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遊び女の血を引くために、どこか依頼をこなすときに卑屈になっていた部分があり、それも術を失敗る原因のひとつだったのだろう、と先ほどの自分と過去の己を比較して思った。
まだ向後、豊後に居つくことができるどうか定かではないが、それでも豊後に来てよかったと思う。
在昌は新たな自分に出会うことができた。
八
在昌は清水に視線を送り、彼と目を合わせてうなずき合う。
東に石宗、艮と巽に彼の手下の武士が、乾に在昌、坤(ひつじ)と西に彼の側の者が陣取っている。
これも石宗の側がすでに配置についていて、在昌の側は残された場所で誰がどこに立つかということだけが決められるという状況を強いられた結果のものだ。
しかも、心持ちだが在昌側の懸の木は枝ぶりが“むずかしく”なっている。
本来は鞠庭の中央に向いた面の枝は中心に向けて左右に開いた形になっているのがふつうなのだが、そこからはずれた形になっているのだ。
一方の石宗側の木はきれいに定石どおりにととのえられている。事前に細工したのか、枝の状態が元々いいほうに石宗がついたのかわからないが、細々と卑怯をかさねる彼のやり方に在昌は腹が立ってしかたがない。
なにが軍配者だ、かような小細工は兵法でもなんでもなかろう――。
在昌はほぼ正面にいる石宗をにらみつけた。ここで大敗を喫するわけにはいかぬ――耶蘇教の者たちのもとで自儘に天文を研究するためにも、信長の細作として働くためにも宗麟を失望させるのはうまくない。
勝機はある、と考えながらちらと在昌は太陽の方角へと目を向けた。兵は詭道なり――。
そして、蹴鞠がはじまる。
通常、この遊びは誰かと競うようなものではない。あくまで、協力してどれだけ多く鞠のやり取りをつづけられるかというところに眼目がある。
が、今日のそれは石宗の提案で風変わりなものになっていた。
鞠のやり取りをつづけるところは同じだが、敵と味方に別れ、敵へ鞠を蹴ったときに相手が受け取ることができなければそれまでつづけてきた“数”が鞠を相手に渡した側に点数として入るというものだ。鞠は順に円周上でまわっていき、円を突っ切ってまわすことはしない。さしずめ戦(いくさ)蹴鞠といったところか。
まだ向後、豊後に居つくことができるどうか定かではないが、それでも豊後に来てよかったと思う。
在昌は新たな自分に出会うことができた。
八
在昌は清水に視線を送り、彼と目を合わせてうなずき合う。
東に石宗、艮と巽に彼の手下の武士が、乾に在昌、坤(ひつじ)と西に彼の側の者が陣取っている。
これも石宗の側がすでに配置についていて、在昌の側は残された場所で誰がどこに立つかということだけが決められるという状況を強いられた結果のものだ。
しかも、心持ちだが在昌側の懸の木は枝ぶりが“むずかしく”なっている。
本来は鞠庭の中央に向いた面の枝は中心に向けて左右に開いた形になっているのがふつうなのだが、そこからはずれた形になっているのだ。
一方の石宗側の木はきれいに定石どおりにととのえられている。事前に細工したのか、枝の状態が元々いいほうに石宗がついたのかわからないが、細々と卑怯をかさねる彼のやり方に在昌は腹が立ってしかたがない。
なにが軍配者だ、かような小細工は兵法でもなんでもなかろう――。
在昌はほぼ正面にいる石宗をにらみつけた。ここで大敗を喫するわけにはいかぬ――耶蘇教の者たちのもとで自儘に天文を研究するためにも、信長の細作として働くためにも宗麟を失望させるのはうまくない。
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