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この身体が嫌すぎる 2nd Season
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翌日、村長の別宅で目覚めた。俺は寝坊したようだ、現在8時。身体が酷く重い。
喉と脇の下に不快な違和感がある。
これは、もしかしてアレか?まさか!まさか!まさか!
流石にここで試す訳にはいかない!どうしよう?俺はロップも連れずに一人で
バシリスクを倒した荒れ地に最高速ですっ飛んで行った。
飛び立つ前にリリが何か叫んでいたが聞き取れなかった。まずは俺の身体の異変
の方が問題だ。
荒れ地に着いた俺は、鼻を指で摘まんでから、喉の違和感を吐き出した。
『ぼええええええ』
はい、紫色の毒煙が吐き出されましたよ。バシリスクの特性ゲットだぜ!
ううっ、目に滲みるな。だからバシリスクは目を閉じていたのか。
だが、そんな事分かっても、ちっとも嬉しくねーんだよ!
そして両腕を上げて目を閉じてから、両脇の違和感を放出する。
なんだこのポーズ?ハードゲイ芸人とか何年前の話だよ。
『ぼしゅううう』
腋の下から紫色の煙が噴出された。毒ガスですね、流石に予想は出来ていたよ。
でも俺は毒ガスの影響を受けていない、猛毒耐性も手に入れたんだろうね。
今、気付いたが、猛毒耐性をゲットしてなかったら、俺ヤバかったよな。
これで俺が取得した特技は、
・痰を吐く(カギムシ君)
・屁を放つ(ヘッピリ虫君)
・口臭を吐き散らす(バシリスク君)
・腋臭を放出する(バシリスク君)
・自分の悪臭を気にしない(バシリスク君)
....なんだろうね?この嫌われる人の特性てんこ盛りは。次はハゲとか、デブとか、
加齢臭とか、空気読めないとかの特性をゲットして行くのだろうか?
それに俺には現在、身体に猛毒ガスの生成器官があるんだよな、嫌すぎるぞ。
俺の身体はどうなって行くんだろう?
大体、今まで取得した特性を使った事がないんだが?敵の前で、かーっ、ぺっ
とか痰を吐くのか?敵の前で突然、いきなり尻を見せて屁をするのか?
すざけんな!今回ゲットした能力も環境破壊兵器だぞ!強力かもしれないけど、
使えば周りにいるヤツは死ぬぞ!完全にボッチ前提の能力だ。
....もしかしたら、バシリスクもボッチで寂しかったのかもしれないね。
こうして新たな能力を得ることが出来たが、俺は意気消沈して村に戻った。
村に帰るとリリが飛びついて来た。
「レイ兄ちゃん。急に飛んで行くから、オラ心配しただよ」
「ごめんなリリ、ちょっと急用があったんだ。リリは俺が口から臭い息を
吐いたり、腋から臭いを出したらどう思う?」
「ん?別にレイ兄ちゃんは臭くないだよ。ゴレロフさんの方がもっと臭いだよ」
確かに、ゴレロフさんは臭い。ダリエラさんは良く我慢しているな。
今度、機会があったら、デッキブラシで擦ってやろう。
さて、どうしようか?取り合えず家に帰るか。カジキとダツはドルロフさんに
渡してメンテを依頼しておいたしな。
まだ、エーラは寝ているみたいだ。丁度いい、今のうちに家に帰ろう。アイツが
いると色々面倒臭いからな。しばらくは家でまったり過ごそう。
「リリ、家に帰ろうか」
「うん、レイ兄ちゃん。オラ、わっくーと、くーわに会いたいだよ」
俺は一応ゴレロフ村長に挨拶をして数日は戻らない事を伝えてから、
ロップとリリを連れて家に帰る事にした。
今回のバシリスク戦では貫通力と衝撃力の違いを実感できた。ダツはバシリスク
を地面に縫い留める事はできたが、ヤツはまだ生きていた。カジキでの一撃は
ヤツの頭を爆散させる事が出来た。まあ、命中する箇所や距離にもよるのだろう
けどね。アハト・アハトもどちらかと言えば貫通力重視の設計だ。
2号を改造するべきだな。口径を8.8cmではなく、12.8cmに設計変更
しよう。駆逐戦車ヤークトティーゲルの主砲と同じだ。場合によっては1号の
口径を小さくして2号に鋼材を注ぎ足す必要があるかもしれないな。
あれ?そうなると、どちらもアハト・アハトじゃなくなるよね?
