陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「てめえの立場をちったあ弁えればよかったんだ」
 猪助がため息をもらし言葉をかさねた。
 栄助は破落戸に同情はしなかった。下手をすれば連中にこんな目に遭わされていたのは自分だ。
 それに、こいつらは女人を手籠めにした――。
 それより気がかりなのは、自分が破落戸に天誅を下したいと言ったせいで仲間が危険にさらされたことだ。
 栄助が猪助を目でうかがうと、
「まあ、成り行きだ。仕方ねえさ」
 と彼は笑顔でかぶりをふった。温かい気づかいに栄助は安堵の念をおぼえた。

    四

 小鳥遊の親分は、知らせに走ってきた隣村の男に乾分から柄杓を渡させた。
 柄杓の水を男は一気に飲み干す。そして荒れた息を整えた。
 小鳥遊は自分の賭場に出入りして散財して金子を借りた者を間者代わりに使うということをしていた。何か異変が起きたら走ってこい、と言い含めてあるのだ。
「常吉のやつらが殺されたんだ、親分」
 男の言葉に小鳥遊は怒りに血の気が引くのを感じる。
「殺(や)ったのは誰か分かってるのか?」
「知らねえ連中だった、身なりからして渡世人だと思う」
 なるほど、と小鳥遊は思った。
 破落戸だった甥のことだ、渡世人と修羅場になる事由には事欠かないだろう。何しろ、甥のやつは仁義に欠ける所業も多かった。
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