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第六部~梅花悲嘆~
第十一話 懐かしい恋慕の色
しおりを挟む柘榴は面倒くさそうについてきて、蓮見を連れてくるが、菫の陽炎を見守る眼差しの色に気付く。
――恋慕とも違う、謀略してはめようとする色とも違う。懐かしさに溢れ、親しみある者を見守るような目つき。
そう。己が陽炎を見つめるような色をしていた。
ただ、そこに少しでも間違いがあれば、恋慕になってしまいそうな過去の己のような色。
菫は柘榴に気付くと、ぺこと頭をさげて、紙を見せる。
そこは真っ白で、瞳の色が赤色になると、紙に柘榴の姿がそのまま吸い込まれたように念写された。
これが証拠、とでも言いたいのだろう。
柘榴はなるほどな、と思いながらも少しの警戒心を残し、蓮見を菫の元に向かわせる。
菫はへにゃりと笑い、蓮見の頭を撫でて、陽炎に笑いかける。
「有難うな、これで赤蜘蛛さんとこに胸張って帰れるさかいに。えっと、息子の名前なんちゅーの?」
「蓮見だ。んで、今、黒雪は白雪って名前なんだ。ええと、ユグラルドでいうと……スノーホワイトだ」
「へぇ。あの人が白い雪、ねぇ……さてさて、じゃあ蓮見ちゃん、僕の前でかわいーくポーズとってくれへんか?」
「可愛いポーズって? どんなの?」
「えっとー、まぁええとこっち向いて笑ってくれとったらそれでええわ。ほら、満面の笑みー笑うて笑うて!」
急に笑えと言われても蓮見は笑うことが出来ないのか、戸惑い気味に陽炎を見上げる。
陽炎はその視線に気付くと、少し考えた素振りを見せてから、にっと笑い、蓮見をこしょこしょとくすぐる。すると蓮見はきゃっきゃと笑いだし、自然な笑みが出来て、それを眺めて菫は念写する、陽炎ごと。
三人に念写した紙を見せると、陽炎はへぇと驚いた目をして、手を叩いた。
「凄いな。便利だな、これ。お前、自警団になればいいんじゃないか? 犯人の顔覚えるのに便利だぞ」
「そんな暇あったら先に捕まえとるわ。あほやな、陽炎」
「かげろちゃ、あほって何ー?」
「菫ちょん、あんまり蓮見ちゃんの前で嫌な言葉使わないようにね」
菫の言葉に柘榴が少し顔をしかめて注意した。菫はそれに気付くと、けらっと笑った。
「ああ、すんまへんなぁ。えっと、フルーティ?」
「うわぁ、懐かしいその名前」
くすくすと柘榴は微笑み、蓮見と陽炎に中に入るよう頼む。
菫に話があるからと二人を先に中に入れると、柘榴はこの男相手には気遣いは必要なかったと思うものの、少しの間をあけてから、困ったような笑みで、菫を見やる。
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