う~ん?ヴィットマン大尉を敬愛する俺としては口径8.8cmには
こだわりたいな。まあ後で考えるとしようか。
帰宅途中の石河原で、ノビルとメリン茸を採取しておいた。そろそろスッポン様
が食べたくなってきたな。家に戻ったら狙ってみよう。
という訳で、憩いの我が家に着いた。現在9時過ぎ。林に行くとわっくーが
『ぐえぐえ』と鳴いて現れた。くーわも元気そうだね、エサをやっておくか。
リリにエサの用意を頼むと、ダッシュで蟹を獲りに行った。ティエラさんに
貰った干からびた芋とリリが獲った蟹、今日採ったノビルをバケツに入れて
置いておく。そろそろ卵が孵るんじゃないかな?楽しみだ。
孵る時に俺を最初に見たら、俺を親だと思うのかな?
まあ、くーわ母さんに悪いから止めておこう。
さて昼飯と晩飯の準備をしよう、昼飯は茶鱒でいいよな。リリには洗濯の仕方を
教えて頼んでおいた。勤労幼女は張り切っている。
俺は茶鱒を釣りに下流の滝壺に向かった。今回はぶっこみ仕掛けも試してみよう、
スッポン様狙いだ。釣り具で一番太い糸は8号だったのでそれを使う。
針もゴツイ石鯛用の針だ。
ナツメ型オモリを通して、滝壺に放り込んでおいた、糸は岩に括りつけて置く。
夕方くらいに引き上げればいいだろう、あまり期待はしていないけどな。
エサはリリがわっくー達の餌用に獲った蟹の中で一番デカいやつだ。
茶鱒は一時間程で6匹釣れた。昼は茶鱒の塩焼きと茹で赤芋で軽く済まそう。
午後は家の周りの崖の上を調査するか。一番身近なのに今まで全く意識して
いなかった場所だ。正に盲点だったね
茶鱒を七輪で塩焼きにして、俺達は"頂きます"をした。リリは両手で茶鱒の
塩焼きを掴んで頭からバリバリ食べている。なんかこのバリバリ音が最近は
心地良く感じてきたよ。
「レイ兄ちゃん、オラ、こんなに美味えもんをいつも食べさせて貰って申し訳
ないだよ。もっとレイ兄ちゃんの役に立つ様にお仕事頑張るだよ!」
健気な勤労幼女だ。ほとんど遊んでいるアホ猫はリリをちょっとは見習え!
しかし、俺も村の料理を何度かご馳走になったが基本的に味付けは塩と、
カスレの実だけだったな。大陸での味付けはどうなんだろう?
ロップに聞いてみるか。
「ロップ、コウエイ様達はどういう味付けで料理をしていたんだ?」
茶鱒入りバケツからロップが顔を出した。
「うにゃ?ボクは生魚しか食べてなかったから良くは知らないっすよ。
最初の頃は大体パイノワールさんが料理をしてたっすね。味付けについては、
いつもガラムドさんとケンカしてたっすよ」
....またガラムドのオジキか。詳しく聞いてみるか。
「ガラムドさんはパイノワールさんの料理に対して何が不満だったんだ?」
「そうっすね~、こんな事があったっすよ。パイノワールさんはエルフ族に
伝わる黒い調味料を良く使ってたっす。コウエイ様は喜んでたんすけどね。
ある時、パイノワールさんがその調味料を使って、キノコと鳥肉のスープを
作ったっす。ガラムドさんはそれを全部美味しそうに食べた後に....」
以降はガラムドさんとパイノワールさんのやり取りをロップが再現してくれた。
アホ猫のくせに、何気に凄い演技力だね。
『ムオッ!何だこの料理は!だからワシは他人の料理を食べるのは嫌なんだ!
