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第四章 第三部
18 傍観者
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『過去と未来、そして今が同時にあるように、あなたの中には神の生命の種と人の生命の種がある、そういうことです』
光が小さな子の得意げな顔を見た時のように微笑む。
「そんじゃまあいいや。それが入ったばっかりに、人の種ってのがどっかいっちまったんならかわいそうだからな」
「そうだな」
トーヤもベルの言うことに笑いながらそう言った。
「それで、そうまでして入った神様の力を使って、これからベルに何をやらせるつもりだ? フェイの役目はあれで終わったのか?」
トーヤが表情を厳しく引き締めてそう聞くと、光が悲しそうに瞬いた。
「いつものか。そうでもあり、そうでもないってやつ」
『そう思っていただいていいでしょう』
「まあいいや。なんやかんや言っても時ってのが満ちねえことには、あんたも言いたくても言えねえんだもんな』
光が弱く瞬く。
「あんたもつらい立場だな。けど、こっちだって同じくつらい、話せることはできるだけ全部話してくれ」
『わたくしも話せるだけのことはお話したいと思っています』
「頼んだ」
『フェイの役割は大きく、そして重かった。それはあなたが一番よく分かっているはずです』
「そうだね」
光に語りかけられシャンタルが答える。
「フェイがトーヤとミーヤを信じてほしい、そう言ったから私は信じてみようと思えた。そのためにフェイの魂が私に会いに来てくれた」
ミーヤもその時のことを思い出す。
「あれは確かに普通の人の力ではできないことだよね。そう、フェイはそのために」
シャンタルがしみじみと思い出すようにそう言った。
「フェイは分かった。そんでベルはどうなんだ、まだ何かやらされるのか」
トーヤが厳しい口調で聞くが光は答えない。
「おい、どうなんだよ!」
トーヤはイラ立っているように見えた。
「トーヤ、それはおそらく言ってはいけないことなのだと思うよ」
「なんだと」
「言えぬことには沈黙」
八年前から何度も聞いてきた、見てきたことだ。
「ってことは、何かをやらされるってことなんだな?」
「やるとかやらないとかも含めて言えないってことなんだと思うよ」
シャンタルがトーヤをなだめるように続ける。
「もしも、もうこの先には何もないとしても、ないって言ってしまったら、未来のことを話すことになるからね」
「ああ、そうだな」
トーヤは口ではそう言うが、納得ができないという顔で光を睨みつけた。
「気にいらねえ。けど、今はどうしようもねえってこともよく分かってる。そんじゃ、その他の話せる話ってのをしてもらおうか」
『分かりました』
光が静かにそう答える。
『フェイとベルが皆をこの場に集めてくれたのは、先程申した通りです。そしてフェイが魂となった後も力を貸してくれたことも』
皆が黙って耳を傾ける。
『ベルは、兄と共に、助け手と黒のシャンタルがこちらに戻るための手助けをしてくれました』
「やっぱりそうだったか……」
トーヤはそうつぶやくと、見えぬ床の上に座り込んだ。
「あの時、あの草原でシャンタルがこいつらにこだわったのは、そういう役割がある2人だったから、ってことなんだな?」
『その通りです』
「なんもかんも、あんたの手の内、思いの通りに踊らされてるだけってわけか。だったらいっそ、こう動けって言ってもらった方がこっちは楽なんだがな? なんでそれができねえんだ? もう飽き飽きなんだよ、そういうのは。あんたらは楽しいのかも知れねえけどな」
『いいえ、それは違います』
トーヤが皮肉を込めてそう言うと、光が柔らかく否定した。
『あなたたちが進む道はあなたたち自身が作ったもの。わたくしはその道を辿るだけ、見るだけに過ぎません』
「辿るだけ?」
『その通りです』
「ってことは、あんたらは上から見ててその道にいちゃもんつけたりできねえってことか」
『その者の運命はその者が作るもの。わたくしたちは傍観者に過ぎない」
「へえ……」
またトーヤが皮肉っぽい顔になる。
「だったら神様ってのはなんのためにいるんだ? あんたら、神様だ神様だって偉そうにして、そんで人間様に大事にしてもらってるけど、一体どんな仕事してるんだ? なんか、聞いてたらぼーっと見てるだけ~なあーんもお仕事してません、に見えるんだけど。なあ、どうなんだ? 神様の仕事って一体なんなんだ?」
『神の役割は存在することです』
トーヤの問いに光が静かに答えた。
「は?」
『神の役割とは、存在をすることなのです』
光が同じ言葉を繰り返した。
「それって、つまりいるだけってこと?」
ベルが確かめるようにそう聞いた。
『その通りです』
「う~ん、なんか、そういうの聞いたな」
「分かります」
「アーダ!」
光に確認したベルがそう言うと、思わぬ人から答えが返ってきた。
「お茶会で、ベルも一緒にマユリアのお言葉を伺いました。その時のことでしょう?」
「あ、ああ!」
ベルも思い出した。
「ちびシャンタルがいてくれるだけでいい、そういう話だったよな」
「ええ」
託宣ができない自分を責める当代に、マユリアがこう言ったのだ。
