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ふたりきりのとき、酔った折にみずからが小人目付だと市右衛門は漏らしたことがある。
地下御前試合のこともつかんでいる、そしておまえが参加していることも、と仄めかしたこともあった。
得難い算術の私塾の友の言葉だが、しかと答えを返すことを今はできない。
● ● ●
この暗い場所、地下御前試合の場に立つと憂いを忘れることができる。邪念を抱いていては斬られる、ゆえに目の前の戦いに集中し無理やりにも浮世のことは忘れなければならないためだ。
紫電一閃、ふたりの剣士が互いに刺突をくり出す。直撃する寸前で両者は剣尖をはずした。お互いに死ぬために来ているわけではない、勝つために来ているがゆえの行動だ。構え直そうとする相手の面に一撃を送った。あわてて相手は応じる。
甘い、と胸のうちでつぶやいた。そのせりふが現実のものとなった。真正面からわずかにそれて斬撃を迎えた刀身は脇へそれる。結果、俺のふるった剣は相の頭蓋を深々と割ることとなった。
悲痛な顔になって相手は脱力しその場に倒れる。
肉を、骨を断つ感触、命という尊ぶべきものを奪っているという全能感にも似た感覚、ああなんと甘美なことか。
俺は思わず口角を吊り上げていた。
地下御前試合のこともつかんでいる、そしておまえが参加していることも、と仄めかしたこともあった。
得難い算術の私塾の友の言葉だが、しかと答えを返すことを今はできない。
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この暗い場所、地下御前試合の場に立つと憂いを忘れることができる。邪念を抱いていては斬られる、ゆえに目の前の戦いに集中し無理やりにも浮世のことは忘れなければならないためだ。
紫電一閃、ふたりの剣士が互いに刺突をくり出す。直撃する寸前で両者は剣尖をはずした。お互いに死ぬために来ているわけではない、勝つために来ているがゆえの行動だ。構え直そうとする相手の面に一撃を送った。あわてて相手は応じる。
甘い、と胸のうちでつぶやいた。そのせりふが現実のものとなった。真正面からわずかにそれて斬撃を迎えた刀身は脇へそれる。結果、俺のふるった剣は相の頭蓋を深々と割ることとなった。
悲痛な顔になって相手は脱力しその場に倒れる。
肉を、骨を断つ感触、命という尊ぶべきものを奪っているという全能感にも似た感覚、ああなんと甘美なことか。
俺は思わず口角を吊り上げていた。
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