客であるワシにこんなものを食わせるとは!』
ガラムドさんは完食して空になった食器を投げ払ったらしい。
『何してんのよガラムド!アンタ全部美味しそうに食べたじゃない!
大体、自分では全く料理しないくせに、その態度は何なんだ。ぶっ殺すぞ!」
これはパイノワールさんが怒るのも当然だ。俺でもブチ切れるだろう。
『うるさい!女将を呼べ!』
....女将を呼べって言うヤツの実話を初めて聞いた。
何か、ガラムドさんの行動の理由が分かってきたぞ。
『女将って誰だ!これを作ったのはワタシだ。表に出やがれ!
ヒゲじじい!今日こそ泣かせてやるからな!」
『何だその態度は。オマエが女将か?ワシが誰だか知らぬはずはあるまいな!
ワシを美食家として名高いガラムドと知りながら、こんなものを出したのか!
ワシも随分と舐められたものだな」
『こんちくしょう!なんだ、このクソじじいは!絞め殺してやる!』
その後、パイノワールさんがガラムドさんに飛び掛かって大乱闘になったらしい。
ガラムドさんはコウエイ様の資料(マンガ)に影響されすぎた様だ。
ガラムドさんに会うのが面倒臭くなってきたぞ。しかしエルフ族の黒い調味料が
気になるな。醤油じゃないのか?早めにエルフ族の集落を探しに行こう。
「他にもこんな事があったっすよ。ガラムドさんが....」
「いや、ロップ。今日はガラムドさんの話はもういいよ。後で聞かせてくれ」
これ以上のガラムドさんの暴走話はお腹いっぱいだ。大陸での料理の話を聞く
つもりだったのだがな。
「レイ兄ちゃん、コウエイ様とか、ガラムドさんとか、パイノワールさんって
誰だんべ?オラ知らねえだよ」
そういえば、リリにはまだ俺が星母神様の使徒である事や、使徒がどういう存在
なのかを説明していなかったな。まだ幼女のリリには理解できないだろう。
「リリがもう少し大きくなったら教えてやるよ。今は良く食べて、良く働いて、
良く遊んで、良く寝るのが、リリのやる事だ」
「....分かっただよ。レイ兄ちゃん」
よし!午後は崖上を調査しに行こう。リリには南の大河で採って来たベサル菜を
叩いて干しておくように言っておいた。終わったら遊んでもいいぞと付け加えた。
ロップはリリに付けておく。リリ一人では不安だからな。
俺はアハト・アハト一号を装備して南側の崖上の森を探索した。滝の上の上流
とは植生が微妙に違うようだ。松みたいな針葉樹と名も知らぬ広葉樹が混生して
いる様だ。滝の上は広葉樹ばかりだったな。鉈で藪を切り払って探索を進める。
松ぼっくりみたいにささくれたキノコが一杯生えてる一角があった。結構デカい。
傘が10cm位ある。前世での香茸に酷似しているな。以前、ゲテ村の実家で
食べさせて貰ったけど美味いんだよね。見た目はアレだけど、マツタケとも違う
いい匂いがするキノコだった。ちょっと醤油みたいな匂いがするんだよ。
まず齧ってみよう。うん、これはやはり香茸みたいだ。
ゾクゾク感も全くない。これは大量採取だ!ゲテ村の実家では生をソテーにして
食べたけど、どうしようかな?ゲテ村家では普通は干して食べていたらしい。
干せば良い出汁が期待できるだろうな。村の婦人達には黙っていよう。話せば
また強奪されるだろうからな。面倒臭かったが一つ一つ齧って毒見をしておいた。
俺は大丈夫だろうけど、リリが心配だからね。
香茸群生地から、ちょっと離れた場所で、真っ白い綺麗なキノコを発見した。
ああ、これは恐らくダメなヤツだな。一応齧ってみる。
うひょー、この毒々しいゾクゾク感はたまりませんな!
