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第四章 第二部
4 口止めと約束
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「じゃあおまえらには特別に教えてやってもいい。ただ、これから言うことは他の奴らには内緒だ。俺はこのことを今まで誰にも話しちゃいない、だから、もしもどこかからこの話が聞こえてきたら、その時にはおまえらがしゃべった、約束を破ったと思ってそれなりのことをさせてもらう、ただじゃおかない。それでいいなら話してやる」
男はギラギラした目つきでハリオとアーリンを睨みつけながらそう言った。
「約束はしてもいいですが」
と、ハリオがまだ少し腰が引けるような態度をしながら確認する。
「その特別な話ってのはあんたしか知らないんですか? もしも他にも知る人がいて、その人が誰かに話してその相手が話したことまで俺らのせいにされるってのなら、そんな約束、とってもできるもんじゃない。俺はもちろんそんなこと話すはずもない。今まで信用だけで商売してきたんだ、約束を違えたことなんぞ一度もない。けどね、それを根っ子からひっくり返されるような冤罪おっつけられてひどい目に合わされるってんなら、そんな話は聞かない方がいい」
ハリオの言い方に男は驚いた顔になる。こう言えば大人しく約束して自分の話を聞くものだとばかり思っていたようだ。
「どうなんです、あんた以外に知る人はいないんですか?」
「いや……」
「じゃあそんな約束はできない。だから、約束がないなら話せないってんなら、俺らはそんな話聞かなくていい。その代わり、あんたの話もいい加減なもの、根も葉もない噂だと思わせてもらう。もちろん、街でそんな話に出くわしたらそう言います」
ハリオにきっぱりと言い切られ、男は困った顔をする。
それはそうだろう。男の目的はおそらくこの噂を広めることだ。ここでせっかく燃え上がらせてきた火を消火されるようなことは困る。
「おい、おまえら、そんなことしたらどうなるか分かってんだろうな……」
男は路線変更することにしたようで、ハリオとアーリンに凄みながらそう言って見せた。
見たところ体格は男が一番上だ。背も高いし肩幅、胸板、どれも何かで訓練されてきたようにがっしりとしている。服の袖で隠されているが腕もおそらく太いだろう。
体格だけでいくとハリオはトーヤと似た背格好、中肉中背だ。アーリンはまだ成長途中だがそれほど大きくは見えない。剣の鍛錬などはやっているが、まだ月虹兵の予備兵になれたばかり、何もかも足りていない未熟な感じだ。
男は自分一人でもこの2人になら勝てる、そう踏んだようで、バン! と音を立ててテーブルを叩き、のっそりと、見せつけるように立ち上がった。
「何が言いたいか分かるだろ? とにかく俺の言ってることは本当だ、これから先もおまえらはそう思って、誰かがなんか言ったらそう言えばいいんだよ」
静かに、だがしっかりと強い口調でハリオとアーリンを脅すようにそう言った。
「いやいやいやいや、そんなこと言われても、なあ」
「そうですよね」
ハリオとアーリンは怖がる風もなく顔を見合わせてそう言うので、男は少しばかり拍子抜けになる。
きっと自分のことを恐れ、暴力を振るわれることを恐れて大人しく言うことを聞くだろうとばかり思っていたのに、2人ともそんなことは取るに足らないことだと言わんばかりだ。
「おい、本気でやってやってもいいんだぞ?」
男が座っている2人の上から見下ろすように、威圧する口調で言うと、ハリオがクスッと笑い、
「やるって何をです?」
と、からかう口調で言ったもので、男はカッと頭に血が上り、顔を赤くするとそのまま腕を振り上げてハリオに殴りかかった、のだが……
「い、いででで!」
あっという間に腕を捻りあげられ、床の上に膝をつく。
「でっかい自分の方が有利だと思ってました? 残念!」
ハリオがゆとりの笑みを浮かべてそう言った。
「ハリオはこう見えても海の男だ、それなりに場数も踏んでて結構やる。多少荒っぽいことになっても心配ないと思うが、もしもの時はちょっとぐらい加勢してやってくれな」
ディレンにそう言われていたのでアーリンも少し構えていたのだが、思った以上の手際の良さに目を丸くする。どうやら出る幕はなさそうだ。
「おまえ、何者だ……もしかして月虹隊や宮の衛士とかか」
「いやいや、そんなもんじゃないです。ただ、ちょっとばかり腕に覚えはありますが」
「くっ……」
男が悔しそうにハリオの腕を解こうとするが一向に解けない。
「俺は何もあんたをどうこうしたいわけじゃない。だから、暴れないって約束するならすぐにでも放してあげますよ。けど、もっと暴れる気なら腕の1本とかぐらい、どうにかなっても知りませんよ」
「うあっ!」
ハリオがもう少しだけギリッと力を入れ、男が呻く。
「どうします?」
「わ、分かった、大人しくする」
「だったらいいです。けど、変な動きするようなら、今度は本気ですからね」
「分かった、約束する」
そうして男はやっと解放された。
