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五十三 すべては私のために①【別視点】

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「……じょっ」

 冗談じゃないわよ!

「……では、君の仕業ではないんだな?」
「あたりまえでしょ! 城の外のことなんか、知らないわよ!」

 ウルムが、リュミネーヴァを殺そうとした。……ですって!?
 そりゃ、……たしかに?
 私の目的のためにはあの女は邪魔だし。
 唯一魅了にかかりそうな、魔力のステータスが低いウルムに……ちょーーっと魅了にかけて利用してやろうと思ったけど。
 ウルムは、思いのほか強い意思でそれに打ち勝った。

(それに、いくら邪魔とはいえ……こ、殺せとまでは、願ってない!)

 原作での魔性の女ぶりを発揮したリュミネーヴァは、詳細こそ描かれていないが、少なくとも命は落としていない……はず。
 公爵家からは勘当されていたから、国外追放なんじゃないだろうか?

 ともかく! そんなことしたら疑われるのはまず自分なんだし、立場が危うくなる程度のことを願っただけだ。
 具体的には原作と違って淑女を演じているらしいリュミネーヴァを犯してほしい。
 そう、願った訳だが。

「そうか、……なら違う線で探さねばな」
「だいたい、疑うならまず身内から疑えば?」
「? ……というと?」
「はあ? とぼけないでよ、あんたの弟。とんだ策士だわ」
「レイセル、か?」
「そうよ! 生まれつき魔力が低い、ですって? 私の魅了を簡単に解除する人が……そんな訳ないでしょうよ!」
「! まったく、君は懲りないな。……だが、その情報は貴重だ」

 複数の魔法使いに守られ、王妃とレイセルが前に挨拶にきた。
 さすがにライエンも身内が会いにくるのは咎められない。

 ……王族の庇護下にあれば、色々と役に立つ。
 魔法使いには及ばないまでも、魔力が低いと噂の王妃とレイセル。
 彼らにだけでも、そう思ってバレないように魔法を使ったが。

(そもそも、原作のレイセルなんて王妃の言いなりだった、ただの子供だったじゃない)

 リュミネーヴァ同様、描写はそこまで多くない、メインキャラクターの味を出す役割のキャラ。
 確か、十二歳まではライエンととても仲が良く、王妃や周りの者のせいで関わりが減ったんだったか。
 王妃の影に隠れた印象だったのに。
 ここでも、原作とちがう。

「王妃様……あんたの義母にも効かなかったわよ」
「……そうか、見落としていたな」
「なにを?」
「彼女は、魔力自体は少ないんだが、君のひとつ前の光の魔法使いを生んだ家系に連なる者だ。……耐性があってもおかしくはない」
「ふーーん」

 ってことは、私の魔法……王族には効かないって?
 逆ハーエンド、魅了なしで目指せるもんなの?

「義母上の家系……、ナレド公爵家の傍流なんだが。彼らは、自分たちの影響力を世界に及ぼすために、その力を使った。……つまり、婚姻を利用して他国に影響力をもたらした」
「なんだか、どこかで聞いた話ね!?」

 まるで、私の力を利用するアンタたちのようだわ。とは言ってやらない。

「……。世界のはじまりである、純粋な光と闇の魔力には……意思が宿ると言われている。特に光の魔力は、他人のために力を使うことでその力を発揮すると」
「他人のために……?」

 そういえば、魔法学校の教師がここに来た時言ってたな。
 世界のはじまりである光の女神と、闇の男神の話。

(テキトーに聞いてたけど……魅了の効きがわるいのって、そのせい?)

「そして、自分たちの野心のためにその力を利用しすぎたために、本来血筋で現れるはずの魔力。……つまり、次代の光の魔法使いは生まれなくなっていった、という訳だ」
「……王妃様やレイセル王子は、その魔力の血筋だけど、光の魔法はつかえないってことね」
「そうだ。そして、全く別の者から使い手が現れる。……意思があるとされる所以ゆえんだ」

(……ん? まてよ)

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