『シャンタルがお生まれになってくださったこと、こうしてここにいらしてくださること、それがもう素晴らしいことなのです』
「神とはそういうものなのです」
アーダがベルにそう言った。
光が小さな子の得意げな顔を見た時のように微笑む。
「そんじゃまあいいや。それが入ったばっかりに、人の種ってのがどっかいっちまったんならかわいそうだからな」
「そうだな」
トーヤもベルの言うことに笑いながらそう言った。
「それで、そうまでして入った神様の力を使って、これからベルに何をやらせるつもりだ? フェイの役目はあれで終わったのか?」
トーヤが表情を厳しく引き締めてそう聞くと、光が悲しそうに瞬いた。
「いつものか。そうでもあり、そうでもないってやつ」
『そう思っていただいていいでしょう』
「まあいいや。なんやかんや言っても時ってのが満ちねえことには、あんたも言いたくても言えねえんだもんな』
光が弱く瞬く。
「あんたもつらい立場だな。けど、こっちだって同じくつらい、話せることはできるだけ全部話してくれ」
『わたくしも話せるだけのことはお話したいと思っています』
「頼んだ」
『フェイの役割は大きく、そして重かった。それはあなたが一番よく分かっているはずです』
「そうだね」
光に語りかけられシャンタルが答える。
「フェイがトーヤとミーヤを信じてほしい、そう言ったから私は信じてみようと思えた。そのためにフェイの魂が私に会いに来てくれた」
ミーヤもその時のことを思い出す。
「あれは確かに普通の人の力ではできないことだよね。そう、フェイはそのために」
シャンタルがしみじみと思い出すようにそう言った。
「フェイは分かった。そんでベルはどうなんだ、まだ何かやらされるのか」
トーヤが厳しい口調で聞くが光は答えない。
「おい、どうなんだよ!」
トーヤはイラ立っているように見えた。
「トーヤ、それはおそらく言ってはいけないことなのだと思うよ」
「なんだと」
「言えぬことには沈黙」
八年前から何度も聞いてきた、見てきたことだ。
「ってことは、何かをやらされるってことなんだな?」
「やるとかやらないとかも含めて言えないってことなんだと思うよ」
シャンタルがトーヤをなだめるように続ける。
「もしも、もうこの先には何もないとしても、ないって言ってしまったら、未来のことを話すことになるからね」
「ああ、そうだな」
トーヤは口ではそう言うが、納得ができないという顔で光を睨みつけた。
「気にいらねえ。けど、今はどうしようもねえってこともよく分かってる。そんじゃ、その他の話せる話ってのをしてもらおうか」
『分かりました』
光が静かにそう答える。
『フェイとベルが皆をこの場に集めてくれたのは、先程申した通りです。そしてフェイが魂となった後も力を貸してくれたことも』
皆が黙って耳を傾ける。
『ベルは、兄と共に、助け手と黒のシャンタルがこちらに戻るための手助けをしてくれました』
「やっぱりそうだったか……」
トーヤはそうつぶやくと、見えぬ床の上に座り込んだ。
「あの時、あの草原でシャンタルがこいつらにこだわったのは、そういう役割がある2人だったから、ってことなんだな?」
『その通りです』
「なんもかんも、あんたの手の内、思いの通りに踊らされてるだけってわけか。だったらいっそ、こう動けって言ってもらった方がこっちは楽なんだがな? なんでそれができねえんだ? もう飽き飽きなんだよ、そういうのは。あんたらは楽しいのかも知れねえけどな」
『いいえ、それは違います』
トーヤが皮肉を込めてそう言うと、光が柔らかく否定した。
『あなたたちが進む道はあなたたち自身が作ったもの。わたくしはその道を辿るだけ、見るだけに過ぎません』
「辿るだけ?」
『その通りです』
「ってことは、あんたらは上から見ててその道にいちゃもんつけたりできねえってことか」
『その者の運命はその者が作るもの。わたくしたちは傍観者に過ぎない」
「へえ……」
またトーヤが皮肉っぽい顔になる。
「だったら神様ってのはなんのためにいるんだ? あんたら、神様だ神様だって偉そうにして、そんで人間様に大事にしてもらってるけど、一体どんな仕事してるんだ? なんか、聞いてたらぼーっと見てるだけ~なあーんもお仕事してません、に見えるんだけど。なあ、どうなんだ? 神様の仕事って一体なんなんだ?」
『神の役割は存在することです』
トーヤの問いに光が静かに答えた。
「は?」
『神の役割とは、存在をすることなのです』
光が同じ言葉を繰り返した。
「それって、つまりいるだけってこと?」
ベルが確かめるようにそう聞いた。
『その通りです』
「う~ん、なんか、そういうの聞いたな」
「分かります」
「アーダ!」
光に確認したベルがそう言うと、思わぬ人から答えが返ってきた。
「お茶会で、ベルも一緒にマユリアのお言葉を伺いました。その時のことでしょう?」
「あ、ああ!」
ベルも思い出した。
「ちびシャンタルがいてくれるだけでいい、そういう話だったよな」
「ええ」
託宣ができない自分を責める当代に、マユリアがこう言ったのだ。
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「神とはそういうものなのです」
アーダがベルにそう言った。
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