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第四章 第三部
19 生まれる神、消える神
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「神々は、この世が存在するためにいてくださっているのです」
「存在するため?」
「そうです」
トーヤの問いにミーヤがきっぱりと答える。
「だから、本来は神に何かをしてもらおうと思うことが間違いなのだそうです」
「はい、その通りです。神とはいてくださるだけでありがたい存在なのです」
「えっと……」
ミーヤとアーダの言葉を聞き、トーヤはどう考えたものかと黙って頭をかいた。
おそらく、侍女たちは神について一般の人間よりも色々なことを聞いて学んでいるのだろう。だからアーダもミーヤも、そしておそらくリルもそのことについて不思議に思うこともない。神というものの本質について、頭ではなく魂で納得している、そんな感じに見えた。
だが、一般人であり、さらにこの国の人間ではないトーヤには、どういうことなのかよく分からない。
「なんとなくだけど、いてくれるってのは、それがなくならないようにってことなのか? もしも、何かの神様がいなくなったらこの世からそれがなくなるってこと?」
「はっ?」
ベルの言葉に思わずトーヤが横を振り向いた。
そうなのか? そういうことなのか?
そんな風に考えたことはなかったが、神がいるとはそういうことなのか?
「そうなるのかも知れないね。私が知る限りでは、実際にその神がいなくなって何かが消えたということはないけれど」
「そうなの?」
「そういうことですよね?」
シャンタルがベルにそう答え、光に確認する。
『そうなのかも知れません』
「そうなのか?」
トーヤも思わず光に確かめる。
『そのような前例がないのです。ですが推測はできます』
「推測?」
『神は、今も日々、生まれているのです。そして日々、消えていく神もあります』
「なんだってえ!?」
ベルが思わず大声を出す。確かに驚く発言だ。
「あの、今も日々、ということは、今、この瞬間にも、なのですか?」
リルが、聞かずにはいられないという風に思わず大きな声でそう聞いた。
『その通りです』
「あの、もう少し丁寧に説明お願いできますか? できればなんか具体的に例とか出してくれるとありがたいです」
『分かりました』
アランの言葉に光が語りだす。
『例えば、馬車、というものがありますね』
「ああ、ある」
馬車はこの世界で欠くことのできない重要な乗り物だ。移動だけなら馬でもできるが、荷物を運んだり、馬に乗れない小さな子どもや病人をを運んだりするのにも必要だし、陸路を行くのに一番に浮かぶ乗り物はやはり馬車だ。
『馬がいても馬車がなかった頃には、馬の神はいても馬車の神はまだ生まれてはいませんでした。人が馬車を作り出した時に馬車の神も生まれました。光が生まれた時に光の神アルディナが生まれたように、慈悲が生まれた時にわたくしが生まれたように』
「ああ、なるほど」
ベルが両手を叩いて分かった! という顔をする。
「すんごいよく分かった、何か新しい物が生まれた時にそれの神様も一緒に生まれるんだ!」
『その通りです』
「そんじゃさ、馬車以外にも何か他の乗り物が生まれたら、その時にはまたその新しい乗り物の神様が生まれるわけ?」
『その通りです』
「へえ~知らなかったなあ、なんか、世界がどんどんにぎやかになってくみたいでいいな」
「ほんとだねえ」
「なあ」
ベルの言葉にそばにいたナスタやダリオも思わず笑っていた。
『ですが』
光がその空気を断ち切るようにさらに続ける。
『もしも、その馬車に変わる乗り物が生まれ、誰もがその乗り物にだけ乗るようになり、やがて馬車を忘れ、誰も覚えていない時が来たならば、その時には馬車の神も消えるのです』
「ええっ!」
ベルの声が一番大きく響いたが、他の者も口々に同じようなことを口にしていた。
「な、な、な、なんで!」
『その神が総べるべき物が失われた時、その神の役割も終わるからです』
「なんでさ!」
『馬車のない世界に馬車の神が必要でしょうか?』
「それは……」
必要なのだろうか?
必要がないように思える。
だが、神様本人を目の前にして、なんとなくそうは言えない雰囲気があった。
その時、
「役目が終わったのなら必要はないと思うよ」
と、シャンタルがあっさりと言った。
「おまえは、こんな時まで空気読むってことねえんだよな……」
アランがほおっとため息をつき、光がなんだか笑ったようだ。
『かように神とその物事、事象とは深く結びついた関係なのです』
「なんとなくだが、神様ってのがどんなもんなのか、ちょっとだけ分かったような気がしないでもない」
と、トーヤが口にした。
「だからあんたらは俺らが何かをしてるのを、はらはらしながら見てるってこったな?」
『そう言えるのかも知れませんね』
光がトーヤに笑うように答える。
「で、そうやって新しい神様ってのが生まれるのに、神様の種ってがいるってこった」
「なあ」
またベルが何かを思いついたようにトーヤに話しかける。
「なんか、ちょっと思ったんだけど、その神様の種ってのは、代々のシャンタルに入ったりしてないのかな?」
「なんだと」
「いや、なんか大変な時に人になるってことだろ?」
「なあ、そうなのか?」
ベルの言葉に思わずトーヤが光に尋ねると、
『いいえ、それはありません』
と、それはきっぱりと否定した。
「存在するため?」
「そうです」
トーヤの問いにミーヤがきっぱりと答える。
「だから、本来は神に何かをしてもらおうと思うことが間違いなのだそうです」
「はい、その通りです。神とはいてくださるだけでありがたい存在なのです」
「えっと……」
ミーヤとアーダの言葉を聞き、トーヤはどう考えたものかと黙って頭をかいた。
おそらく、侍女たちは神について一般の人間よりも色々なことを聞いて学んでいるのだろう。だからアーダもミーヤも、そしておそらくリルもそのことについて不思議に思うこともない。神というものの本質について、頭ではなく魂で納得している、そんな感じに見えた。
だが、一般人であり、さらにこの国の人間ではないトーヤには、どういうことなのかよく分からない。
「なんとなくだけど、いてくれるってのは、それがなくならないようにってことなのか? もしも、何かの神様がいなくなったらこの世からそれがなくなるってこと?」
「はっ?」
ベルの言葉に思わずトーヤが横を振り向いた。
そうなのか? そういうことなのか?
