切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「医療禁令が出されたため、アルメイダ様は病院において施療することはない」
「アルメイダ殿が施療なさらぬ」
 意味がわからず在昌は相手の言葉を茫洋とした口調でくり返した。
「『最高宗門会議』で定められたのだ。伴天連(バテレン)は人間の生命に直接かかわる施療にかかわってはならぬと。伴天連(バテレン)は死すべき宿命を持った人間の永遠の救済こそが真のつとめで、現し世での肉体の生死を左右してはならぬ、ということだ」
 男の顔がさらにけわしいものとなっていた。ただ、その瞳にはやりきれなさがにじんでいる。
「先ほどのおまえの反応からすると、どこぞでアルメイダ様の医術について見聞きしたらしいが、あくまで表向きはあの御仁は“医術”にかかわっておらぬ。よいな」
 一転、彼はこちらに脅しかけるように告げた。
 アルメイダへの気づかいのあらわれ、その言葉に感じ入りながら在昌は大きくうなずく。
 よし、とここではじめて男は笑顔を見せた。そして、
「わしの名はトーマス内田だ」
 と名乗った。
「こちはマノエル在昌ともうしまする」
 在昌も笑みを浮かべて応じる。
 それから、在昌はトーマスにともなわれ“病院”へと足をふみいれた。ふたたび衝撃をおぼえる。
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