平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「目代が襲われるか」
「袁胡め、やりすぎおって」
 仲間たちが嘲笑を浮かべる。確かに目代を待っているだろう未来は滑稽だ。だが、
「笑っておる場合か。弓矢や太刀をたずさえた我らが里の者に出くわせば目代の手下と思い違いをされるであろうぞ」
 そのことを清輔は懸念した。
「う、言われてみれば」
「それもそうだ」
 莫迦な郎党どもに清輔は内心、ため息をつく。
「されば、いかがする」
「我らも森の中を行くしかあるまい。不案内だがの」
 問いかけに清輔ははっきりとした声でそう応じた。そして、先陣を切って森の中に分け入っていった。帯刀していた蕨手刀を抜き放ち邪魔な枝葉を斬り落とす。
「それにしても、間(かん)はよくもまあ味方を裏切れますな」
 郎党のひとりが背中越しに清輔に話しかけてくる。
 そうはもうすが、ここもじとかの者と何が違うのか――清輔はそんな思いを抱いた。
 皇胤ではあるものの、都では“殺しの上手”などと呼ばれながら上達部に名簿を奉げ、なんとか官職を得ようと汲々としている。なにかを得ようとするために手段を選ばない、この点においてはくだんの間者と清輔に相違するところがあるとは思えなかった。
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