞳は無意識にギュウっと伏せられて襲い来る暗闇を拒もうとするが、黒い何かの動きは緩やかに動きそれがジワリジワリと恐怖を育てていく。
怖い、そう思えば恐怖は物凄い勢いで身体と心を支配していき、完全に身動きの取れない状態へと陥った。
一体私が何をしたのだろうか。
困惑と不安と恐怖に苛まれた心は次第に深い深い漆黒へと落ちていく、そんな感じがした。
「弥生!」
「!」
「掴め!」
「楓……!」
「俺の手を掴め!」
「楓!」
聞こえてきた愛おしい貴方の声。
伸ばされる光を纏った手。
それを掴もうと必死に動かない腕を動かそうとする。
でも、掴めなくて。
私はそのまま漆黒へと沈んでいく。
そこで目が覚めた。
私は大量の汗を流して肩で息をしている。
隣にはいる筈の楓の姿がなくて、急激に身体の芯から冷えていく。
楓の声が、手が、私を温めてくれる。
それを求める私は幼子のようで、ベッドから身体を起こして降りようとしてガチャリと音がしてそちらに視線を向けると、楓がタオルを持って入ってきた。
「かえ、で」
「あ、弥生起きた? 魘されてて汗も酷かったから濡れタオル用意してきたよ」
「あっ……」
「大丈夫、俺がここにいるよ」
「楓……! 楓!」
触れる楓の手が私に温もりを与えてくれる、触れる冷たいタオルに汗を拭かれて綺麗になっていく肌を楓は愛おし気に撫でてくる。
その触れ方が壊れ物を扱うようで少し恥ずかしいけれども、それでもあの夢だろう世界で感じた恐怖は未だに身体に残る。
私の手は楓の手を掴めなくて、それで漆黒の世界へと落ちて行ったのを思い出す。
楓が伸ばした手を私は掴めないのは拒んだとかじゃない、連れ去られたからだと思いたい。
楓の唇が私の右頬に触れると、リップ音をさせて何回でもキスをしてくれる。
ここに楓がいる、そう刻むかのように。
「楓」
「弥生は何処にも行かせない。俺の腕の中にしか居場所はないんだから」
「うん。私の居場所は楓の腕の中だから」
「どんな時だって俺が弥生を守るよ。守れない時は二人で死んじゃおう」
「そうだね。私の命は楓の命と共にあるよ」
「愛している弥生」
「楓、私も愛してる」
囁き合い、見つめ合い、そして唇を重ね合い愛を誓い、確認して寄り添う。
掴めなくて伸ばしても触れれない夢なんて叶わない。
だって、私と楓はこんなにも愛し合っている。
誰であろうと私達を引き裂くなんて出来ない。
そう私と楓は信じている。
私の心は楓だけのもの――――。
ただそこに「いる」、それだけの感覚を覚えている。
どこにいるかとか、どうしてここにいるのだとか、全く分からない。
そこに「いる」だけの状態の私は伏せてる瞳から流れ落ちる涙には気付かない。
静かに身体が何かに包まれていく感じがして、伏せていた瞳をそっと開く。
黒い何か、それが私の身体をグルグルと包み始めて縛り上げようとするのが伺えた。
「……」
逃げないと捕まる、捕まればこの状態から戻れない、そう本能的に察しても私の身体は動きを見せない。
動かそうとしても重たくて動きが取れない、どうしたらいいんだろうかと視線だけを空間を見る為に動かす。
その視界さえも奪う黒い何かが蠢く。
ダメだ、閉ざされる、そう感じた私の瞳は無意識にギュウっと伏せられて襲い来る暗闇を拒もうとするが、黒い何かの動きは緩やかに動きそれがジワリジワリと恐怖を育てていく。
怖い、そう思えば恐怖は物凄い勢いで身体と心を支配していき、完全に身動きの取れない状態へと陥った。
一体私が何をしたのだろうか。
困惑と不安と恐怖に苛まれた心は次第に深い深い漆黒へと落ちていく、そんな感じがした。
「弥生!」
「!」
「掴め!」
「楓……!」
「俺の手を掴め!」
「楓!」
聞こえてきた愛おしい貴方の声。
伸ばされる光を纏った手。
それを掴もうと必死に動かない腕を動かそうとする。
でも、掴めなくて。
私はそのまま漆黒へと沈んでいく。
そこで目が覚めた。
私は大量の汗を流して肩で息をしている。
隣にはいる筈の楓の姿がなくて、急激に身体の芯から冷えていく。
楓の声が、手が、私を温めてくれる。
それを求める私は幼子のようで、ベッドから身体を起こして降りようとしてガチャリと音がしてそちらに視線を向けると、楓がタオルを持って入ってきた。
「かえ、で」
「あ、弥生起きた? 魘されてて汗も酷かったから濡れタオル用意してきたよ」
「あっ……」
「大丈夫、俺がここにいるよ」
「楓……! 楓!」
触れる楓の手が私に温もりを与えてくれる、触れる冷たいタオルに汗を拭かれて綺麗になっていく肌を楓は愛おし気に撫でてくる。
その触れ方が壊れ物を扱うようで少し恥ずかしいけれども、それでもあの夢だろう世界で感じた恐怖は未だに身体に残る。
私の手は楓の手を掴めなくて、それで漆黒の世界へと落ちて行ったのを思い出す。
楓が伸ばした手を私は掴めないのは拒んだとかじゃない、連れ去られたからだと思いたい。
楓の唇が私の右頬に触れると、リップ音をさせて何回でもキスをしてくれる。
ここに楓がいる、そう刻むかのように。
「楓」
「弥生は何処にも行かせない。俺の腕の中にしか居場所はないんだから」
「うん。私の居場所は楓の腕の中だから」
「どんな時だって俺が弥生を守るよ。守れない時は二人で死んじゃおう」
「そうだね。私の命は楓の命と共にあるよ」
「愛している弥生」
「楓、私も愛してる」
囁き合い、見つめ合い、そして唇を重ね合い愛を誓い、確認して寄り添う。
掴めなくて伸ばしても触れれない夢なんて叶わない。
だって、私と楓はこんなにも愛し合っている。
誰であろうと私達を引き裂くなんて出来ない。
そう私と楓は信じている。
私の心は楓だけのもの――――。
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