そんな風に考えたことはなかったが、神がいるとはそういうことなのか?
「そうなるのかも知れないね。私が知る限りでは、実際にその神がいなくなって何かが消えたということはないけれど」
「そうなの?」
「そういうことですよね?」
シャンタルがベルにそう答え、光に確認する。
『そうなのかも知れません』
「そうなのか?」
トーヤも思わず光に確かめる。
『そのような前例がないのです。ですが推測はできます』
「推測?」
『神は、今も日々、生まれているのです。そして日々、消えていく神もあります』
「なんだってえ!?」
ベルが思わず大声を出す。確かに驚く発言だ。
「あの、今も日々、ということは、今、この瞬間にも、なのですか?」
リルが、聞かずにはいられないという風に思わず大きな声でそう聞いた。
『その通りです』
「あの、もう少し丁寧に説明お願いできますか? できればなんか具体的に例とか出してくれるとありがたいです」
『分かりました』
アランの言葉に光が語りだす。
『例えば、馬車、というものがありますね』
「ああ、ある」
馬車はこの世界で欠くことのできない重要な乗り物だ。移動だけなら馬でもできるが、荷物を運んだり、馬に乗れない小さな子どもや病人をを運んだりするのにも必要だし、陸路を行くのに一番に浮かぶ乗り物はやはり馬車だ。
『馬がいても馬車がなかった頃には、馬の神はいても馬車の神はまだ生まれてはいませんでした。人が馬車を作り出した時に馬車の神も生まれました。光が生まれた時に光の神アルディナが生まれたように、慈悲が生まれた時にわたくしが生まれたように』
「ああ、なるほど」
ベルが両手を叩いて分かった! という顔をする。
「すんごいよく分かった、何か新しい物が生まれた時にそれの神様も一緒に生まれるんだ!」
『その通りです』
「そんじゃさ、馬車以外にも何か他の乗り物が生まれたら、その時にはまたその新しい乗り物の神様が生まれるわけ?」
『その通りです』
「へえ~知らなかったなあ、なんか、世界がどんどんにぎやかになってくみたいでいいな」
「ほんとだねえ」
「なあ」
ベルの言葉にそばにいたナスタやダリオも思わず笑っていた。
『ですが』
光がその空気を断ち切るようにさらに続ける。
『もしも、その馬車に変わる乗り物が生まれ、誰もがその乗り物にだけ乗るようになり、やがて馬車を忘れ、誰も覚えていない時が来たならば、その時には馬車の神も消えるのです』
「ええっ!」
ベルの声が一番大きく響いたが、他の者も口々に同じようなことを口にしていた。
「な、な、な、なんで!」
『その神が総べるべき物が失われた時、その神の役割も終わるからです』
「なんでさ!」
『馬車のない世界に馬車の神が必要でしょうか?』
「それは……」
必要なのだろうか?
必要がないように思える。
だが、神様本人を目の前にして、なんとなくそうは言えない雰囲気があった。
その時、
「役目が終わったのなら必要はないと思うよ」
と、シャンタルがあっさりと言った。
「おまえは、こんな時まで空気読むってことねえんだよな……」
アランがほおっとため息をつき、光がなんだか笑ったようだ。
『かように神とその物事、事象とは深く結びついた関係なのです』
「なんとなくだが、神様ってのがどんなもんなのか、ちょっとだけ分かったような気がしないでもない」
と、トーヤが口にした。
「だからあんたらは俺らが何かをしてるのを、はらはらしながら見てるってこったな?」
『そう言えるのかも知れませんね』
光がトーヤに笑うように答える。
「で、そうやって新しい神様ってのが生まれるのに、神様の種ってがいるってこった」
「なあ」
またベルが何かを思いついたようにトーヤに話しかける。
「なんか、ちょっと思ったんだけど、その神様の種ってのは、代々のシャンタルに入ったりしてないのかな?」
「なんだと」
「いや、なんか大変な時に人になるってことだろ?」
「なあ、そうなのか?」
ベルの言葉に思わずトーヤが光に尋ねると、
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と、それはきっぱりと否定した。
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