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第一章

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大学に着くと、岡田が飛びついてきた

「唐澤、なんで、何で……!」
俺が華を訴えない事に対してだろう。岡田以外からも……αのとある協会からも抑止力の意味も含め、訴えることを推奨された。

「どうでもいいからな。」
そう、どうでも誰でもいいのだ。智則でないなら、誰でも同じ。
それに……
あの時、投げ出してしまった自分がいた。本気で抵抗すれば、噛まずに済んだかもしれない。抵抗すら、面倒くさいと思ってしまったのだ。

岡田がため息をついた。
「…………じゃあ、他にも番を持つのか」
「面倒くさい。」
「……あの女、それも計算づくか。性悪め」
岡田が吐き捨てる。俺が他に番を持たなければ唐澤家の内向きのトップになる
「お前のセフレ達があの女を懲らしめるようだぞ。」
「そうか」
「とめないんだな」
「学生のいざこざも処理出来ない程度の者では唐澤当主の伴侶は務まらない。誘発剤を使用してまでその座を狙ったのだからその程度は覚悟をすべきだ」
「…………多分、レイプされるぞ。番以外にそんな事されたら、Ωのダメージは…………」
「興味ない。ソレで死んだら唐澤の伴侶たる能力がなかったってことだ」
「…………初めて、あの女に同情した。一瞬だけどな」
「まぁ、華なら大丈夫だろう」
「…………意外と信頼している?」
「…………」

華は津川に似ている。欲しいものを手に入れる為には手段を選ばず番にして。無理矢理つがわされた方がどう思おうが構わずに。心は肉体に、番という絆につられて情が湧くようになると盲信して動いた。
けれど、佐藤は…………。

ただ、津川がもう少し待てたら違ったのかもしれないとも思う。
佐藤は、俺への想いを断ち切って進もうと、揺れ動きつつもペアリングを買った。少しずつ、少しづつだが変化はしていたのだ。俺だけがそれに気が付いていた。

だから……だから、俺も華を訴えなかった。もしかしたら、もしかしたら俺も華に番の契約に引っ張られて心が智則から離れてくれるかもしれない。
番として2年も過ごせば、智則が入学してくるころにはこのどろりとした執着が昇華されるかもしれない。
あの笑顔を守れるかもしれない。
もう、智則について調べるのもやめよう…


そう思って、そう思って過ごしてきたのに…

ああ、智則。


「由希にぃ!」

黒い黒い瞳をまんまるにして俺を見上げてきた

「やっぱり由希にぃだ!」

ああ、やっぱり君は酷い。
俺のこの何年もの努力を一瞬で無にする
俺という狂気から君を守りたくて走ってきたのに、その瞳だけでおれを狂乱へと吸い込んでいくんだ……



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由希と智則との再会までの章でした。
もう一つの作品”努力に勝るαなし”と結びつけるなら”九条様のマンションへー由希”の所になります。
これだけ自分の執着から守ってきたのに、もっとどうしようもない人に惚れられちゃってたんだから、その衝撃たるや…
こう言っては何ですが、すぐに切れちゃう九条よりも全然いい男だと思うのですが。ストーカーだし根暗だけど。でも恋愛って結局弱肉強食というか。動いたものが勝ちなんだと思います。だから、まあ本編の”努力に勝るαなし”由希にぃが負けていたのもしょうがないかなと思います。ただ、あちらでは、あまりにも由希にぃが可哀そうすぎるけど。

こちらでは、九条も出てこないし由希にぃが幸せになるといいな。。
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