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第十一章
一
肥後における一揆の煽動は、甚助こそ討ち漏らしたものの山潜りの大半を仕留めたことで潰すことに成功した。
その後の九州における動きは、天正十年十一月、日之江(ひのえ)城主有馬鎮貴(しげたか)が龍造寺氏から離反し、島津氏に支援を求めた。肥後方面で戦線が膠着していたこともあり、島津氏はただちに援軍を渡海させ、龍造寺方の諸城を攻略していった。
龍造寺氏もまた、援軍を送って対向する。しかし、以前に肥後を南北に分割することで和議が成立していたこともあり、島原半島でも自然休戦に至った。
が、天正十二年(一五八四年)が明けると、島津氏は再度北上の姿勢をみせる。隆信も肥後に出兵、これを牽制する。肥後を短時日に平定できないと見た島津氏総帥義久(よしひさ)は、対龍造寺氏戦略を転換した。
有馬氏が帰順したことをさいわいに、島原半島に戦力を送り込み、龍造寺氏の本拠近くに橋頭堡を築こうとした。二月二日、薩摩大隅日向三国に陣触れし、総力を挙げての造船を命じている。派遣軍の大将は島津家久だ。
島津軍主力の渡海を知った隆信も、本国・分国に陣触れを出した。その動員、行軍の迅速さを、宣教師のルイス・フロイスは「ユリウス・カエサルとてそれ以上の迅速さと知恵をもって企て得ないかと思われた」と驚きをもって記している。“分別も久しければ腐(ねま)る”という言葉を信条とする隆信の果断さがあらわれた形だ。
天正十二年三月十九日、龍造寺麾下(きか)の軍兵は佐嘉より出陣した。肥前、須古城を経由し、海路で神代に渡る。そして、二十三日三会城下に集結、翌二十四日払暁に山手筋に後方警戒部隊を残した龍造寺方主力勢は、山手、沖田畷(なわて)と浜手筋の三分して前進を開始した。その規模は二万数千といわれている。
一
肥後における一揆の煽動は、甚助こそ討ち漏らしたものの山潜りの大半を仕留めたことで潰すことに成功した。
その後の九州における動きは、天正十年十一月、日之江(ひのえ)城主有馬鎮貴(しげたか)が龍造寺氏から離反し、島津氏に支援を求めた。肥後方面で戦線が膠着していたこともあり、島津氏はただちに援軍を渡海させ、龍造寺方の諸城を攻略していった。
龍造寺氏もまた、援軍を送って対向する。しかし、以前に肥後を南北に分割することで和議が成立していたこともあり、島原半島でも自然休戦に至った。
が、天正十二年(一五八四年)が明けると、島津氏は再度北上の姿勢をみせる。隆信も肥後に出兵、これを牽制する。肥後を短時日に平定できないと見た島津氏総帥義久(よしひさ)は、対龍造寺氏戦略を転換した。
有馬氏が帰順したことをさいわいに、島原半島に戦力を送り込み、龍造寺氏の本拠近くに橋頭堡を築こうとした。二月二日、薩摩大隅日向三国に陣触れし、総力を挙げての造船を命じている。派遣軍の大将は島津家久だ。
島津軍主力の渡海を知った隆信も、本国・分国に陣触れを出した。その動員、行軍の迅速さを、宣教師のルイス・フロイスは「ユリウス・カエサルとてそれ以上の迅速さと知恵をもって企て得ないかと思われた」と驚きをもって記している。“分別も久しければ腐(ねま)る”という言葉を信条とする隆信の果断さがあらわれた形だ。
天正十二年三月十九日、龍造寺麾下(きか)の軍兵は佐嘉より出陣した。肥前、須古城を経由し、海路で神代に渡る。そして、二十三日三会城下に集結、翌二十四日払暁に山手筋に後方警戒部隊を残した龍造寺方主力勢は、山手、沖田畷(なわて)と浜手筋の三分して前進を開始した。その規模は二万数千といわれている。
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