「さて、そんでどんな話を聞かせてくれるんでしたっけ?」
ハリオが戸口側の椅子に座り、男が簡単に逃げ出せないように見張りながらそう言った。
「確か、王様が父親殺しをやったのが確かって言ってましたよね?」
アーリンもハリオの隣に椅子を移動してそう聞いた。
男はギラギラした目つきでハリオとアーリンを睨みつけながらそう言った。
「約束はしてもいいですが」
と、ハリオがまだ少し腰が引けるような態度をしながら確認する。
「その特別な話ってのはあんたしか知らないんですか? もしも他にも知る人がいて、その人が誰かに話してその相手が話したことまで俺らのせいにされるってのなら、そんな約束、とってもできるもんじゃない。俺はもちろんそんなこと話すはずもない。今まで信用だけで商売してきたんだ、約束を違えたことなんぞ一度もない。けどね、それを根っ子からひっくり返されるような冤罪おっつけられてひどい目に合わされるってんなら、そんな話は聞かない方がいい」
ハリオの言い方に男は驚いた顔になる。こう言えば大人しく約束して自分の話を聞くものだとばかり思っていたようだ。
「どうなんです、あんた以外に知る人はいないんですか?」
「いや……」
「じゃあそんな約束はできない。だから、約束がないなら話せないってんなら、俺らはそんな話聞かなくていい。その代わり、あんたの話もいい加減なもの、根も葉もない噂だと思わせてもらう。もちろん、街でそんな話に出くわしたらそう言います」
ハリオにきっぱりと言い切られ、男は困った顔をする。
それはそうだろう。男の目的はおそらくこの噂を広めることだ。ここでせっかく燃え上がらせてきた火を消火されるようなことは困る。
「おい、おまえら、そんなことしたらどうなるか分かってんだろうな……」
男は路線変更することにしたようで、ハリオとアーリンに凄みながらそう言って見せた。
見たところ体格は男が一番上だ。背も高いし肩幅、胸板、どれも何かで訓練されてきたようにがっしりとしている。服の袖で隠されているが腕もおそらく太いだろう。
体格だけでいくとハリオはトーヤと似た背格好、中肉中背だ。アーリンはまだ成長途中だがそれほど大きくは見えない。剣の鍛錬などはやっているが、まだ月虹兵の予備兵になれたばかり、何もかも足りていない未熟な感じだ。
男は自分一人でもこの2人になら勝てる、そう踏んだようで、バン! と音を立ててテーブルを叩き、のっそりと、見せつけるように立ち上がった。
「何が言いたいか分かるだろ? とにかく俺の言ってることは本当だ、これから先もおまえらはそう思って、誰かがなんか言ったらそう言えばいいんだよ」
静かに、だがしっかりと強い口調でハリオとアーリンを脅すようにそう言った。
「いやいやいやいや、そんなこと言われても、なあ」
「そうですよね」
ハリオとアーリンは怖がる風もなく顔を見合わせてそう言うので、男は少しばかり拍子抜けになる。
きっと自分のことを恐れ、暴力を振るわれることを恐れて大人しく言うことを聞くだろうとばかり思っていたのに、2人ともそんなことは取るに足らないことだと言わんばかりだ。
「おい、本気でやってやってもいいんだぞ?」
男が座っている2人の上から見下ろすように、威圧する口調で言うと、ハリオがクスッと笑い、
「やるって何をです?」
と、からかう口調で言ったもので、男はカッと頭に血が上り、顔を赤くするとそのまま腕を振り上げてハリオに殴りかかった、のだが……
「い、いででで!」
あっという間に腕を捻りあげられ、床の上に膝をつく。
「でっかい自分の方が有利だと思ってました? 残念!」
ハリオがゆとりの笑みを浮かべてそう言った。
「ハリオはこう見えても海の男だ、それなりに場数も踏んでて結構やる。多少荒っぽいことになっても心配ないと思うが、もしもの時はちょっとぐらい加勢してやってくれな」
ディレンにそう言われていたのでアーリンも少し構えていたのだが、思った以上の手際の良さに目を丸くする。どうやら出る幕はなさそうだ。
「おまえ、何者だ……もしかして月虹隊や宮の衛士とかか」
「いやいや、そんなもんじゃないです。ただ、ちょっとばかり腕に覚えはありますが」
「くっ……」
男が悔しそうにハリオの腕を解こうとするが一向に解けない。
「俺は何もあんたをどうこうしたいわけじゃない。だから、暴れないって約束するならすぐにでも放してあげますよ。けど、もっと暴れる気なら腕の1本とかぐらい、どうにかなっても知りませんよ」
「うあっ!」
ハリオがもう少しだけギリッと力を入れ、男が呻く。
「どうします?」
「わ、分かった、大人しくする」
「だったらいいです。けど、変な動きするようなら、今度は本気ですからね」
「分かった、約束する」
そうして男はやっと解放された。
「さて、そんでどんな話を聞かせてくれるんでしたっけ?」
ハリオが戸口側の椅子に座り、男が簡単に逃げ出せないように見張りながらそう言った。
「確か、王様が父親殺しをやったのが確かって言ってましたよね?」
アーリンもハリオの隣に椅子を移動してそう聞いた。
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