救世の血 セイバーブラッド

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シーズン1

第5話 シーズン1/リポート5/セクション1

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第5話 シーズン1/リポート5/セクション1
救世の血 セイバーブラッド シーズン1  導かれる希望

5.コアキューブ

 スティングがウォム/ヒルツの開発作業に没頭する中、出番待ちのリヴァーは、コーヒーをすすりながらエリザベスに歩み寄った。
「昨日はすまなかった」
「え?何のこと?」
「親父さんから聞いたよ…医師を目指した頃、辛い経験をしたんだな」
「ああ…別に気にしてないわ」
 リヴァーは詫びて、エリザベスと会話しようとした。

「おたくの愛機…宇宙開拓軍のWMに似ているな」
「ええ…WMの残骸を回収して、うちの飛行艇とか…要らなくなった部品パーツを組み合わせてみたの」
「名はカノンだったかな?自作オリジナルのWMってわけだ」
「そういうこと…いろいろと思い入れがあってね」
 リヴァーは、遠くを見て話すエリザベスが気になった。
「何故…宇宙側のWMを?…理由は話せるか?」
「興味あるの?」
 リヴァーは静かに頷き、カノンを造った経緯を聞こうとした。


「ある時、近所に宇宙開拓軍のWMが
 ハワード父娘は、WMの落下による衝撃音で驚き、すぐ現場に向かった。

 ハワード父娘の視界には、瓦礫の山と被弾した宇宙開拓軍専用のWMが映っており、戦争の凄惨さが伝わっていた。彼らは恐る恐る身動きが取れないWM の様子を窺ったが…

 ハワード父娘がWMに接近すると、コックピットハッチが開き、パイロットの姿があった…

 WMパイロットは銃を構えながら、眼前のハワード父娘のことを警戒していた。鬼気迫る状況で、ハワード父娘は死を覚悟したが…

「はあはあ…」
 WMパイロットは致命傷を負っていて、銃の引き金を引く力は残っていなかった。彼はそのまま力尽きて倒れた。
「…まだ息はある、助けないと…」
 エリザベスは医療の世界から離れたが、医師の心は消えてなかった。近くに病院がないため、ハワード父娘は急いで、瀕死状態のWMパイロットを自宅に運んだ。
 エリザベスは重傷者の治療、手術の経験が浅く、知識と根気だけでWMパイロットの命を救おうとしたのだが…

 奇跡は起こらなかった。WMパイロットはハワード父娘の自宅で息を引き取った。
「…私がちゃんとした医者だったら助けられたかもしれない」
「自分を責めるな、残念だが彼の運命《さだめ》だ」
 スティングは、自身の無力さを嘆く実娘をなだめた。
 WMパイロットが息を引き取った後、エリザベスはふと、WMの落下現場に足を踏み入れたのだが…

 落下現場は、WMパイロットがいないだけで、それ以外は以前と何も変わっていなかった。エリザベスはパイロットを失ったWMを調べようとした。まず、彼女はコックピット内に潜り込み…

 コックピットの座席シートや機器・計器は、亡くなったパイロットの血で赤く染まっていて、惨状を物語っていた。
 エリザベスは彼の所持品を物色した。アンティークのロケットペンダントが発見され…

 ペンダントの中にはデジタルの仕掛けが施されていた。蓋を開けると、光立体映像が流れて、綺麗な女性が映っていた。彼女は亡くなったWMパイロットの婚約者だった。
 ペンダントには、婚約者のメッセージが記録されていた。内容は戦争が終わった後に結婚式を挙げるとのことだが、彼らの理想は儚く散ってしまった。
 ペンダントには、〝CANON〟と彫られていた。婚約者の名前である。

 エリザベスは父の手を借りず、亡くなったパイロットの供養のつもりで、懸命に被弾したWMの回収・修理作業を行った。

「…このカノンを完成させたことで、技術屋として生きる自信がついたわ、人間は無理だけど、兵器は生かすことができると…」
「前にも訊いたと思うが、愛機これをどう扱う気だ?」
「武器を装備すれば、ちゃんと戦えるわ…いざとなれば、私がパイロットに…」
 エリザベスは、悲しげな表情で覚悟した。

「おーい、来てくれ」
 リヴァーたちの話がひと段落したところで、スティングが彼らに呼び掛けた。
「準備は整ったのか?」
「大体な…お前の情報が欲しい…あと、ヒルツと相性が合うか調べたい」
「好きに使ってくれ」
 リヴァーは文句を言わず、スティングの操り人形と化した。

「ヒルツは、お前の遺伝子情報を読み込むと起動する、試してみるか?」
 スティングは、リヴァーをヒルツ(ウォム)に搭乗させようとした。
 リヴァーはドックリフトを利用して、機体ヒルツに乗り込むのだが…

 ちなみに、ヒルツ=ウォムの操縦スペースはコックピットという名称ではなく、〝マヌーバー・コア〟と呼称されていた。

 マヌーバー・コア内部は暗闇に包まれていたが、リヴァーの遺伝子認証が完了したことでまばゆい光に包まれた。
「よし…これでお前の機体マシンになった、降りてこい、やることが山積みだ」
 リヴァーたちに休む暇はなく、次の工程に進んだ。

「よくもまあ、こそこそと敵の領域なわばりで造ったな…」
「職業柄、部品や機材は簡単に手に入るが、調達が難しいものもあった、例えば、動力源とか…」
「WMの動力源は専用の水素燃料電池ハイドロバッテリーじゃないのか?」
「それではウォムは動かない…もっと強力なエネルギーが必要だ」
 スティングはそう言って、リヴァーたちにヒルツの動力源ひみつを見せようとした。それは厳重に金属のケースに収納されていた。
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