陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 だが、後者の選択肢は火縄銃という連発の利かない得物にとっては余りにも危険が高すぎた。
 もはや、一足飛びに距離まで相手が近づいている。
 さらに男は雄叫びをあげた。
 とたん、銃声がひびいてそれをかき消した。
 あとになって気づく、みずからが引金を引いてしまったことに。
 胸を討たれた男がその場にくずおれた。投げ出された手足が、生命が男から抜け落ちたことを如実に物語っていた。
 ああ、やってしまった――そんな思いを栄助は抱く。

    五

 村に帰った栄助を名主は期待の表情で迎えた。
「おまえ、戻ってきたってことは?」
 と聞かれ、
「逃亡者は討ち取った」
 栄助は苦いものがこみあげるのを感じながら頷いた。
 ほ、と名主はつぶやき目を丸くし、やがて眉を逆八の字にして手を叩いた。
「よくやった、よくやったぞ、栄助」
 あまりのよろこびぶりに、
 もしかして――。
 栄助はひとつの疑念をおぼえた。
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