【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
236 / 358
第六部~梅花悲嘆~

第十二話 お節介のお節介

しおりを挟む
「かげ君の知り合い?」
「……――んなことないで」
「大丈夫。内緒にするから。それにおいらに言ったって、別に支障はないっしょ? 絶対に言わないから」
「何を根拠にそんなことを言うてはりますの?」

 菫は柘榴の心を読んで分かり切っているのに、そんなことを口にする。
 陽炎から聞いた話では、人の心を読むというのに、わざわざ口にさせたがるこの男はどういうことだろうか。自覚したくないのだろうか。

「――あんたの眼差しが、ね。親のような目だった」
「……理由にはならへんよ、そんなん。あんたの気のせいかもしれへんやろ?」
「……相当隠したい秘密らしいね。隠し事っていずれはばれるんだよー?」
「せやかて、隠してるうちはばれへんやろ? 僕が死ぬまで隠し通せれば、僕の勝ちや」
「……――何でそんなに否定する? いい加減苛ついてくるんだけど」
「穏やかやないなー。……僕は、ただ赤蜘蛛さん以外に、その秘密を話しとうないだけや。第一初対面のあんたに言ったかて、何になるん? 初対面で話されるのが当たり前とでも思ってるんか? ああ、あんた聖霊なんか。その説歌い――成る程、それでずっと何もかも知ったような好かん顔しとるんか。こましゃくれたガキめ、何でも判とりますー顔がむかつくわ」

 心を知っただけで、ここまでも相手が見えるのだろうか。
 柘榴は別に何もかも知ったような顔をしてるつもりはなかったが、そんな風に見えたのならそういう風な顔をしてるのだろう、と肩を竦めて、菫に指さす。

「じゃあその秘密を隠したままでいいから、聞いて。あの人に何かするなら、許さない。何かあの人を傷つけることをしたら、一生許さないから」
「……――傷つけない為に秘密にしとるんに、心外やなぁ」
「何か言った?」
「いいえー、了解しましたぁー。じゃ写真も撮ったし、少し観光したら帰るわ。海外に出るんは初めてなんや、僕」
「お勧めは、夏みかんだね、この時期は。それと、ドライフルーツが最高に美味い」
「へぇ、旅路に最適やな。アドバイス、アリガトさん。せや、えとフルーティ、――オマエ、妖術師の腕前不安に思うとるけど、皇太子が別格なだけなんやから、自信持ってオマエの民族守ったらええ。……お節介のお返しや。ほなな」

 菫は背を向けると迷いもなく、すたすたと帰って行く。
 心の奥底を見透かされた――柘榴は、どきりとして、どくどくと鼓動が五月蠅いまま菫の背中を見やる。
 
 確かに、不老不死で生きようと覚悟したものの、本当に己の腕前でガンジラニーニ達を助けられるか、見守り続けることが出来るか、不安な心が支配していた。

 不老不死を考えたとき、真っ先に出たものは、「己の妖術は力不足ではないのだろうか」だった。
 妖術には頼りたくない――だが、妖術に頼るしかない。これから先、どんな敵が己らガンジラニーニに現れるか分からない。それでも妖術だけは確実に敵を倒してくれるから、これから先、呪いを生み続けなければならない。
 でも本当に己は蒼刻一の代わりが出来るだろうか? 己は蒼刻一ほど他の民族に対して、無慈悲になれるだろうか?
 問題があったとき、己一人で解決出来るだろうか、妖術で。
 
 その全てを一瞬で見透かされた――柘榴は苦笑して、普段は中々人の秘密を知りたいとは思わないが、少し興味が出てしまった。
 
「かげ君自身は知らない感じがするんだよなぁーそれとも、覚えてないだけなのかなぁ? かげ君の周りって、謎な人ばーっかり。最初の頃のおいら含めて」
 
 柘榴は暑さに汗を拭って、屋敷を見上げる。先ほどの部屋に陽炎が戻っているらしく、ここからは蓮見というより陽炎のほうがよく見えるなぁと思った。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

処理中です...