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第20章~転生王子と後期授業
特別編 クリスマス的な夜
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これは夏休み前の出来事である。
ある夜、俺は召喚獣の皆を起こさないように、そっとベッドから降りた。
部屋の箪笥の扉を静かに開けて、がさごそと隠していたものを探る。
目が暗闇に慣れた状態とはいえ、よく見えないな。
えっとこの辺にあるはず……あ、この袋かな?
そう思った時、後ろからペカッっと光が射した。
後ろを振り返って眩しさに目を細めれば、それはコハクの体から発している光だった。
【フィル、見えない?】
キョトンとした顔で、体を傾けて俺に尋ねる。俺はその光の強さに慌てた。
「コハク、ありがたいけど光を落として。皆が起きちゃうから」
そう小声で言った瞬間、ランプに火がついて部屋の中が明るくなる。
【ごめんなさい、フィル。実は、皆起きてるんです】
ヒスイは申し訳なさそうに言って、指の先に浮かぶ極小の火を「フッ」と吹き消した。
ランプの灯りでコクヨウやホタル、テンガやザクロ、ルリやランドウが、座ってこちらを見ているのが分かった。
見つかってしまった。
俺はがっかりして、肩を落とす。
「内緒にしてあとで驚かせようと思ったのに」
【初めは気付かないふりをしようと思ってたんですよ。でもコハクが……】
ヒスイの視線を受けて、コハクは胸を張った。
【フィル探す!コハク手伝う!】
「……ありがとうね」
コハクの頭を撫でていると、コクヨウはフンと鼻で笑った。
【フィルが全然こっそりしておらんのが悪い。気付かぬふりも限度があるわ】
すみませんね。全然こっそり出来てなくて。
【フィル様、何を内緒にしてるです?】
【俺たちには秘密なんすか?】
ホタルとテンガが不安そうに聞き、ザクロが立ち上がってくるりと甲羅を見せた。
【オイラの甲羅が感じやす!これは、事件でい!】
「いや、事件じゃないから」
ザクロが推理を始める前に速攻で訂正して、俺は仕方なく白い袋に入れてあった箱を取り出し、皆の前に一つずつ置いた。
【何だこれ?】
ランドウが目をパチクリとさせ、ルリが小首を傾げた。
【リボンついてるので、プレゼントでしょうか?】
「そう。家族も増えたことだし、一年に一回皆にプレゼントあげる日を作ろうかなと思って」
皆は自分の誕生日を知らないって言うし、皆と出会えた感謝を祝う日を作りたかったのだ。
サンタクロース気分で、枕元に置きたかったのにな。
【プレゼント開けてもいいんですか?】
嬉しそうな声で尋ねるヒスイに、俺は頷いた。
「どうぞ」
俺の合図で、皆一斉にプレゼントを開ける。
開けた途端、ホタルたちは「わぁぁ!」と声をあげた。
箱の中身は、召喚獣たちのぬいぐるみだ。ベイル先輩の手ほどきを受けながら、作った物だった。
【すごいっす!俺たちっす!】
【ふわふわです!そっくりです!】
テンガとホタルが言い、ザクロはぬいぐるみを抱きしめて俺を見上げる。
【オイラ、今度里帰りした時、兄貴に見せて自慢しやす!】
【フィル様ありがとうございます】
ルリはぺこりと頭をさげたが、その隣でランドウはちょっと不満げな顔をしていた。
【何で俺のやつ、パン袋持ってるんだよ】
【それはお前がパン泥棒だからだ】
【もうパン泥棒じゃない!】
コクヨウのツッコミに、ランドウはタンタン足を鳴らす。
そういう言い方は、一時期パン泥棒だったこと認めたことになるよ。
「ごめんごめん。初めのイメージでさ。大丈夫、取り外しできるから」
俺が苦笑してパン袋のパーツを取って見せると、ランドウはとれたパーツをじっと見て、それから自分のぬいぐるみを見つめた。
【……とりあえず、つけとく】
そう言って前足を差し出したので、俺はパン袋パーツを返してやった。
取ったら取ったで、ちょっと淋しくなったのかな?
【フィル、コハク!】
コハクのぬいぐるみはほぼ等身大なので、分身が出来たと思ったのかぴょんぴょんと跳びはねながら片羽でぬいぐるみを指した。
「うん。皆気に入ってくれた?」
【ええ。とっても可愛いですわ。ありがとうございますフィル】
ヒスイはそう言って俺の手を優しく包み、指先についた針の傷を愛おしそうに見つめる。
気付かれてしまったか。
俺はちょっと照れつつ、ぬいぐるみをじっと見つめるコクヨウに言う。
「あ、コクヨウにはぬいぐるみの他に、『プリンをさらに一個券』もついてるから」
すると、コクヨウは俺を見てニヤリと笑った。
【よく分かっているではないか】
まあね。家族が何をあげたら喜ぶかは、俺もわかってるつもりですから。
俺はにっこりと微笑んだ。
ある夜、俺は召喚獣の皆を起こさないように、そっとベッドから降りた。
部屋の箪笥の扉を静かに開けて、がさごそと隠していたものを探る。
目が暗闇に慣れた状態とはいえ、よく見えないな。
えっとこの辺にあるはず……あ、この袋かな?
