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1.転職!転勤!→異世界
推しは推す為にあるのだよ?
しおりを挟む第8話 推しは推す為にあるのだよ?
「ボスぅ、ちょっと話そうか。」
気分転換にと階下のラウンジへ降りると、ホイップクリームたっぷりなバニラシェーク(ラージサイズ)を片手にしたチェックのワークシャツにデニムなギークファッションのルーカス君が、コッチゃこいと顎をすくっている。
うわあ、ルーカス君の眉間に見事な渓谷が出来てるなぁ。めちゃくちゃ不機嫌そう。
素直に窓際のテーブル席に着いた。ルーカス君はド対面にどっかりと座る。
「あー、ルーカス君、私も何かドリンク「ボスはなんで俺が怒ってるか、わ か る よ ね ? ? 」…、はい、すいません。」
私のドリンクオーダーに被せてきた。
完全にお怒りである。
「前から言ってるけど…、人を勝手に拾わないでください!」
「いやあ、彼は捨てられてた訳じゃないよ?拾うってそんな、純然たるスカウトだよ…スカウト、ははは…。」
ドンッ
カフェテーブルに裁判官のガベルの如くルーカス君の拳がヒット。
「そーじゃなくて!!必要な人材は一度チームを通して採用って話、手続きや根回しもあるのでよろしくお願いしますって、俺、数日前くらいに言いましたよね??いくらボスのお気に入りクリエイターだからって、勝手にコッチに攫ってきたらダメだっつーの!!だいたい推しは推す為に存在していらっしゃるの!!推し様に許可無く直接接触するようなファンなんてファンじゃねえ!ただの×××(不適切Fワード)野郎だ!!」
おまけで繰り出されたお下品な感じのハンドサインに本気を感じる…。これ私、めっちゃ怒られるなヤツだな?
「いやぁ、彼の世界創生の才能なら私の愛し子でも良いかなって思ったんだけど、前に別な子を愛し子認定したら凄い迷惑だって君たち怒ったでしょ?じゃあ、いっそ引き抜いてウチの所属にしちゃえば今のプロジェクトに組み込めるし、地球界で持て余してた彼の能力も遺憾無く発揮出来るからいいかなって…なーんて…。」
「アーッ愛し子事件ーーーッ!!アレはボスが勝手に認定の天啓を界隈全域に流しちゃったから、あの子よくわからない状態のままで生き神様に祀り上げられたヤツだから!!天啓の次の日、家の周りを突然沸いた信者に取り囲まれて、あの子と家族イミフで怯えてたからね??あの集団、ゾンビムービーさながらよ??だいたいあんな歴史が変わるレベルの『神の奇跡やらかし』の処理どんだけ大変だったか…。あそこの神、すっかり信仰が愛し子に傾いちゃってさ、涙目で愛し子保護の囲い込みになけなしの信仰リソース割いてた。自分認定じゃない愛し子保護でアレはエグすぎだわ。はー、あの時は俺達も割食って連日徹夜だったし。リアム先輩なんかストレスフルすぎて最終的にちっさい円形ハゲできてたし…。」
ルーカス君の口からお小言が怒涛のように溢れて止まらない。多分、しばらく止まらない。
お小言を流し聞きしながら、こっそり取り寄せたカプチーノに口を付けた。
§
ピヨピヨピヨーッピヨピヨピヨーッ
はい、爽やかな小鳥の囀り(アラーム音)でやって参りました2日目の朝です。おはようございます。
朝メシは以前会社の女の子が美味いと言ってた有名パン屋さんのバケットサンドをデリバリーしました。自家焙煎コーヒー(砂糖アリアリ)もついていてとてもオシャレモーニングでございます。但し、食ってるのは寝起きのオッさんですけどね!
サンドを腹に納め、身支度を整える。
今日から在宅ワークになるから私服で仕事だ。一応仕事中になるのであんまりラフになり過ぎないよう、白のVネックセーターとスリムデニムにする。俺的にちょっとした買い物にも出れるコーデである。ちょっとテンションあがる。
実は在宅ワークに憧れてた俺ちゃんです。
だって通勤地獄も外回りもないんですよ??
仕事中、うっかり上司と目が合っていらぬ仕事を投げられる事ないんですよ??
