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第九章
第377話 【海の見える温泉】
しおりを挟む先生達への講義は一週間だけと話し合いで決まっていたのだが、何だかんだ全部を伝えるのに一〇日ほどかかってしまった。しかし、一応は俺流の教え方の基礎を伝えると「素晴らしい」「成程、そんなやり方が」と言った風に学園の先生たちは納得した様子でいたので、今後は自分達に解釈して良い教え方をしていくのだろうと思う。
そんなこんなで、学園の先生に対しての講義が終了した俺は現在、アルスさんから呼び出しを受けて城へとやって来ていた。
「あの、それで呼び出した理由って何ですか?」
「ああ、実は……」
アルスさんは誰かに聞かれない為は、ちょいちょいと俺を手招きしたので近づき小声で内容を伝えられた。その内容とは、もうじきエマさんとの結婚記念日らしいのだが今まで色んな事をしてきてネタが尽きたらしく、どんな事をすれば喜んでくれるか考えて欲しいという事だった。
「いやいや、そう言うのは自分で考えないといけないんじゃないんですか?」
「そうだけど! 僕も、これまで色々とやって来てネタがもう尽きたんだよ。それに今度は、エマと知り合って20周年記念日で大事な日なんだよ。ラルク君、力を貸してくれないか!」
「……はぁ、分かりましたよ」
必死に懇願してくるアルスさんに根負けした俺は、溜息を吐きつつ了承してしまった。取りあえず、アルスさんにこれまでどんな事をしてきたのか聞いてみるとエマさんが好きな食べ物や物を買ってあげたり、色んな所に連れて行ってあげたりしてきたと言われた。
その中で、既に国内は全て回ったし、エマさんが行きたいと言った場所には全て連れて行ってしまったので今回俺に頼んだと言われた。
「そこまでやってるのでしたら、もう被ってもいいんじゃないんですか?」
「まあ、そうなんだろうけどさ……エマにはいつも迷惑を掛けてるから、こういう時位は僕も頑張りたいんだよね」
「……それなら、いつもの仕事をサボらず立派な王様をしたらエマさんは一番喜ぶと思いますよ」
「うん、それは無理かな」
俺の言葉に即答したアルスさんは本当にお願いして来てるのかと一瞬思ったが、そこでふとある事を思い出した。少し前にゼラさんと楽園について話をしている際に、既にある温泉街とは違う所に温泉が湧き、そこから海を眺める事が出来る場所を発見したと言っていた。
「海を眺めながら温泉に入る場所とか、どうですか?」
「ッ! そんな所があるのかい!? エマは、温泉も好きだし海も好きだからそんな所があるなら、ぜひ連れて行きたいよ!」
アルスさんは俺の言葉にもの凄く食いついた。俺はそこで詳しい話はゼラさんに聞かないと分からないと言って、この場にゼラさんを呼び出して〝海が眺められる温泉〟について話を聞いた。
その後、アルスさん達の記念日までの間にその温泉の場所に立派な建物を作り、まだ俺も入った事が無いが最初のお客さんとしてアルスさん達を招待した。勿論、他の客は居ないのでアルスさん達だけの貸し切りとなっており、エマさんは凄く喜んでいた。
「ラルク君、本当にありがとう。エマ凄く喜んでいたよ」
「それは、良かったです。それで、どうでしたか景色の方は?」
「最高だったよ。昼に遊んだ海を夜は温泉から楽しめたからね来年もぜひここに来たいって言ってたよ」
アルスさんは凄く良い笑顔でそう言った。それから、アルスさんと別れた俺は家に帰宅してから楽園に入り、リアとリンと一緒に件の温泉に入りに行った。勿論、3人だけなので家族風呂に3人で入りアルスさんが絶賛
していた景色を堪能した。
その後、その場所の事をうっかりリンがレティシアさんに話すと「私も行きたい!」とレティシアさんが言ったので、序なので夜の景色も見たいなと思っていたのでその日の夜もその温泉に行き今度は夜の海の景色を堪能した。
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