陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 あのときの目、殺しを頼んだ瞬間も同じ目をしていた。自分ができることをすべきかどうか斟酌していた。
「栄助、おまえは変わってないな」
 自分がこうしてすっかり渡世人が板についたというのに、おまえはあのころの純粋なままだ。
「それで、おまえの頼みの綱は頼りになりそうかい」
 回想しているうちに、部屋に陣借り無宿の親分の猪助が入ってきていた。風格のある、渋い風貌をした男だ。
「ああ、まず大丈夫だ」
「そりゃよかった、ここまで来て駄目だったっていうのはきついからな」
 助左衛門がうなずくと、猪助は目を細めて笑った。
「助左、どうだったの」
「駄目だったじゃ済まされない」
 さらにふたりの仲間、菊と伊平治が姿を現した。眩しいほど別嬪の女と老け顔の小男の組み合わせだった。もうひとり仲間がいて表で見張りをしている。
「任せろ、大丈夫に決まってるだろうが」
 そんな彼らに助左衛門は大見得を切った。
 実際のところ、栄助が依頼に応じてくれない場合、刺客からひたすら逃げまわるしかなくなるから彼らにとって事態は深刻だ。
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