最高か…。最高です…。
コンソールに座り本日の業務開始!
「っと、メッセージ入ってるな。」
未読メッセージが2件程入ってたので目を通す。どちらも総括チームさんからだ。
ひとつは頼んでた食品と日用品が今日の午後に納品予定、その他の資材は次の日になるとの旨。さすがamazoo様サマ、届くのめっちゃ早い。
もうひとつはダンジョン運営についてのメッセージだった。
『総括チーム: 今作られてるダンジョンなんですが、まだダンジョンコアが設置されてないようですね。コアを早めに設置しないと消滅の恐れがありますけど大丈夫ですか?』
「ひょえ、消滅?!」
聞いてないぞ、それぇ!!
『鈴木: ダンジョンコアとはなんですか?箱庭にはなかった機能なので…。』(名前やっと直した!)
『総括チーム: 説明書に載せてなかったですね。こちらの編集ミスです。ダンジョンコアについてはメッセージで説明するには少し長すぎるので、追加資料としてpdf送っておきます(午後に)。
あと検索アプリにもダンジョンについての項目があって、そちらにも簡単なコアの説明が書いてますので良かったら読んでみてください。』
たいして間も置かず返信がきた。相変わらずレスポンスはやいな。
総括チームの中の人、PC前常駐なのかな?それともイケオジと同じ神の声入力(勝手に命名)してるのかな?
『鈴木: 忙しいところ急がせてしまってすいません。
情報ありがとうございます。検索アプリ確認しますね。』
今日の業務はまず資料読みだな。
コンソールからタブレットを取り外し、スマフォを持って毛玉のラグへ寝っ転がる。在宅勤務~、とても自由~。
スマフォの検索アプリを開いて"ダンジョンコア"を検索。
ダンジョンコア
ダンジョンを維持する核。ダンジョンの心臓部にあたる。
形状: 直径30センチ程度の球体。半透明(アクリル樹脂素材に似た見た目)。見た目に反して重量は200gと軽量。
色: 正常時は青。ダンジョンの崩壊など危機的状況になると赤く発光する。
ダンジョンにダンジョンコアを設置する事によって、ダンジョンが世界に根付き認識されるようになる。尚、設置しない場合は存在意義を失い緩やかに消滅する。
ダンジョンコアは外的損傷に弱いので設置後は速やかにセキュリティを強化する事が重要。
※ダンジョンについてはリンク先を参照。
「おっふー!!ダンジョンコアめっちゃ大事じゃん!!」
これは追加資料きたらすぐ設置しないと職場無くなる…。
しかも外的損傷に弱いって、モンスターアタックとかで壊れる可能性かよ。うええ、半端なとこに設置できないじゃん。
ダンジョンの構造マジで考えないと詰む。
前作った地下都市型じゃダメっぽいよな。あれ見た目良いけど平面構造だから、防壁一枚突破されるとドミノ式に雪崩れて終了の未来しか見えない。
防衛で考えるとよくゲームで見かける多層式に最深部へ隠すのがド定番か。なんか冒険者に踏破されそうだな 笑。
「…って、この世界に冒険者っているのかな??」
ふと気になり"冒険者"を検索してみる。
「…やべえ、ヒットした。」
冒険者(探索者)
地球界の冒険者(主にゲームや物語内の意味での冒険者)と言われる職業はイミナルディアでは探索者(読みはシーカー)にあたる。
主に遺跡などで珍しい遺物の収集販売や、未開の地の地図作成に関する探索情報の取引などで収入を得ている。他、探索と同時に魔獣討伐を請け負う事もある。
イミナルディアのシーカーは探索で国家間の移動をする事もある為、国家公務員として認定されている。但し、資格取得に国の専門の機関へ申請し試験に合格する必要があるので、シーカー職についている者はあまり多くはない。
類似職業に傭兵がある。
尚、地球界で一般的な冒険者依頼(街の雑務、薬草採取など)は、シーカーなどの専門職が請け負うのではなく一般市民がアルバイトや副業として請け負うのが一般的である。
※遺跡、未開の地、傭兵についてはリンク先を参照。
「なんか思ってたんと違う。」
応援ありがとうございます!
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