これは恐らくドクツルタケだろう。英名はDestroying Angel、破壊天使だ。
コレラ中毒に似た症状を引き起こす恐ろしいキノコだ。
これを食べて亡くなった人の肝臓は毒に侵されてスポンジの様にスカスカに
なっていたらしい。怖いね。
だが、毒無効に加えて、猛毒耐性を得た俺には効かないがな!ふふふ。
その後、藪を鉈で切り払って進む事30分。開けた場所に辿り着いた。
10メートル四方位の小さな池がある。どこからも水が流れ込んでいる様子は
無いので、湧き水なんだろう。周囲は湿地の様になっているな。
一部ぐちゃぐちゃに泥が捏ねまわされている場所がある。これはヌタ場かも
しれない。猪とかがダニを落とす為に転げまわる場所だ。チェックしておこう。
今回は一旦戻ろうか。香茸は採れたけど、晩飯はまた茶鱒かな。急いで戻って
釣りをしないとならない。
家に戻って、ロップとフリスビーで遊んでいたリリに、香茸を干し網で干す
ように頼んだ。
「分かっただよ、レイ兄ちゃん。ロップちゃん、遊びはこれまでだよ」
「そんな事、レイ様がやればいいんすよ!ボクはリリちゃんと遊んでたんすよ!」
リリは頭を撫でておいた。アホ猫は頭をアイアンクローで締め上げておいた。
うにゃうにゃうるせーぞ!少しは働いてから文句を言え!
釣りの準備をして下流の滝壺に向かった。仕掛けておいた、ぶっこみ仕掛けを
確認しよう。釣り糸を手繰ると反応がある。何か掛かっているぞ!糸は8号だ
強引にぐいぐい引き寄せると、これは....。
ウナギ先生だー!デカいぞ、1メートル位ある!でもなんか俺が知ってる
ウナギと違う、豹柄だ。それにデカすぎるだろ。これは沖縄とかにいる大ウナギ
かもしれない。だが、針を外した時に見たがハモみたいに牙が生えてる。
食えるのかなコイツ?毒とかないよな?
取り合えず、俺が味見して毒の有無を確認するしかないだろう。
一応、茶鱒を10匹釣っておいた。ウナギ?はどうやって料理しようか。
醤油が無いから蒲焼も出来ないしな。白焼きにするしかないだろうな。
現在16時。家に戻って河原でウナギ?を捌いた。あまり知られていないけど、
ウナギの血って毒があるんだよね。普通に火を通せば問題ないけど。
リリがいるし、一応、魔法で血抜きをしておこう。これがウナギなのかどうか
分からないが。身をちょっと味見してみたが毒はないようだ。七輪で少し焼いて、
ダッチオーブンで蒸してみるか。キーロフの爺に貰った炭は、
まだまだ余裕はあるが、今後どうしようかね。まだ拗ねて引き籠っているのかな。
「それでは皆さん」
「「「頂きまーす」」」
晩飯はウナギの様な魚の白焼きと茹で赤芋だ。白焼きを食べてみると、ウナギと
いうよりハモみたいだ。ちょっと小骨が気になる。骨切りして牡丹ハモにする
べきだったな。まあ、俺には骨切りなんて出来ないんだけどな。だがそれなりに
美味い。淡泊な白身魚だ。リリは雁木小僧なのでバリバリ食っている。
ロップにも小骨が多い尻尾の方をやっておいた。コイツも雁木小僧だからな。
「レイ兄ちゃん、このお魚も美味かっただよ」
そうか、良かったね。1メートルもあったのに、3人で全部食い尽くした。
でもこれはウナギではないな。川ハモと名付けよう。
さて、明日はどうしよう?今日見つけた池を確認するか。ヌタ場ならダイアボア
とかが獲れるかもしれない。北側の崖上も探索しないとな。
さて、後片付けをしたら、重力魔法の修練だ!
