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第六部~梅花悲嘆~
第十二話 お節介のお節介
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「かげ君の知り合い?」
「……――んなことないで」
「大丈夫。内緒にするから。それにおいらに言ったって、別に支障はないっしょ? 絶対に言わないから」
「何を根拠にそんなことを言うてはりますの?」
菫は柘榴の心を読んで分かり切っているのに、そんなことを口にする。
陽炎から聞いた話では、人の心を読むというのに、わざわざ口にさせたがるこの男はどういうことだろうか。自覚したくないのだろうか。
「――あんたの眼差しが、ね。親のような目だった」
「……理由にはならへんよ、そんなん。あんたの気のせいかもしれへんやろ?」
「……相当隠したい秘密らしいね。隠し事っていずれはばれるんだよー?」
「せやかて、隠してるうちはばれへんやろ? 僕が死ぬまで隠し通せれば、僕の勝ちや」
「……――何でそんなに否定する? いい加減苛ついてくるんだけど」
「穏やかやないなー。……僕は、ただ赤蜘蛛さん以外に、その秘密を話しとうないだけや。第一初対面のあんたに言ったかて、何になるん? 初対面で話されるのが当たり前とでも思ってるんか? ああ、あんた聖霊なんか。その説歌い――成る程、それでずっと何もかも知ったような好かん顔しとるんか。こましゃくれたガキめ、何でも判とりますー顔がむかつくわ」
心を知っただけで、ここまでも相手が見えるのだろうか。
柘榴は別に何もかも知ったような顔をしてるつもりはなかったが、そんな風に見えたのならそういう風な顔をしてるのだろう、と肩を竦めて、菫に指さす。
「じゃあその秘密を隠したままでいいから、聞いて。あの人に何かするなら、許さない。何かあの人を傷つけることをしたら、一生許さないから」
「……――傷つけない為に秘密にしとるんに、心外やなぁ」
「何か言った?」
「いいえー、了解しましたぁー。じゃ写真も撮ったし、少し観光したら帰るわ。海外に出るんは初めてなんや、僕」
「お勧めは、夏みかんだね、この時期は。それと、ドライフルーツが最高に美味い」
「へぇ、旅路に最適やな。アドバイス、アリガトさん。せや、えとフルーティ、――オマエ、妖術師の腕前不安に思うとるけど、皇太子が別格なだけなんやから、自信持ってオマエの民族守ったらええ。……お節介のお返しや。ほなな」
菫は背を向けると迷いもなく、すたすたと帰って行く。
心の奥底を見透かされた――柘榴は、どきりとして、どくどくと鼓動が五月蠅いまま菫の背中を見やる。
確かに、不老不死で生きようと覚悟したものの、本当に己の腕前でガンジラニーニ達を助けられるか、見守り続けることが出来るか、不安な心が支配していた。
不老不死を考えたとき、真っ先に出たものは、「己の妖術は力不足ではないのだろうか」だった。
妖術には頼りたくない――だが、妖術に頼るしかない。これから先、どんな敵が己らガンジラニーニに現れるか分からない。それでも妖術だけは確実に敵を倒してくれるから、これから先、呪いを生み続けなければならない。
でも本当に己は蒼刻一の代わりが出来るだろうか? 己は蒼刻一ほど他の民族に対して、無慈悲になれるだろうか?
問題があったとき、己一人で解決出来るだろうか、妖術で。
その全てを一瞬で見透かされた――柘榴は苦笑して、普段は中々人の秘密を知りたいとは思わないが、少し興味が出てしまった。
「かげ君自身は知らない感じがするんだよなぁーそれとも、覚えてないだけなのかなぁ? かげ君の周りって、謎な人ばーっかり。最初の頃のおいら含めて」
柘榴は暑さに汗を拭って、屋敷を見上げる。先ほどの部屋に陽炎が戻っているらしく、ここからは蓮見というより陽炎のほうがよく見えるなぁと思った。
「……――んなことないで」
「大丈夫。内緒にするから。それにおいらに言ったって、別に支障はないっしょ? 絶対に言わないから」
「何を根拠にそんなことを言うてはりますの?」
菫は柘榴の心を読んで分かり切っているのに、そんなことを口にする。
陽炎から聞いた話では、人の心を読むというのに、わざわざ口にさせたがるこの男はどういうことだろうか。自覚したくないのだろうか。
「――あんたの眼差しが、ね。親のような目だった」
「……理由にはならへんよ、そんなん。あんたの気のせいかもしれへんやろ?」
「……相当隠したい秘密らしいね。隠し事っていずれはばれるんだよー?」
「せやかて、隠してるうちはばれへんやろ? 僕が死ぬまで隠し通せれば、僕の勝ちや」
「……――何でそんなに否定する? いい加減苛ついてくるんだけど」
「穏やかやないなー。……僕は、ただ赤蜘蛛さん以外に、その秘密を話しとうないだけや。第一初対面のあんたに言ったかて、何になるん? 初対面で話されるのが当たり前とでも思ってるんか? ああ、あんた聖霊なんか。その説歌い――成る程、それでずっと何もかも知ったような好かん顔しとるんか。こましゃくれたガキめ、何でも判とりますー顔がむかつくわ」
心を知っただけで、ここまでも相手が見えるのだろうか。
柘榴は別に何もかも知ったような顔をしてるつもりはなかったが、そんな風に見えたのならそういう風な顔をしてるのだろう、と肩を竦めて、菫に指さす。
「じゃあその秘密を隠したままでいいから、聞いて。あの人に何かするなら、許さない。何かあの人を傷つけることをしたら、一生許さないから」
「……――傷つけない為に秘密にしとるんに、心外やなぁ」
「何か言った?」
「いいえー、了解しましたぁー。じゃ写真も撮ったし、少し観光したら帰るわ。海外に出るんは初めてなんや、僕」
「お勧めは、夏みかんだね、この時期は。それと、ドライフルーツが最高に美味い」
「へぇ、旅路に最適やな。アドバイス、アリガトさん。せや、えとフルーティ、――オマエ、妖術師の腕前不安に思うとるけど、皇太子が別格なだけなんやから、自信持ってオマエの民族守ったらええ。……お節介のお返しや。ほなな」
菫は背を向けると迷いもなく、すたすたと帰って行く。
心の奥底を見透かされた――柘榴は、どきりとして、どくどくと鼓動が五月蠅いまま菫の背中を見やる。
確かに、不老不死で生きようと覚悟したものの、本当に己の腕前でガンジラニーニ達を助けられるか、見守り続けることが出来るか、不安な心が支配していた。
不老不死を考えたとき、真っ先に出たものは、「己の妖術は力不足ではないのだろうか」だった。
妖術には頼りたくない――だが、妖術に頼るしかない。これから先、どんな敵が己らガンジラニーニに現れるか分からない。それでも妖術だけは確実に敵を倒してくれるから、これから先、呪いを生み続けなければならない。
でも本当に己は蒼刻一の代わりが出来るだろうか? 己は蒼刻一ほど他の民族に対して、無慈悲になれるだろうか?
問題があったとき、己一人で解決出来るだろうか、妖術で。
その全てを一瞬で見透かされた――柘榴は苦笑して、普段は中々人の秘密を知りたいとは思わないが、少し興味が出てしまった。
「かげ君自身は知らない感じがするんだよなぁーそれとも、覚えてないだけなのかなぁ? かげ君の周りって、謎な人ばーっかり。最初の頃のおいら含めて」
柘榴は暑さに汗を拭って、屋敷を見上げる。先ほどの部屋に陽炎が戻っているらしく、ここからは蓮見というより陽炎のほうがよく見えるなぁと思った。
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