大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ

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第48話 嗚呼、我が友よ

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「――ふむ……凄いな。さすがはスピネイル。さすがは魔王の残骸といったところか」

 跡形もなく消し飛んだ魔王城の跡地には、息絶え絶えのスピネイルがいた。魔王化しそうだった身体は元に戻っていた。ただ、胸には魔王の瞳が健在であった。ちなみに浮遊大陸のほとんどは衝撃で消し飛んだ。

「ぐ……て、てすらぁ……わ、私は……」

「しゃべるな。そして、動くな」

 テスラは、胸へと腕を伸ばす。そして、魔王の瞳を鷲づかみにした。ぎょろりと魔王の目が睨む。だが、それ以上の眼光でテスラが睨みつけた。そして、身体から魔王の瞳を引きちぎる。

「う……ぐぁッ――」

 引きちぎったそれを、地面に放り投げるテスラ。生々しい眼球は、すぐに生気を失い、青白い水晶のような物体へと変貌を遂げる。

「スピネイル。意識はあるか?」

「……わ……私の……負けだ。煮るなり焼くなり――」

「いいか? 貴殿はなにも覚えていない」

「な、なんだ……と? ど、どういう――」

「おまえは、魔王の瞳に操られていただけだ。そんな不憫な領主を、私とリークが止めにきただけだ」

「ち、違う――」

「違うかどうかは、敗者の貴殿が決めることではない。私とリークが決めることだ」

 ……俺に決定権ないですよね? テスラ様が決めてますよね?

「貴殿は優秀な領主だ。国王への比類なき忠誠心と国家の繁栄を願うあまり、突飛なことをしてしまったのだろう」

「テスラ……あなたは……」

「パーティでのことは忘れろ。私の身内にしたことも忘れろ。私にしたことも忘れろ。今日のことも忘れろ。そして、これまでと同じように、立派な領主を務めよ。貴殿よりもクラージュ領に相応しき領主はおらん。――リーク」

「はい」

「おまえも、忘れるよな?」

「まあ、テスラ様がそうおっしゃるのであれば」

「うむ。バニンガの一件は何かの勘違いであったと、民に誤解を解いておけ」

 まったく、この人は。どこまでお人好しなんだ。

「な、なぜ……」

「貴殿は、大きな過ちを犯したが、友である私が運良く止めることができた。優秀な人間は、同じ過ちは犯さない。これからのクラージュは、さらなる繁栄を遂げるだろう。私は、それが楽しみなのだ」

「テスラ……ッ! お、おまえは……私を友というかッ!」

「領主をしていれば、こういうこともある。それに、私の力はこういう時にこそ使うものだ」

 個人的には、ここまで迷惑をかけたわけだし、ちょっとぐらいお仕置きしてもいいと思った。けど、この人が言うのなら、俺はもう従うだけかな。

「帰るぞ、リーク……っと――」

 よろめくテスラ。さすがに疲労困憊のようだ。無理もない。俺は、すかさず肩を貸す。

「……すまんな。おまえには助けられてばかりだ」

「そんなことないですよ。俺は、ちょいとだけ力を貸しているだけです」

 この後、俺たちはバルティアの町へと戻る。
 そして、スピネイルは心を入れ替え、町の繁栄に力を入れたとか――。

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