喉と脇の下に不快な違和感がある。
これは、もしかしてアレか?まさか!まさか!まさか!
流石にここで試す訳にはいかない!どうしよう?俺はロップも連れずに一人で
バシリスクを倒した荒れ地に最高速ですっ飛んで行った。
飛び立つ前にリリが何か叫んでいたが聞き取れなかった。まずは俺の身体の異変
の方が問題だ。
荒れ地に着いた俺は、鼻を指で摘まんでから、喉の違和感を吐き出した。
『ぼええええええ』
はい、紫色の毒煙が吐き出されましたよ。バシリスクの特性ゲットだぜ!
ううっ、目に滲みるな。だからバシリスクは目を閉じていたのか。
だが、そんな事分かっても、ちっとも嬉しくねーんだよ!
そして両腕を上げて目を閉じてから、両脇の違和感を放出する。
なんだこのポーズ?ハードゲイ芸人とか何年前の話だよ。
『ぼしゅううう』
腋の下から紫色の煙が噴出された。毒ガスですね、流石に予想は出来ていたよ。
でも俺は毒ガスの影響を受けていない、猛毒耐性も手に入れたんだろうね。
今、気付いたが、猛毒耐性をゲットしてなかったら、俺ヤバかったよな。
これで俺が取得した特技は、
・痰を吐く(カギムシ君)
・屁を放つ(ヘッピリ虫君)
・口臭を吐き散らす(バシリスク君)
・腋臭を放出する(バシリスク君)
・自分の悪臭を気にしない(バシリスク君)
....なんだろうね?この嫌われる人の特性てんこ盛りは。次はハゲとか、デブとか、
加齢臭とか、空気読めないとかの特性をゲットして行くのだろうか?
それに俺には現在、身体に猛毒ガスの生成器官があるんだよな、嫌すぎるぞ。
俺の身体はどうなって行くんだろう?
大体、今まで取得した特性を使った事がないんだが?敵の前で、かーっ、ぺっ
とか痰を吐くのか?敵の前で突然、いきなり尻を見せて屁をするのか?
すざけんな!今回ゲットした能力も環境破壊兵器だぞ!強力かもしれないけど、
使えば周りにいるヤツは死ぬぞ!完全にボッチ前提の能力だ。
....もしかしたら、バシリスクもボッチで寂しかったのかもしれないね。
こうして新たな能力を得ることが出来たが、俺は意気消沈して村に戻った。
村に帰るとリリが飛びついて来た。
「レイ兄ちゃん。急に飛んで行くから、オラ心配しただよ」
「ごめんなリリ、ちょっと急用があったんだ。リリは俺が口から臭い息を
吐いたり、腋から臭いを出したらどう思う?」
「ん?別にレイ兄ちゃんは臭くないだよ。ゴレロフさんの方がもっと臭いだよ」
確かに、ゴレロフさんは臭い。ダリエラさんは良く我慢しているな。
今度、機会があったら、デッキブラシで擦ってやろう。
さて、どうしようか?取り合えず家に帰るか。カジキとダツはドルロフさんに
渡してメンテを依頼しておいたしな。
まだ、エーラは寝ているみたいだ。丁度いい、今のうちに家に帰ろう。アイツが
いると色々面倒臭いからな。しばらくは家でまったり過ごそう。
「リリ、家に帰ろうか」
「うん、レイ兄ちゃん。オラ、わっくーと、くーわに会いたいだよ」
俺は一応ゴレロフ村長に挨拶をして数日は戻らない事を伝えてから、
ロップとリリを連れて家に帰る事にした。
今回のバシリスク戦では貫通力と衝撃力の違いを実感できた。ダツはバシリスク
を地面に縫い留める事はできたが、ヤツはまだ生きていた。カジキでの一撃は
ヤツの頭を爆散させる事が出来た。まあ、命中する箇所や距離にもよるのだろう
けどね。アハト・アハトもどちらかと言えば貫通力重視の設計だ。
2号を改造するべきだな。口径を8.8cmではなく、12.8cmに設計変更
しよう。駆逐戦車ヤークトティーゲルの主砲と同じだ。場合によっては1号の
口径を小さくして2号に鋼材を注ぎ足す必要があるかもしれないな。
あれ?そうなると、どちらもアハト・アハトじゃなくなるよね?
