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五十四 すべては私のために②【別視点】
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他人のために……。
たしかに、ヒロインは魔法学校に通いながら、その力を見込まれてサブクエストで魔物退治を。
メインのストーリーで国のためにその力を使った。
そして、どんどん力をつけていくと。
つまり……?
(RPG要素として、レベルやHP、MPの概念があったから、単純にそれのことかと思ったけど)
ライエンの言う、『他人のために力を使った』ために、ヒロインは明らかに格上であった魔族のユールティアスに勝ち国を救った。
(なるほど、……隠しステータスね!)
裏パラメーターとでも言おうか。
乙女ゲームとして、恋愛的な意味での好感度があるのは当たり前だが。
国民のように、恋愛対象ではないモブからも、信頼度のような隠し要素があり。
サブクエストやメインストーリーをこなすことが、ひいては光の魔力を高める結果につながったのだと。
(裏設定的な? 設定資料とかでは語られてないけど、まぁ。主人公が想いの力で強くなるのは、お約束よね)
それならば、私の魅了がウルムにすら通用しないのも納得だ。
原作どおりのストーリーはこなせず、軟禁状態でサブクエストも受けれない。
(攻略キャラやストーリーに絡むようなキャラでなければ、ある程度は効果があるけど。……それだと使い道がないじゃない)
私の目的。
逆ハーエンド、それのみ。
もしくは、最悪攻略キャラでなくとも……イケメンたちが自分だけを称える環境をつくること。
ライエンと婚約する分には、その権力を利用できるしいいのだが。
魅了がつかえなければ、逆ハーどころかライエンの目を盗んでそういった環境を整えるのはむずかしい。
(サブクエか……)
当面の目標は、なんとかして光の魔力を鍛える。
魅了に対する対策を練っているらしいが、原作勢をなめないで欲しい。
(全ステータスをカンストに持っていった私になら、できる)
その力で手始めに、魔力への抵抗力が高いメーアスを魅了しよう。
成功すれば、他のキャラすべてに通用するといっても過言ではない。
(よしっ! リュミネーヴァは邪魔だけど、光の魔法さえモノにすれば……ユールも手に入る)
そうと決まれば時間は無駄にできない。
魔法学校で得られる知識は一応、手に入る。
この力を把握して、腕試しついでにサブクエ受けれないか教師に聞いてみよう。
「……そうそう、先程の話だが」
「なによ?」
さっきの話……?
「君は、その力を他人に利用されている自覚があるな? ……その自覚を、忘れるな」
「……どういうことよ?」
「君と私は、状況こそ違えど、同志だ。……私はこの国の次期王としての立場を他人に利用され、そして君は光の魔力を国のために利用される」
「……」
最初から最強だったらそんなことはさせない。
けど、RPG要素があるこのゲームでは……『成長』という要素が欠かせない。
だから、今王家や力ある者に逆らうことはできない。
「いいか? 利用される側に居座るな、時期をみて利用する側になれ。自分の価値を他に求めるな、……君が君として、その足で立て。……でないと」
「……でないと?」
「いつか……、私と弟のようになる。……気付くのが、遅くなればなるほど……な」
「あ……」
そういえば、元は仲良い兄弟だったんだっけか。
リュミネーヴァと婚約したことで、ライエンの立場が確固たるものになった。
そのせいで、周りの……大人たちの色んな思惑や欲望に晒されてきたんだ。
だから、兄弟の関係も微妙なものになった。
「いいか、私は君にこれっぽっちの愛情もないが……。私たちはいわば……、戦友だ」
「うんうん…………うん?」
おいちょっと待て。
今なんて言った?
「ごめん、ちょっと聞こえなかったんだけど……」
「? ああ、言葉が足りないか。利用されるだけでは終わらない、様々な思惑を斬り抜けなくてはならないという意味で戦友のようだな、と」
「いや、ちがうその前」
「? ……ああ。私は君にまったく愛情がない、という話か?」
「~っ!?」
は? なに?
攻略キャラが、なに言っちゃってんの?
ここは、『光が世界を満たすまで』の世界。
シンシア・テセルである私が主人公。
私の世界。
私の、私が愛される世界。
「申し訳ないが、そもそも好みのタイプから外れている……。パートナーとしての協力は惜しまないが」
「はああああああ!?」
逆ハーエンド。
それはすべてのキャラが私を愛する状況。
悪いけど、私だってあんたなんかタイプじゃないからね!?
一応オタクとして、全キャラ攻略したいからあんたの王道ルート最初に選んだだけだからね!?
別にあんたからの愛情なんていらないけど!?
でも、言われたら言われたで腹立つな。
逆ハーエンド目指すオタクとしては、プライドがありますからね!?
「ふむ、情報提供してくれたことには素直に感謝する。……しかし、レイセルか」
すでにエンディング後の真面目モードのライエンは、それだけ言うと部屋から去って行こうとする。
「ーーっ!? 待ってろよ! まずは、あんたから、ぜったい攻略してやるからなああああああ!」
この世界のすべては私のために。
あんたの持つ、その立場を利用する側に回れっていうんなら……。
手始めに、あんたの好感度から上げてやる!
