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最終章 いかないで
第一話 解放
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「本当にそれでいいの?」
「ああ――人を見過ぎた。時を見過ぎた。セカイを見過ぎた。自分の感情を受け継がせたくない。結末は、きっとあの糸遊がどうにかしてくれるだろ? だって今までだって、どんなことがあっても、柘榴が助けてきたんだから、今度は糸遊の出番だ」
笑う心友に、黒き髪の青年は笑った。それはとても、優しいが悲しい笑みであった。
自分は殺される側に近かったが、今度は己が心友を殺す羽目になるなんて。
でも、それが互いの一番の望であることを二人は知っているからこそ文句も、意見もでなくて、ただ何故かあれほど無駄な時を過ごしてきた心友は今を、今流れてる時を一番恐れ、一番期待し、一番怯えていた。
「お前こそいいのか?」
「――勝てない試合に縋り続けるのはどうも、ね。お前みたいになりたくないし。彼らを見ていると、思い出すよ。お前と、僕を――なぁ、渡り鳥だって告げた時に見せてくれた物を覚えているか?」
『夜空』
揃って答えると二人は笑いあった。黒い頭二人は笑いあい、やがて――だまり、計画を実行する、陽炎が解決してくれることを願って。
「忘れていたんだ」
黒き髪の青年は、血を唇から垂れ流し、微笑んだ。
鮮血は、彼の年数とは裏腹に、生まれたばかりの人間のように暖かなルビー色。
だけど、それはすぐに茶色く染まり、鮮やかさでさえ、もう彼に永久を許してないことを知る。滴る血は消えていき、本当に存在してはいけなかったことを思い知る。
「忘れていた――バカだよな。恨んだ方は、いつだって心に残るのに、恨まれた方は、簡単に忘れちまう。……あの聖霊が特別だっただけ。だから、誰かがこうする前に、テメェの手によって解放されて、幸せだ」
かつて、白を象徴していた神のような存在は、自分を刺している、青年を抱きしめた。
その青年も同じ髪色だが、刺している青年の方が艶が良くて、何処か小綺麗だった。
刺している青年は、小刻みに震え、死にかけの青年に言葉をかけた、小声で。
「ああ? 何が、有難うなんだ? ――陽炎と出会えたことか? だとしたら、テメェ、ものすげぇ皮肉屋だな……はは、泣くなよ。テメェだって、消えるんだから……」
「そうだな、僕も消える――……長い、長いすれ違いだったな。漸く、お前と……また一緒に過ごせる。それも、これが全て愛しい人の為になるなら、何て幸せなことなのだろうか」
「印象最悪だよなァー、僕もテメェも。最初恨まれて、最後イイコトしてやって。……感情に悩めばいいさ、あいつら。いつまでも悩めばいい。悩んでしまえ。だって、それこそが」
生きてる証。
そう呟いて二人は消えた。
まるで煙のように、否、消えていく日差しのように。雲に隠れていく日差しのように、消えゆき、それを見つめているのは二人の妖仔。
空よりも濃い水色の髪、それと紅蓮の髪。消えた二人がとても愛していた妖仔だ。
「これでいい? 何がいいんだね――いつだって、蒼様は身勝手なんだ」
「ご主人様……――ああ、ね、アクマ。皆、いるよ、後ろに」
ベルベットシティの水子たちとの再会に、少年達は嬉しいような哀しいような複雑な感情を抱く。
「おかえり、そして――さよなら、星空。今、全てが……解放されたんだね」
星空は集まった。
プラネタリウムを見よう?
「ああ――人を見過ぎた。時を見過ぎた。セカイを見過ぎた。自分の感情を受け継がせたくない。結末は、きっとあの糸遊がどうにかしてくれるだろ? だって今までだって、どんなことがあっても、柘榴が助けてきたんだから、今度は糸遊の出番だ」
笑う心友に、黒き髪の青年は笑った。それはとても、優しいが悲しい笑みであった。
自分は殺される側に近かったが、今度は己が心友を殺す羽目になるなんて。
でも、それが互いの一番の望であることを二人は知っているからこそ文句も、意見もでなくて、ただ何故かあれほど無駄な時を過ごしてきた心友は今を、今流れてる時を一番恐れ、一番期待し、一番怯えていた。
「お前こそいいのか?」
「――勝てない試合に縋り続けるのはどうも、ね。お前みたいになりたくないし。彼らを見ていると、思い出すよ。お前と、僕を――なぁ、渡り鳥だって告げた時に見せてくれた物を覚えているか?」
『夜空』
揃って答えると二人は笑いあった。黒い頭二人は笑いあい、やがて――だまり、計画を実行する、陽炎が解決してくれることを願って。
「忘れていたんだ」
黒き髪の青年は、血を唇から垂れ流し、微笑んだ。
鮮血は、彼の年数とは裏腹に、生まれたばかりの人間のように暖かなルビー色。
だけど、それはすぐに茶色く染まり、鮮やかさでさえ、もう彼に永久を許してないことを知る。滴る血は消えていき、本当に存在してはいけなかったことを思い知る。
「忘れていた――バカだよな。恨んだ方は、いつだって心に残るのに、恨まれた方は、簡単に忘れちまう。……あの聖霊が特別だっただけ。だから、誰かがこうする前に、テメェの手によって解放されて、幸せだ」
かつて、白を象徴していた神のような存在は、自分を刺している、青年を抱きしめた。
その青年も同じ髪色だが、刺している青年の方が艶が良くて、何処か小綺麗だった。
刺している青年は、小刻みに震え、死にかけの青年に言葉をかけた、小声で。
「ああ? 何が、有難うなんだ? ――陽炎と出会えたことか? だとしたら、テメェ、ものすげぇ皮肉屋だな……はは、泣くなよ。テメェだって、消えるんだから……」
「そうだな、僕も消える――……長い、長いすれ違いだったな。漸く、お前と……また一緒に過ごせる。それも、これが全て愛しい人の為になるなら、何て幸せなことなのだろうか」
「印象最悪だよなァー、僕もテメェも。最初恨まれて、最後イイコトしてやって。……感情に悩めばいいさ、あいつら。いつまでも悩めばいい。悩んでしまえ。だって、それこそが」
生きてる証。
そう呟いて二人は消えた。
まるで煙のように、否、消えていく日差しのように。雲に隠れていく日差しのように、消えゆき、それを見つめているのは二人の妖仔。
空よりも濃い水色の髪、それと紅蓮の髪。消えた二人がとても愛していた妖仔だ。
「これでいい? 何がいいんだね――いつだって、蒼様は身勝手なんだ」
「ご主人様……――ああ、ね、アクマ。皆、いるよ、後ろに」
ベルベットシティの水子たちとの再会に、少年達は嬉しいような哀しいような複雑な感情を抱く。
「おかえり、そして――さよなら、星空。今、全てが……解放されたんだね」
星空は集まった。
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