う~ん?ヴィットマン大尉を敬愛する俺としては口径8.8cmには
こだわりたいな。まあ後で考えるとしようか。
帰宅途中の石河原で、ノビルとメリン茸を採取しておいた。そろそろスッポン様
が食べたくなってきたな。家に戻ったら狙ってみよう。
という訳で、憩いの我が家に着いた。現在9時過ぎ。林に行くとわっくーが
『ぐえぐえ』と鳴いて現れた。くーわも元気そうだね、エサをやっておくか。
リリにエサの用意を頼むと、ダッシュで蟹を獲りに行った。ティエラさんに
貰った干からびた芋とリリが獲った蟹、今日採ったノビルをバケツに入れて
置いておく。そろそろ卵が孵るんじゃないかな?楽しみだ。
孵る時に俺を最初に見たら、俺を親だと思うのかな?
まあ、くーわ母さんに悪いから止めておこう。
さて昼飯と晩飯の準備をしよう、昼飯は茶鱒でいいよな。リリには洗濯の仕方を
教えて頼んでおいた。勤労幼女は張り切っている。
俺は茶鱒を釣りに下流の滝壺に向かった。今回はぶっこみ仕掛けも試してみよう、
スッポン様狙いだ。釣り具で一番太い糸は8号だったのでそれを使う。
針もゴツイ石鯛用の針だ。
ナツメ型オモリを通して、滝壺に放り込んでおいた、糸は岩に括りつけて置く。
夕方くらいに引き上げればいいだろう、あまり期待はしていないけどな。
エサはリリがわっくー達の餌用に獲った蟹の中で一番デカいやつだ。
茶鱒は一時間程で6匹釣れた。昼は茶鱒の塩焼きと茹で赤芋で軽く済まそう。
午後は家の周りの崖の上を調査するか。一番身近なのに今まで全く意識して
いなかった場所だ。正に盲点だったね
茶鱒を七輪で塩焼きにして、俺達は"頂きます"をした。リリは両手で茶鱒の
塩焼きを掴んで頭からバリバリ食べている。なんかこのバリバリ音が最近は
心地良く感じてきたよ。
「レイ兄ちゃん、オラ、こんなに美味えもんをいつも食べさせて貰って申し訳
ないだよ。もっとレイ兄ちゃんの役に立つ様にお仕事頑張るだよ!」
健気な勤労幼女だ。ほとんど遊んでいるアホ猫はリリをちょっとは見習え!
しかし、俺も村の料理を何度かご馳走になったが基本的に味付けは塩と、
カスレの実だけだったな。大陸での味付けはどうなんだろう?
ロップに聞いてみるか。
「ロップ、コウエイ様達はどういう味付けで料理をしていたんだ?」
茶鱒入りバケツからロップが顔を出した。
「うにゃ?ボクは生魚しか食べてなかったから良くは知らないっすよ。
最初の頃は大体パイノワールさんが料理をしてたっすね。味付けについては、
いつもガラムドさんとケンカしてたっすよ」
....またガラムドのオジキか。詳しく聞いてみるか。
「ガラムドさんはパイノワールさんの料理に対して何が不満だったんだ?」
「そうっすね~、こんな事があったっすよ。パイノワールさんはエルフ族に
伝わる黒い調味料を良く使ってたっす。コウエイ様は喜んでたんすけどね。
ある時、パイノワールさんがその調味料を使って、キノコと鳥肉のスープを
作ったっす。ガラムドさんはそれを全部美味しそうに食べた後に....」
以降はガラムドさんとパイノワールさんのやり取りをロップが再現してくれた。
アホ猫のくせに、何気に凄い演技力だね。
『ムオッ!何だこの料理は!だからワシは他人の料理を食べるのは嫌なんだ!
