255 / 358
第六部~梅花悲嘆~
第三十一話 花の香りすべてを眩ませる
しおりを挟む悪魔座は目を見開き、そういえばそんなこともあったなぁ、と昔の事件を思い出していた。鷲座には陽炎を助けるために、宮廷妖術師になったことがあったのだった。
鷲座は「便利ですよね、これ」と言って、慣れた様子で入ってる辺り、もしかしたら時折こうして禁書を読みに来ているのかもしれない、と悪魔座は呆れた。
「術のコーナーはここから、あそこまで……君は、二列目からあたって。小生は、ここからあたります」
「判ったね、どう探せばいいんだね? ぼかぁ昔の文字しか読めないし」
「それなら大丈夫。ここの本は殆どが昔の字です。古書ですから。探し方は、数字の少なさ。この世の物には、決まった数字が与えられてます。例えば、この本を、五と名付けたとして、この本に少しでも関わるものならば、何処にでも五という数字が現れる。それが妖術です。数字が少なく記述されてるものは、少し違う術で、亜流ということです」
鷲座はそういって手に取った本を流し読みして、元に戻す。
記憶を陽炎がなくしたということ以外に、本を読みながら悪魔座に、鴉座という単語に陽炎が嫌そうな反応を示したということを、鷲座は教わった。
鷲座はそれを聞くと、恐ろしいほどのスピードで捲っていたページを止めて、少し考え込む。
「――字環は、関わってないんですか?」
「そういう結果にしたのは自分だって言ってたね」
「つまり直接、そうしたのは自分ではない、ということですね。捻くれた答え方だ。……となると、僧龍派? 否、でもケッシー術も……」
「本当に、博識なんだね、ワシ兄さん」
悪魔座は既に読むのに少し飽きつつあった。だが、読んでいくうちに、ふと気になる箇所を見つけた。
――花の香、全てを眩ませる。
(花の香り? ……確かに、あの時、いつもの陽炎とは違う匂いがしたね。……何の香りかは判らなかったけど、花の香りなのかな)
悪魔座はその本を持ち、鷲座の服をくいくいっと引っ張る。
鷲座は本に熱中してて気付かなかったが、悪魔座が強くまた引っ張ると気づき、悪魔座の持ってる本を見やる。そして、己の持ってる本を持たせて、悪魔座の本を読む。
「――……これは、まだ解明されてない術。由来は東洋、とありますね。花の香りがしたんですか」
「うーん、判らないけど、何か、いつもの陽炎の匂いがしなかったんだね。違う香りがしたんだね」
「……――ちょっと、待ってくださいね。この術なら、先ほどの僧龍派と掛け合わせて、数式に変換すると……――」
ぶつぶつと鷲座は呟くと、ポケットから小さなメモ帳と万年筆を取り出す。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる