望月アグリと申します

有住葉月

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第4章 新しい関係

9、お手紙

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望月アグリと申します。
私は特に文筆業などではないので、書くのが上手い訳ではありませんが、手紙のやり取りなどは好きです。

妊娠中にもらった手紙で1番印象的だった手紙についてお話ししたいと思います。

ある日、女中さんから手紙を渡されました。
差出人は河村マスオとなっていました。

マスオは近くに住んでいますし、わざわざ手紙をよこすなんて、どうしたのからと思いながら手紙を開けました。
「望月アグリ様

差出人に驚いたかい?マスオくんでなくて申し訳ない。
僕だよ。わかるかな?赤ん坊の父親の僕だ。
あれから会いに行けないのは申し訳ないと思ってるよ。
しかし、受験勉強も中々あって、今は下宿に張り付いているよ。

あれから、番頭がうちに来て群馬に連れて行こうとしたけど僕は断った。
というか、あんみつ屋で厠に入るふりをして巻いたのさ。
二、三日家には帰らなかった。

そこまでしてどうして東京にこだわるかっていうと、やっぱり自由なのは素敵なんだ。
君が妊娠しなかったら、こちらで勉強することを勧めたのにね。

一緒に過ごさないことによって、僕は父親らしいこと、父親らしい気持ちを育てていない。

でも、申し訳ないとは思っていないよ。
多分、君のことだから、マイペースに妊娠生活をしているだろうからね。

前に、5年前に僕に会ったこと、話したことあったろ。
全然忘れてるんだもんな。
君のお姉さんの結婚式に僕も遠縁で呼ばれていた。
その時、10歳のおてんばな君は廊下で走り回って転んでしまった。
なんと、擦りむいた足から血も出てしまったんだ。
その時、僕は、怒られる君をかばって、僕と走ったと言ったんだ。
そしたら、泣き止んで、僕にありがとうと言ったんだ。
あの時、君が僕と結婚することになるなんて思わなかったけど、廊下で走るなんて10歳の女の子、君くらいだとお思ったよ。お嬢様が集まる結婚式の場だったからね。
でも、僕はあの時、君にもう一度会いたいと思ったんだ。
こういう勇気のある人と一緒にいたいと思ったんだ。
素直にありがとうと言えることも。

だから、結婚して僕は家に張り付けられるのはごめんだけど、君と子供をもうけられることが嬉しくもある。

一緒にいることだけが夫婦じゃない。
でも、この間、約束したように生む頃には会いに行くよ。

また、気が向いたら手紙するかもしれない。

あ、この手紙、わからないところに隠しておいてくれよ。

じゃあね。メルシボク。


ヨウスケさんからの手紙でした。
私の心の中は嬉しさでいっぱいになりました。
出会っていたなんて、本当に。。。。

ということで、今日はこの辺りで失礼します。お粗末様でした。
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