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第4章 新しい関係
8、女中さんたち
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望月アグリと申します。初めましての方もいらっしゃいますか?今は私の妊娠中の話をしておりますが、最初から話しますと、女学生が嫁入りしたごく昔は平凡だったことをお伝えしています。
さて、妊娠中、私は女中さん達と親しくなりました。
だって、家にいるのが長いんですもの。
「アグリお嬢様、お部屋の掃除の時間です。」
最初はそう言われると、居間に移動してお掃除が終わるまで待っていました。
しかし、安定期を過ぎるとどうも動いていない方が体が落ち着かなくなりまして。
「ねえ、トメさん、私もお掃除教えていくれない?」
「ありゃ、アグリお嬢様には掃除のことなんてさせちゃいけんわ。」
「どうして?」
「だって、お腹の子どもに障りますでしょう?」
「全然、だって、私自分の実家では自分で掃除してましたし。」
「そうは言っても女将さんとご主人様に顔向けできません。」
「まあ、いいからいいから。」
と言って、トメさんから箒を奪い取り、私は掃除を始めてしまいました。
「えらいお嬢様がお嫁に来たもんだ。」
大体、3人くらいの女中さんがお掃除に来ていたので、他の2人も止めに入ります。
「アグリお嬢様、ダメです。」
「そうダメです!」
もう、みんなで寄ってたかってそんなに止めなくても。
「私ね、ちゃんと家事やりたいの。」
「でも、お嬢様はこちらにお嫁に来たんですから、家事されても困るんじゃけど。」
「私ね、いつか自分で家を拵えたいわ。」
「そんなこと言ったら、ご主人様が倒れてしまいますわ。」
「それって変なこと?」
「家族はみんなで済むってもんですよ。」
「じゃあ、中庭にでも建てればいいじゃない?」
「いいえ、ちゃんと同じ屋根の下です。」
「硬いんだから、トメさんは。」
そんなこんなで、毎日掃除に来てくれるたびに、箒を奪い取っては奪われてなんてことを繰り返していたら、他の女中達も面白くなってきたのでしょう。
「アグリお嬢様、お腹の子供に触りますから、絶対に渡しません。」
「私はお腹の子供のために、絶対にお掃除頑張りたいのです。」
「ワハハハハ」
望月家の女優さん達って皆さん裏表がなくて、本当に楽しい方達なんです。
「ねえ、私、台所仕事覚えたいわ。」
「アグリお嬢様きちゃいけんですよ。」
行ってはいけないと言われると、ますます行きたくなるのが性分ってものです。
「わあ、台所にアグリお嬢様が。」
「私、包丁やりたいわ。」
「やめてください。手でも切ったら。」
「だって、私実家の時、ご飯作ってたのよ。」
「そうは言っても、ここは望月の家ですし。」
「いいのいいの。大根切るわね」
ってな感じで私は女中さん達のお仕事に混じるようになりました。
それはそれは楽しい日々でございました。
ということで、今日はこの辺で失礼します。お粗末様でした。
さて、妊娠中、私は女中さん達と親しくなりました。
だって、家にいるのが長いんですもの。
「アグリお嬢様、お部屋の掃除の時間です。」
最初はそう言われると、居間に移動してお掃除が終わるまで待っていました。
しかし、安定期を過ぎるとどうも動いていない方が体が落ち着かなくなりまして。
「ねえ、トメさん、私もお掃除教えていくれない?」
「ありゃ、アグリお嬢様には掃除のことなんてさせちゃいけんわ。」
「どうして?」
「だって、お腹の子どもに障りますでしょう?」
「全然、だって、私自分の実家では自分で掃除してましたし。」
「そうは言っても女将さんとご主人様に顔向けできません。」
「まあ、いいからいいから。」
と言って、トメさんから箒を奪い取り、私は掃除を始めてしまいました。
「えらいお嬢様がお嫁に来たもんだ。」
大体、3人くらいの女中さんがお掃除に来ていたので、他の2人も止めに入ります。
「アグリお嬢様、ダメです。」
「そうダメです!」
もう、みんなで寄ってたかってそんなに止めなくても。
「私ね、ちゃんと家事やりたいの。」
「でも、お嬢様はこちらにお嫁に来たんですから、家事されても困るんじゃけど。」
「私ね、いつか自分で家を拵えたいわ。」
「そんなこと言ったら、ご主人様が倒れてしまいますわ。」
「それって変なこと?」
「家族はみんなで済むってもんですよ。」
「じゃあ、中庭にでも建てればいいじゃない?」
「いいえ、ちゃんと同じ屋根の下です。」
「硬いんだから、トメさんは。」
そんなこんなで、毎日掃除に来てくれるたびに、箒を奪い取っては奪われてなんてことを繰り返していたら、他の女中達も面白くなってきたのでしょう。
「アグリお嬢様、お腹の子供に触りますから、絶対に渡しません。」
「私はお腹の子供のために、絶対にお掃除頑張りたいのです。」
「ワハハハハ」
望月家の女優さん達って皆さん裏表がなくて、本当に楽しい方達なんです。
「ねえ、私、台所仕事覚えたいわ。」
「アグリお嬢様きちゃいけんですよ。」
行ってはいけないと言われると、ますます行きたくなるのが性分ってものです。
「わあ、台所にアグリお嬢様が。」
「私、包丁やりたいわ。」
「やめてください。手でも切ったら。」
「だって、私実家の時、ご飯作ってたのよ。」
「そうは言っても、ここは望月の家ですし。」
「いいのいいの。大根切るわね」
ってな感じで私は女中さん達のお仕事に混じるようになりました。
それはそれは楽しい日々でございました。
ということで、今日はこの辺で失礼します。お粗末様でした。
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