そう思った時、後ろからペカッっと光が射した。
後ろを振り返って眩しさに目を細めれば、それはコハクの体から発している光だった。
【フィル、見えない?】
キョトンとした顔で、体を傾けて俺に尋ねる。俺はその光の強さに慌てた。
「コハク、ありがたいけど光を落として。皆が起きちゃうから」
そう小声で言った瞬間、ランプに火がついて部屋の中が明るくなる。
【ごめんなさい、フィル。実は、皆起きてるんです】
ヒスイは申し訳なさそうに言って、指の先に浮かぶ極小の火を「フッ」と吹き消した。
ランプの灯りでコクヨウやホタル、テンガやザクロ、ルリやランドウが、座ってこちらを見ているのが分かった。
見つかってしまった。
俺はがっかりして、肩を落とす。
「内緒にしてあとで驚かせようと思ったのに」
【初めは気付かないふりをしようと思ってたんですよ。でもコハクが……】
ヒスイの視線を受けて、コハクは胸を張った。
【フィル探す!コハク手伝う!】
「……ありがとうね」
コハクの頭を撫でていると、コクヨウはフンと鼻で笑った。
【フィルが全然こっそりしておらんのが悪い。気付かぬふりも限度があるわ】
すみませんね。全然こっそり出来てなくて。
【フィル様、何を内緒にしてるです?】
【俺たちには秘密なんすか?】
ホタルとテンガが不安そうに聞き、ザクロが立ち上がってくるりと甲羅を見せた。
【オイラの甲羅が感じやす!これは、事件でい!】
「いや、事件じゃないから」
ザクロが推理を始める前に速攻で訂正して、俺は仕方なく白い袋に入れてあった箱を取り出し、皆の前に一つずつ置いた。
【何だこれ?】
ランドウが目をパチクリとさせ、ルリが小首を傾げた。
【リボンついてるので、プレゼントでしょうか?】
「そう。家族も増えたことだし、一年に一回皆にプレゼントあげる日を作ろうかなと思って」
皆は自分の誕生日を知らないって言うし、皆と出会えた感謝を祝う日を作りたかったのだ。
サンタクロース気分で、枕元に置きたかったのにな。
【プレゼント開けてもいいんですか?】
嬉しそうな声で尋ねるヒスイに、俺は頷いた。
「どうぞ」
俺の合図で、皆一斉にプレゼントを開ける。
開けた途端、ホタルたちは「わぁぁ!」と声をあげた。
箱の中身は、召喚獣たちのぬいぐるみだ。ベイル先輩の手ほどきを受けながら、作った物だった。
【すごいっす!俺たちっす!】
【ふわふわです!そっくりです!】
テンガとホタルが言い、ザクロはぬいぐるみを抱きしめて俺を見上げる。
【オイラ、今度里帰りした時、兄貴に見せて自慢しやす!】
【フィル様ありがとうございます】
ルリはぺこりと頭をさげたが、その隣でランドウはちょっと不満げな顔をしていた。
【何で俺のやつ、パン袋持ってるんだよ】
【それはお前がパン泥棒だからだ】
【もうパン泥棒じゃない!】
コクヨウのツッコミに、ランドウはタンタン足を鳴らす。
そういう言い方は、一時期パン泥棒だったこと認めたことになるよ。
「ごめんごめん。初めのイメージでさ。大丈夫、取り外しできるから」
俺が苦笑してパン袋のパーツを取って見せると、ランドウはとれたパーツをじっと見て、それから自分のぬいぐるみを見つめた。
【……とりあえず、つけとく】
そう言って前足を差し出したので、俺はパン袋パーツを返してやった。
取ったら取ったで、ちょっと淋しくなったのかな?
【フィル、コハク!】
コハクのぬいぐるみはほぼ等身大なので、分身が出来たと思ったのかぴょんぴょんと跳びはねながら片羽でぬいぐるみを指した。
「うん。皆気に入ってくれた?」
【ええ。とっても可愛いですわ。ありがとうございますフィル】
ヒスイはそう言って俺の手を優しく包み、指先についた針の傷を愛おしそうに見つめる。
気付かれてしまったか。
俺はちょっと照れつつ、ぬいぐるみをじっと見つめるコクヨウに言う。
「あ、コクヨウにはぬいぐるみの他に、『プリンをさらに一個券』もついてるから」
すると、コクヨウは俺を見てニヤリと笑った。
【よく分かっているではないか】
まあね。家族が何をあげたら喜ぶかは、俺もわかってるつもりですから。
俺はにっこりと微笑んだ。
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