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「ほかになにか変わったことはあったか?」
あー、と男が記憶をたどるそぶりを見せた。
「そうだ、確か銃声が聞こえた」
「銃声か」
小鳥遊は眉をひそめて独語する。
正直に言って厄介だった。立てつづけに使える得物ではないが、気合いや根性ではどうしようもない距離から銃丸は飛んでくる。
「あとは、おいらが気づいたときには始末がついてた」
それはすなわち、甥を襲った連中は白兵戦でも強い連中だということになる。
「こいつあ、正面からぶつかるのは損だな」
「そりゃあ、そうだ」
小鳥遊の言葉に男がさも当然だとばかりにうなずいた。自分に金を借りている分際で何を偉そうに、彼のことが不愉快になる。だが、
「それと、親分に見せられた人相書きの男を連中の中に見かけたぜ」
という言葉に男をぞんざいに扱うことができなくなった。
「夜のことだ、見間違えじゃねえのか?」
「いや、間違いない」
小鳥遊の問いかけに男は力強く首をふった。これは――期待していいのかもしれない。
「おい、お客さんのところにひとっ走り行って来い」
乾分を使いに走らせた。
「一休みしたら、帰んな」
男に告げ、小鳥遊は土間の上がり框から腰をあげた。そして客間に移動する。
四半刻のさらに半分もしないうちに招いた相手、大名家に仕える武士がやって来た。
「かような刻限に何用か」
口ぶりはともかく態度は怒っていなかった。なにかを期待する目をしている。
あー、と男が記憶をたどるそぶりを見せた。
「そうだ、確か銃声が聞こえた」
「銃声か」
小鳥遊は眉をひそめて独語する。
正直に言って厄介だった。立てつづけに使える得物ではないが、気合いや根性ではどうしようもない距離から銃丸は飛んでくる。
「あとは、おいらが気づいたときには始末がついてた」
それはすなわち、甥を襲った連中は白兵戦でも強い連中だということになる。
「こいつあ、正面からぶつかるのは損だな」
「そりゃあ、そうだ」
小鳥遊の言葉に男がさも当然だとばかりにうなずいた。自分に金を借りている分際で何を偉そうに、彼のことが不愉快になる。だが、
「それと、親分に見せられた人相書きの男を連中の中に見かけたぜ」
という言葉に男をぞんざいに扱うことができなくなった。
「夜のことだ、見間違えじゃねえのか?」
「いや、間違いない」
小鳥遊の問いかけに男は力強く首をふった。これは――期待していいのかもしれない。
「おい、お客さんのところにひとっ走り行って来い」
乾分を使いに走らせた。
「一休みしたら、帰んな」
男に告げ、小鳥遊は土間の上がり框から腰をあげた。そして客間に移動する。
四半刻のさらに半分もしないうちに招いた相手、大名家に仕える武士がやって来た。
「かような刻限に何用か」
口ぶりはともかく態度は怒っていなかった。なにかを期待する目をしている。
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