65 / 136
65
しおりを挟む
「どうする、小次郎」
そこに在信が狼狽えた声で応じる。
「里の者はできるだけ殺(あや)めとうない。在信の矢で威嚇しつつ、逃げるぞ。森の中ならなしうるのではないか、のふ」
「ええ、できなくはない」
「それでは行くぞ」
のふの言葉に将門は大きくうなずいた。そして、「在信、俺の矢をやる」と将門は自分の矢を、先の盗賊との戦いで矢がほとんど尽きた在信に渡す。
四
東海道を六人の男たちが歩いていた。褐衣(かちえ)姿の者が二、三混じっていることからしてどこぞの貴族の郎党を思わせる。
男たちの目線は前ではなく街道の脇へと向かっている。
やがて、そのうちのひとり橘清輔(たちばなのきよすけ)が東海道から外れ一本の木立の前に立った。枝に結ばれている文をほどいてはずす。
「見つけたぞ」
彼の言葉に、残りの者たちが足を止めた彼のもとに近づいてきた。
清輔は彼らの前で文を広げる。そこには、将門一行が目代への闇討ちを避けるために森の中を進むことと、その方角が艮であることが記されていた。
そこに在信が狼狽えた声で応じる。
「里の者はできるだけ殺(あや)めとうない。在信の矢で威嚇しつつ、逃げるぞ。森の中ならなしうるのではないか、のふ」
「ええ、できなくはない」
「それでは行くぞ」
のふの言葉に将門は大きくうなずいた。そして、「在信、俺の矢をやる」と将門は自分の矢を、先の盗賊との戦いで矢がほとんど尽きた在信に渡す。
四
東海道を六人の男たちが歩いていた。褐衣(かちえ)姿の者が二、三混じっていることからしてどこぞの貴族の郎党を思わせる。
男たちの目線は前ではなく街道の脇へと向かっている。
やがて、そのうちのひとり橘清輔(たちばなのきよすけ)が東海道から外れ一本の木立の前に立った。枝に結ばれている文をほどいてはずす。
「見つけたぞ」
彼の言葉に、残りの者たちが足を止めた彼のもとに近づいてきた。
清輔は彼らの前で文を広げる。そこには、将門一行が目代への闇討ちを避けるために森の中を進むことと、その方角が艮であることが記されていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる