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第四章

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由希にぃの機嫌が直った。
というか、何で機嫌が悪かったんだろ?
由希にぃからレンゲを奪い取ろうとしたら、青い顔をした岡田先輩に凄い勢いで首を振られた。ブンブンブン、そんな音すら聞こえそうだ。

う~ん。
けど、篠崎の具合もまだあんまり良くない。一緒に食事をするようになって少しだけ体重が戻ってきてはいるが、まだまだ足りない
俺ばっかり食ってても。

ア、ホ、ナ、コ、ト、ス、ン、ナ、

岡田先輩が口を大きく動く。中指まで立てられた。
やめたほうが良いってことなんだろうけど。
ため息がでた。

岡田先輩と篠崎の相性は悪い。けれど、由希にぃと篠崎はそれ程悪くなかった。
篠崎は由希にぃと華さんの事をよく考えていた。俺が二人の邪魔をするような事を無自覚にした場合にはちゃんと諌めてくれた。
由希にぃと華さんが運命だという事を教えてくれたのも篠崎だ。
正確には、ほぼ運命、と。華さんとそうなる前は、由希にぃはほぼ入れ喰い状態だったらしい。…………入れ喰い……。頭脳明晰、眉目秀麗、そしてあの唐澤家……華さん以外にも無理矢理番契約を結ばせようとしたΩもいるらしい。けれどそれらを撃退してきた。ラットになって契約まで結んだのは華さんだけ。
『意味、分かるよな?』
篠崎に言われて頷いた。
あんなに儚げで美人な由希にぃだけど、やっぱりαだから性欲はあって、そういう時は隙ができる。でも、今までは理性が勝っていた。華さんだけが、由希にぃの本能を引きずり出した。
αとΩの運命の絆なんて、痛い程しっている。そこにβなんて入る隙間なんてない。異物でしかない。

「智則?」
レンゲを口の前に差し出されていたけれど、気がついてなかった。
反射的に口をあけた。そのままチャーハンが入ってきた。
「ん、イイコ」
くすりと笑ってしまった。由希にぃの中で俺は成長してないらしい。
「どうしたの?」
「いや、懐かしいな、と。少し恥ずかしいけどな。」
「うん。智則が小さい頃は膝の上に乗せてたけどね。よっと。」
由希にぃが俺を引っ張り上げた。イヤイヤ、成人した男が、膝の上に乗るってないだろ。流石に抵抗する。
「唐澤先輩。智則ももっとちゃんと拒絶しろ。先輩の番さんに悪いだろ」
篠崎が低い声で注意してきた。確かに。β男という安全パイとはいえ、華さんが知ったら気分悪いよな。
どこうと身じろぎすると、抑えつけられた。……由希にぃ、意外と力、強かったんだな。力という意味では由希にぃの方が強い。けれど、俺はコツをしっているから、由希にぃの抑えつけは隙だらけですぐに跳ね付けられる。けれど……岡田先輩がまた中指立てて、本気で『身動きすんな』って言ってる
「雑魚は黙ってろ」
怒気を滲ませて由希にぃが言った。篠崎と由希にぃは、仲は悪くなかったのに、なんで…
「いいえ。むしろ手を出す気がないなら、黙ってなければならないのは貴方だ。それが私達αのルールだ」
「巻き込むな!こんな獣のような社会に!人間らしく暮らさせるんだよ!」
「資格も無い者が叫ぶな!」
篠崎も応戦する。
重たい空気。物理的に息が苦しくなる。岡田先輩が倒れたのが見えた。
………………。
ブチっ
ざけんなよっ
コップの水を二人の顔にぶち撒けた。そのまま立ちあがって二人の頭を掴み頭付きさせた。
「「…………!」」
額を二人が押さえる。力加減はした。額が割れたりはしない。

「二人とも、やめろって言ったよな?何が気に食わないんだか知らないけど威圧を垂れ流すな。マウントを取り合いたいなら、二人きりでしろ。他人を巻き込むな。…………俺は、威圧とか嫌いだ。」

「「智則……!」」











    
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