たしかに、ヒロインは魔法学校に通いながら、その力を見込まれてサブクエストで魔物退治を。
メインのストーリーで国のためにその力を使った。
そして、どんどん力をつけていくと。
つまり……?
(RPG要素として、レベルやHP、MPの概念があったから、単純にそれのことかと思ったけど)
ライエンの言う、『他人のために力を使った』ために、ヒロインは明らかに格上であった魔族のユールティアスに勝ち国を救った。
(なるほど、……隠しステータスね!)
裏パラメーターとでも言おうか。
乙女ゲームとして、恋愛的な意味での好感度があるのは当たり前だが。
国民のように、恋愛対象ではないモブからも、信頼度のような隠し要素があり。
サブクエストやメインストーリーをこなすことが、ひいては光の魔力を高める結果につながったのだと。
(裏設定的な? 設定資料とかでは語られてないけど、まぁ。主人公が想いの力で強くなるのは、お約束よね)
それならば、私の魅了がウルムにすら通用しないのも納得だ。
原作どおりのストーリーはこなせず、軟禁状態でサブクエストも受けれない。
(攻略キャラやストーリーに絡むようなキャラでなければ、ある程度は効果があるけど。……それだと使い道がないじゃない)
私の目的。
逆ハーエンド、それのみ。
もしくは、最悪攻略キャラでなくとも……イケメンたちが自分だけを称える環境をつくること。
ライエンと婚約する分には、その権力を利用できるしいいのだが。
魅了がつかえなければ、逆ハーどころかライエンの目を盗んでそういった環境を整えるのはむずかしい。
(サブクエか……)
当面の目標は、なんとかして光の魔力を鍛える。
魅了に対する対策を練っているらしいが、原作勢をなめないで欲しい。
(全ステータスをカンストに持っていった私になら、できる)
その力で手始めに、魔力への抵抗力が高いメーアスを魅了しよう。
成功すれば、他のキャラすべてに通用するといっても過言ではない。
(よしっ! リュミネーヴァは邪魔だけど、光の魔法さえモノにすれば……ユールも手に入る)
そうと決まれば時間は無駄にできない。
魔法学校で得られる知識は一応、手に入る。
この力を把握して、腕試しついでにサブクエ受けれないか教師に聞いてみよう。
「……そうそう、先程の話だが」
「なによ?」
さっきの話……?
「君は、その力を他人に利用されている自覚があるな? ……その自覚を、忘れるな」
「……どういうことよ?」
「君と私は、状況こそ違えど、同志だ。……私はこの国の次期王としての立場を他人に利用され、そして君は光の魔力を国のために利用される」
「……」
最初から最強だったらそんなことはさせない。
けど、RPG要素があるこのゲームでは……『成長』という要素が欠かせない。
だから、今王家や力ある者に逆らうことはできない。
「いいか? 利用される側に居座るな、時期をみて利用する側になれ。自分の価値を他に求めるな、……君が君として、その足で立て。……でないと」
「……でないと?」
「いつか……、私と弟のようになる。……気付くのが、遅くなればなるほど……な」
「あ……」
そういえば、元は仲良い兄弟だったんだっけか。
リュミネーヴァと婚約したことで、ライエンの立場が確固たるものになった。
そのせいで、周りの……大人たちの色んな思惑や欲望に晒されてきたんだ。
だから、兄弟の関係も微妙なものになった。
「いいか、私は君にこれっぽっちの愛情もないが……。私たちはいわば……、戦友だ」
「うんうん…………うん?」
おいちょっと待て。
今なんて言った?
「ごめん、ちょっと聞こえなかったんだけど……」
「? ああ、言葉が足りないか。利用されるだけでは終わらない、様々な思惑を斬り抜けなくてはならないという意味で戦友のようだな、と」
「いや、ちがうその前」
「? ……ああ。私は君にまったく愛情がない、という話か?」
「~っ!?」
は? なに?
攻略キャラが、なに言っちゃってんの?
ここは、『光が世界を満たすまで』の世界。
シンシア・テセルである私が主人公。
私の世界。
私の、私が愛される世界。
「申し訳ないが、そもそも好みのタイプから外れている……。パートナーとしての協力は惜しまないが」
「はああああああ!?」
逆ハーエンド。
それはすべてのキャラが私を愛する状況。
悪いけど、私だってあんたなんかタイプじゃないからね!?
一応オタクとして、全キャラ攻略したいからあんたの王道ルート最初に選んだだけだからね!?
別にあんたからの愛情なんていらないけど!?
でも、言われたら言われたで腹立つな。
逆ハーエンド目指すオタクとしては、プライドがありますからね!?
「ふむ、情報提供してくれたことには素直に感謝する。……しかし、レイセルか」
すでにエンディング後の真面目モードのライエンは、それだけ言うと部屋から去って行こうとする。
「ーーっ!? 待ってろよ! まずは、あんたから、ぜったい攻略してやるからなああああああ!」
この世界のすべては私のために。
あんたの持つ、その立場を利用する側に回れっていうんなら……。
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