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第六部~梅花悲嘆~
第三十二話 解除を編み出す
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数式をすらすらと書いていき、途中の式でつまる。うんうんと唸りながら、もう一度、僧龍派とやらに書かれた本を読み直して、新たに式を書き直す。
でもその式に納得がいかないのか、鷲座は溜息をつく。
「これ、多分、本に載ってない術が必要ですよ」
「何の術?」
「――ガンジラニーニの妖術です。幸い、小生の記憶にあるので、いいんですが、あの式は難解で、中々思い通りの式に巡り会わない。少し時間をください」
「じゃあ二時間」
「少ないです。何故、二時間?」
鷲座が少しむすっとしながら、尋ねると、悪魔座は、拗ねたような表情で、鷲座を見やる。
「だって、ゴーストの世話をしたいんだもん。それに、カラス兄さんだって、そろそろ帰らないと心配すると思うし」
「……ああ。成る程。何故か、あの鳥は、君と幽霊座どのに親切ですよね。同性に親切にするなんて、珍しい」
そこは複雑な事情があるから言えないのだが、鷲座は気に留めてなかったので、悪魔座は両手あわせて、お願いっと、二時間で頑張って貰うよう交渉した。
鷲座はこめかみを抑えて、了承し、ノート十冊と筆記用具を買ってくるように頼んだ。
悪魔座は頷き、すぐにおつかいをすませた。鷲座はノートを受け取ると、そこに鉛筆で数字を書き込んでいき、本を読みながら、己の中にあるガンジラニーニの数字を思いだし、メモしていく。ノートには余白がないほどに数字が書き込まれていき、どんどん数字が増えていく。そうして書き終えた後に、使い終えたので、また新たにノートを開き書き込んでいく。今度は、式を。試しの式を幾らか書き込んでは、ぐしゃぐしゃっと黒く潰し、新たに式を計算していく。
試しの式を書いて、合計四冊くらいノートを使い終えた。その頃に、今度はちゃんとした計算式を書き込んでいく。出来るだけ簡略化をして、正確な答えを導けるよう努力しながら、計算していき、二冊式を書き終え、答えが出た。
それは約束の二時間から少し送れた三時間後だったが、鷲座の疲労ぶりを見ると、最短でできるよう頑張ってくれたみたいだったので、悪魔座は感謝した。
「香り消えゆくは、冬の季節――そう陽炎どのの前で、唱えてください。そうすれば、何かしら変わるでしょう。何の術かは判りませんが、少しは変化をもたらす結果になると思います」
「有難うだね! 今日、試してみるんだね!」
「――礼を言うのは此方だ。陽炎どのの安否が判るまで、生きた心地がしなかったんです。小生があの人の助けになれて嬉しいです、有難う悪魔座どの」
鷲座が苦笑して、悪魔座の頭を遠慮がちに撫でた。
陽炎のことは、実はまだ好きだ――諦めようと思ったけど、まだ恋心は捨て切れていない。女々しいとは思うけれど、やはりそうすぐに恋心に別れは告げられない。それでも、その思いを乗り越えて、いつか恋できる人が現れると信じてるから、鷲座はそのままにしてる。いつかは、捨てられると思って。
だから、陽炎はどんな存在よりも、特別な人物――数式で出来た己という存在に、人のような恋という感情を与えてくれた人間だから。
恋してる、とはもう言うことができないし、愛してるとは告げられぬ相手だけれど、大好きな存在なのだ。
悪魔座はそれを見透かしてるように、鷲座に苦笑して、姿を消した。
でもその式に納得がいかないのか、鷲座は溜息をつく。
「これ、多分、本に載ってない術が必要ですよ」
「何の術?」
「――ガンジラニーニの妖術です。幸い、小生の記憶にあるので、いいんですが、あの式は難解で、中々思い通りの式に巡り会わない。少し時間をください」
「じゃあ二時間」
「少ないです。何故、二時間?」
鷲座が少しむすっとしながら、尋ねると、悪魔座は、拗ねたような表情で、鷲座を見やる。
「だって、ゴーストの世話をしたいんだもん。それに、カラス兄さんだって、そろそろ帰らないと心配すると思うし」
「……ああ。成る程。何故か、あの鳥は、君と幽霊座どのに親切ですよね。同性に親切にするなんて、珍しい」
そこは複雑な事情があるから言えないのだが、鷲座は気に留めてなかったので、悪魔座は両手あわせて、お願いっと、二時間で頑張って貰うよう交渉した。
鷲座はこめかみを抑えて、了承し、ノート十冊と筆記用具を買ってくるように頼んだ。
悪魔座は頷き、すぐにおつかいをすませた。鷲座はノートを受け取ると、そこに鉛筆で数字を書き込んでいき、本を読みながら、己の中にあるガンジラニーニの数字を思いだし、メモしていく。ノートには余白がないほどに数字が書き込まれていき、どんどん数字が増えていく。そうして書き終えた後に、使い終えたので、また新たにノートを開き書き込んでいく。今度は、式を。試しの式を幾らか書き込んでは、ぐしゃぐしゃっと黒く潰し、新たに式を計算していく。
試しの式を書いて、合計四冊くらいノートを使い終えた。その頃に、今度はちゃんとした計算式を書き込んでいく。出来るだけ簡略化をして、正確な答えを導けるよう努力しながら、計算していき、二冊式を書き終え、答えが出た。
それは約束の二時間から少し送れた三時間後だったが、鷲座の疲労ぶりを見ると、最短でできるよう頑張ってくれたみたいだったので、悪魔座は感謝した。
「香り消えゆくは、冬の季節――そう陽炎どのの前で、唱えてください。そうすれば、何かしら変わるでしょう。何の術かは判りませんが、少しは変化をもたらす結果になると思います」
「有難うだね! 今日、試してみるんだね!」
「――礼を言うのは此方だ。陽炎どのの安否が判るまで、生きた心地がしなかったんです。小生があの人の助けになれて嬉しいです、有難う悪魔座どの」
鷲座が苦笑して、悪魔座の頭を遠慮がちに撫でた。
陽炎のことは、実はまだ好きだ――諦めようと思ったけど、まだ恋心は捨て切れていない。女々しいとは思うけれど、やはりそうすぐに恋心に別れは告げられない。それでも、その思いを乗り越えて、いつか恋できる人が現れると信じてるから、鷲座はそのままにしてる。いつかは、捨てられると思って。
だから、陽炎はどんな存在よりも、特別な人物――数式で出来た己という存在に、人のような恋という感情を与えてくれた人間だから。
恋してる、とはもう言うことができないし、愛してるとは告げられぬ相手だけれど、大好きな存在なのだ。
悪魔座はそれを見透かしてるように、鷲座に苦笑して、姿を消した。
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