客であるワシにこんなものを食わせるとは!』
ガラムドさんは完食して空になった食器を投げ払ったらしい。
『何してんのよガラムド!アンタ全部美味しそうに食べたじゃない!
大体、自分では全く料理しないくせに、その態度は何なんだ。ぶっ殺すぞ!」
これはパイノワールさんが怒るのも当然だ。俺でもブチ切れるだろう。
『うるさい!女将を呼べ!』
....女将を呼べって言うヤツの実話を初めて聞いた。
何か、ガラムドさんの行動の理由が分かってきたぞ。
『女将って誰だ!これを作ったのはワタシだ。表に出やがれ!
ヒゲじじい!今日こそ泣かせてやるからな!」
『何だその態度は。オマエが女将か?ワシが誰だか知らぬはずはあるまいな!
ワシを美食家として名高いガラムドと知りながら、こんなものを出したのか!
ワシも随分と舐められたものだな」
『こんちくしょう!なんだ、このクソじじいは!絞め殺してやる!』
その後、パイノワールさんがガラムドさんに飛び掛かって大乱闘になったらしい。
ガラムドさんはコウエイ様の資料(マンガ)に影響されすぎた様だ。
ガラムドさんに会うのが面倒臭くなってきたぞ。しかしエルフ族の黒い調味料が
気になるな。醤油じゃないのか?早めにエルフ族の集落を探しに行こう。
「他にもこんな事があったっすよ。ガラムドさんが....」
「いや、ロップ。今日はガラムドさんの話はもういいよ。後で聞かせてくれ」
これ以上のガラムドさんの暴走話はお腹いっぱいだ。大陸での料理の話を聞く
つもりだったのだがな。
「レイ兄ちゃん、コウエイ様とか、ガラムドさんとか、パイノワールさんって
誰だんべ?オラ知らねえだよ」
そういえば、リリにはまだ俺が星母神様の使徒である事や、使徒がどういう存在
なのかを説明していなかったな。まだ幼女のリリには理解できないだろう。
「リリがもう少し大きくなったら教えてやるよ。今は良く食べて、良く働いて、
良く遊んで、良く寝るのが、リリのやる事だ」
「....分かっただよ。レイ兄ちゃん」
よし!午後は崖上を調査しに行こう。リリには南の大河で採って来たベサル菜を
叩いて干しておくように言っておいた。終わったら遊んでもいいぞと付け加えた。
ロップはリリに付けておく。リリ一人では不安だからな。
俺はアハト・アハト一号を装備して南側の崖上の森を探索した。滝の上の上流
とは植生が微妙に違うようだ。松みたいな針葉樹と名も知らぬ広葉樹が混生して
いる様だ。滝の上は広葉樹ばかりだったな。鉈で藪を切り払って探索を進める。
松ぼっくりみたいにささくれたキノコが一杯生えてる一角があった。結構デカい。
傘が10cm位ある。前世での香茸に酷似しているな。以前、ゲテ村の実家で
食べさせて貰ったけど美味いんだよね。見た目はアレだけど、マツタケとも違う
いい匂いがするキノコだった。ちょっと醤油みたいな匂いがするんだよ。
まず齧ってみよう。うん、これはやはり香茸みたいだ。
ゾクゾク感も全くない。これは大量採取だ!ゲテ村の実家では生をソテーにして
食べたけど、どうしようかな?ゲテ村家では普通は干して食べていたらしい。
干せば良い出汁が期待できるだろうな。村の婦人達には黙っていよう。話せば
また強奪されるだろうからな。面倒臭かったが一つ一つ齧って毒見をしておいた。
俺は大丈夫だろうけど、リリが心配だからね。
香茸群生地から、ちょっと離れた場所で、真っ白い綺麗なキノコを発見した。
ああ、これは恐らくダメなヤツだな。一応齧ってみる。
うひょー、この毒々しいゾクゾク感はたまりませんな!
