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とたん、少年の顔面が蒼白になる。長大な刃物というのは、それだけで心を圧する。こちらのように幾度もおのれに向けられるのを目の当たりにしているのならともかく、初めての経験であればそれだけで萎縮するのも当然の理屈だった。
できるなら、これで諦めてくれ。胸のうちで祈るようにつぶやいた。
しかし、少年の怒りは恐怖を乗り越えさせてしまう。さらに距離を詰め、間境を越えてきた。
二条の光芒が宙を走る。硬い感触がこちらの手のひらにつたわった。
正面はその場に尻もちをつく。見開かれた目が恐怖と絶望に染まっていた。
ただし、無傷だ。損なわれたのは少年の大刀だった。鎬の部位を避けてこちらが大刀をふるったがために刀身が半ばから折れ飛んだのだ。刀というのはそれほどに脆弱な得物なのだ、ゆえにこそ高度な操作が求められる。
「小僧、うぬに仇討など夢のまた夢。父御のごとく命を散らし、一家を悲しめたくなくば向後は俺に近づかぬことだ」
低い声で、しかし内心は乞うような気持ちで告げた。とたん、少年の顔が歪んだ。ほおを光る物がつたった。
こちらが手加減をし、かつ命を助けようとしていることが伝わったのだろう。あるいは、自分の主張の理不尽さについに目を向けてしまったか。とにかく、その様子からして爾後、仇討などといって襲いかかってくることはないだろうと思われた。
「何かと物騒だ、気をつけて帰れ」
胸を締め付けられる思いにたまらなくなり、早口に告げて少年に背を向ける。
できるなら、これで諦めてくれ。胸のうちで祈るようにつぶやいた。
しかし、少年の怒りは恐怖を乗り越えさせてしまう。さらに距離を詰め、間境を越えてきた。
二条の光芒が宙を走る。硬い感触がこちらの手のひらにつたわった。
正面はその場に尻もちをつく。見開かれた目が恐怖と絶望に染まっていた。
ただし、無傷だ。損なわれたのは少年の大刀だった。鎬の部位を避けてこちらが大刀をふるったがために刀身が半ばから折れ飛んだのだ。刀というのはそれほどに脆弱な得物なのだ、ゆえにこそ高度な操作が求められる。
「小僧、うぬに仇討など夢のまた夢。父御のごとく命を散らし、一家を悲しめたくなくば向後は俺に近づかぬことだ」
低い声で、しかし内心は乞うような気持ちで告げた。とたん、少年の顔が歪んだ。ほおを光る物がつたった。
こちらが手加減をし、かつ命を助けようとしていることが伝わったのだろう。あるいは、自分の主張の理不尽さについに目を向けてしまったか。とにかく、その様子からして爾後、仇討などといって襲いかかってくることはないだろうと思われた。
「何かと物騒だ、気をつけて帰れ」
胸を締め付けられる思いにたまらなくなり、早口に告げて少年に背を向ける。
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