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    三

 今日はたまの彦兵衛宅での食事に栄助はありついていた。
 およねは親友とふたりきりしたほうがいいだろう、と気を使って遠慮している。
「なに、助左に会っただって」
 二歳になる子どもをあやす彦兵衛が、栄助の言葉に大きな声を出した。
「しかも人殺しを頼まれた?」
 さらに大声で彦兵衛は声を発する。
「声がでかいぞ、彦の字」
 栄助は顔をしかめた。
 彦兵衛の嫁は法事で家を空けているが、事情は分からずとも子どもたちがいるのだ。余人に訳も分からずに話さないとも限らないし、子どもたちにも聞かせたくない。
「落ちついている場合か、このたわけ。そうだ、村役人に知らせるのはどうだ」
「そして、かつての友を捕まえさせるのか?」
「う、それは」
 狼狽えた彦兵衛を落ちつかせようと低い声で告げた。とたん、彦兵衛の語気が弱まった。
「助左は命を狙われているらしい」
「だが、それは渡世人をしているが故の自業自得というものだろう」
「それはそうだが」
 彦兵衛の言葉に栄助は口もごもった。
 かつての友が相手だ、助けてやりたいとは思う。
 だが、それが人殺しをさせられるとなるとな――気軽に「おう、やろうか」とは言えなかった。
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