これは恐らくドクツルタケだろう。英名はDestroying Angel、破壊天使だ。
コレラ中毒に似た症状を引き起こす恐ろしいキノコだ。
これを食べて亡くなった人の肝臓は毒に侵されてスポンジの様にスカスカに
なっていたらしい。怖いね。
だが、毒無効に加えて、猛毒耐性を得た俺には効かないがな!ふふふ。
その後、藪を鉈で切り払って進む事30分。開けた場所に辿り着いた。
10メートル四方位の小さな池がある。どこからも水が流れ込んでいる様子は
無いので、湧き水なんだろう。周囲は湿地の様になっているな。
一部ぐちゃぐちゃに泥が捏ねまわされている場所がある。これはヌタ場かも
しれない。猪とかがダニを落とす為に転げまわる場所だ。チェックしておこう。
今回は一旦戻ろうか。香茸は採れたけど、晩飯はまた茶鱒かな。急いで戻って
釣りをしないとならない。
家に戻って、ロップとフリスビーで遊んでいたリリに、香茸を干し網で干す
ように頼んだ。
「分かっただよ、レイ兄ちゃん。ロップちゃん、遊びはこれまでだよ」
「そんな事、レイ様がやればいいんすよ!ボクはリリちゃんと遊んでたんすよ!」
リリは頭を撫でておいた。アホ猫は頭をアイアンクローで締め上げておいた。
うにゃうにゃうるせーぞ!少しは働いてから文句を言え!
釣りの準備をして下流の滝壺に向かった。仕掛けておいた、ぶっこみ仕掛けを
確認しよう。釣り糸を手繰ると反応がある。何か掛かっているぞ!糸は8号だ
強引にぐいぐい引き寄せると、これは....。
ウナギ先生だー!デカいぞ、1メートル位ある!でもなんか俺が知ってる
ウナギと違う、豹柄だ。それにデカすぎるだろ。これは沖縄とかにいる大ウナギ
かもしれない。だが、針を外した時に見たがハモみたいに牙が生えてる。
食えるのかなコイツ?毒とかないよな?
取り合えず、俺が味見して毒の有無を確認するしかないだろう。
一応、茶鱒を10匹釣っておいた。ウナギ?はどうやって料理しようか。
醤油が無いから蒲焼も出来ないしな。白焼きにするしかないだろうな。
現在16時。家に戻って河原でウナギ?を捌いた。あまり知られていないけど、
ウナギの血って毒があるんだよね。普通に火を通せば問題ないけど。
リリがいるし、一応、魔法で血抜きをしておこう。これがウナギなのかどうか
分からないが。身をちょっと味見してみたが毒はないようだ。七輪で少し焼いて、
ダッチオーブンで蒸してみるか。キーロフの爺に貰った炭は、
まだまだ余裕はあるが、今後どうしようかね。まだ拗ねて引き籠っているのかな。
「それでは皆さん」
「「「頂きまーす」」」
晩飯はウナギの様な魚の白焼きと茹で赤芋だ。白焼きを食べてみると、ウナギと
いうよりハモみたいだ。ちょっと小骨が気になる。骨切りして牡丹ハモにする
べきだったな。まあ、俺には骨切りなんて出来ないんだけどな。だがそれなりに
美味い。淡泊な白身魚だ。リリは雁木小僧なのでバリバリ食っている。
ロップにも小骨が多い尻尾の方をやっておいた。コイツも雁木小僧だからな。
「レイ兄ちゃん、このお魚も美味かっただよ」
そうか、良かったね。1メートルもあったのに、3人で全部食い尽くした。
でもこれはウナギではないな。川ハモと名付けよう。
さて、明日はどうしよう?今日見つけた池を確認するか。ヌタ場ならダイアボア
とかが獲れるかもしれない。北側の崖上も探索しないとな。
さて、後片付けをしたら、重力魔法の修練だ!
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