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8.あふれる想い
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私もずっとずっと前から、智光さんのことが好きだった。朝早く出勤して会社まわりの清掃中に姿を見ることが嬉しかった。おはようございますって、挨拶を交わすことが嬉しかった。
今思えばもしかしたら、密かに寄せていた恋心だけがその時の生きがいだったのかもしれない。
智光さんのおかげで今の私がいる。
私は智光さんに感謝してもしきれないくらいなのに、智光さんも私のことを前から好きだったと言ってくれた。
こんなに幸せなことはない。
嬉しくて胸が弾けそうだ。
そんな私とは対照的に、智光さんは目線を下に暗い影を落とす。どうしたんだろうと首を傾げれば、躊躇いがちな唇が重く開いた。
「……俺はやえに隠していることがある」
「隠す?」
「いや、隠すというか、言っていないことがあるんだ。……もしやえが嫌だと思ったら、そう言ってくれ。それで……離婚することになっても、俺は構わないから……」
ドキリと心臓が嫌な音を立てる。
離婚だなんて不穏な言葉を口にする智光さんにほんの少し怒りがわいたけれど、彼がとても真剣な顔をして私を見るものだから、今度は私が押し黙った。
それほどまでに智光さんは思い詰めた顔をしていたから。先ほどまでの甘い笑みはなりを潜めている。
何を語られるのか、ドキンドキンと胸が騒がしくなる。緊張で再び空気が張りつめた。
今思えばもしかしたら、密かに寄せていた恋心だけがその時の生きがいだったのかもしれない。
智光さんのおかげで今の私がいる。
私は智光さんに感謝してもしきれないくらいなのに、智光さんも私のことを前から好きだったと言ってくれた。
こんなに幸せなことはない。
嬉しくて胸が弾けそうだ。
そんな私とは対照的に、智光さんは目線を下に暗い影を落とす。どうしたんだろうと首を傾げれば、躊躇いがちな唇が重く開いた。
「……俺はやえに隠していることがある」
「隠す?」
「いや、隠すというか、言っていないことがあるんだ。……もしやえが嫌だと思ったら、そう言ってくれ。それで……離婚することになっても、俺は構わないから……」
ドキリと心臓が嫌な音を立てる。
離婚だなんて不穏な言葉を口にする智光さんにほんの少し怒りがわいたけれど、彼がとても真剣な顔をして私を見るものだから、今度は私が押し黙った。
それほどまでに智光さんは思い詰めた顔をしていたから。先ほどまでの甘い笑みはなりを潜めている。
何を語られるのか、ドキンドキンと胸が騒がしくなる。緊張で再び空気が張りつめた。
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