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 それから薪拾をして家に帰ると、この日も朋友がやって来ていた。
 その顔を見たとたん、
「聞いたか」
 と例の話が口をついて出ていた。朋友には明かさずにはいられなかったのだ。
「なにがだ?」
「助左衛門が近くに来ているらしい」
「なに、助左ってあの助左か?」
「ああ、俺の従兄の助左衛門らしい」
 栄助の言葉に、そういえば、と朋友が言葉をかさねた。
「北の方の宿場でおれたちがぐらいの年の渡世人とやくざ者が殺し合ったらしい」
「まさか?」
 朋友の言葉に栄助は背筋に寒いものを感じた。
「さあな、無関係だといいが」
 朋友は確信の持てない口調で言う。
 そこに厠に行っていたよねが戻ってきた。不穏な気配を察したのか、
「どうしたの?」
 と問いかける妹に、
「なんでもない」
 と栄助はこたえた。
 だが、すぐに“なんでもない”ことはなかったことが明らかになる。
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