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五十五 『気の毒』な関係
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「はあぁ」
憂鬱でしかない。
(なんであんなことしちゃったかなぁ)
波乱の週末を経て、登校。
ユールは忙しいらしく、授業に出たり、出なかったりだ。
会った際にはいつもと変わらず接してくれる。
(それとも……、なんとも思ってないのかな)
出会ったばかりは赤の他人と言ってもいいほど。
そこで拒否されることと、婚約者として拒否されること。
それは、同義ではない……はず。
(こんなに悩んでるの、もしかして……私だけ?)
なんか、そう思うとちょっとムカついてきた。
彼らは心を隠すことに長けている。
だから、そう振る舞っているのだと……どこか自分に言い聞かせている気がする。
彼に、自分のことで傷付いて欲しいとでも?
(うわーー、めんどうな女になってる)
私は気付いてしまった。
この体は、未だに悪意ある男性と二人きりになると恐怖する。
メーアスやウルムのような、友人には大分慣れてきた。
でも……。
体が触れる。
手に口づける。
抱きしめられる。
それを考えた時に……、頭に浮かぶのは。
一人しか、いない。
(エメラルダ嬢の存在がでかいよなぁ)
彼女とユールが並んだ時に、実感してしまった。
その場所が、自分ではないことへの絶望。
……だが、言葉にすれば。
私たちの関係は露と消えてしまう。
(仮にユールが私に悪い感情を持ってなくても、好意ある人に対して魔力は奪いづらいよなぁ)
彼らの闇の力は、魔力を奪う。
人を傷付けることに敏感な彼らは、大切な人に対して力を使うなんてこと……ないだろう。
私たちは、実に合理的な婚約だと言える。
……だからこそ、エメラルダ嬢から『お気の毒さま』と言われたんだ。
けっこう、ずっしりと心にクる。
「……もしかして、私、邪魔だったり?」
ということは、だ。
エメラルダ嬢とユールが想い合っていても不思議ではない。
いや、分からないけど……なんか今度会うみたいなことも言ってたし。
「……やめやめ」
私のわるい癖だ。
考えたとてどうにもならないことが、ずっと頭と心を支配する。
いつからこうなっただろう。
「お一人で百面相ごっこですか?」
「ーー! メーアス様」
憂鬱でしかない。
(なんであんなことしちゃったかなぁ)
波乱の週末を経て、登校。
ユールは忙しいらしく、授業に出たり、出なかったりだ。
会った際にはいつもと変わらず接してくれる。
(それとも……、なんとも思ってないのかな)
出会ったばかりは赤の他人と言ってもいいほど。
そこで拒否されることと、婚約者として拒否されること。
それは、同義ではない……はず。
(こんなに悩んでるの、もしかして……私だけ?)
なんか、そう思うとちょっとムカついてきた。
彼らは心を隠すことに長けている。
だから、そう振る舞っているのだと……どこか自分に言い聞かせている気がする。
彼に、自分のことで傷付いて欲しいとでも?
(うわーー、めんどうな女になってる)
私は気付いてしまった。
この体は、未だに悪意ある男性と二人きりになると恐怖する。
メーアスやウルムのような、友人には大分慣れてきた。
でも……。
体が触れる。
手に口づける。
抱きしめられる。
それを考えた時に……、頭に浮かぶのは。
一人しか、いない。
(エメラルダ嬢の存在がでかいよなぁ)
彼女とユールが並んだ時に、実感してしまった。
その場所が、自分ではないことへの絶望。
……だが、言葉にすれば。
私たちの関係は露と消えてしまう。
(仮にユールが私に悪い感情を持ってなくても、好意ある人に対して魔力は奪いづらいよなぁ)
彼らの闇の力は、魔力を奪う。
人を傷付けることに敏感な彼らは、大切な人に対して力を使うなんてこと……ないだろう。
私たちは、実に合理的な婚約だと言える。
……だからこそ、エメラルダ嬢から『お気の毒さま』と言われたんだ。
けっこう、ずっしりと心にクる。
「……もしかして、私、邪魔だったり?」
ということは、だ。
エメラルダ嬢とユールが想い合っていても不思議ではない。
いや、分からないけど……なんか今度会うみたいなことも言ってたし。
「……やめやめ」
私のわるい癖だ。
考えたとてどうにもならないことが、ずっと頭と心を支配する。
いつからこうなっただろう。
「お一人で百面相ごっこですか?」
「ーー! メーアス様」
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