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海香子編

2。感触と熱

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その日、結局海香子と合流出来たのは20時頃だった。
海香子は食堂の前で待つ圭司に、慌てて駆け寄った。

「ごめんね、遅くなっちゃって」
「いいよ、俺も卒制の事とかやってたし」

二人で駅に向かいながら、横並びで歩く。
昔は二人で歩く時、必ず海香子が手を握ってくれていた。それに、背も彼女の方が高かった。その考えに行きつき、ようやく自分の身長が彼女を追い越してからの再会が初めてだと気付いた。

「みかちゃん、今まで何やってたの?いつから会ってなかったんだっけ?」

勇気を出しその質問をした頃には、もう駅に到着していた。帰りの方向も同じなのか、ホームも同じところだった。

「去年の夏まで、ずっと留学してたんだよね。そこから一回静岡の方行って、そしたらあの大学に呼ばれたって感じ」

海香子は、圭司の4つ歳上だ。そして立ち位置的には……圭司の、叔母に当たる。

「親父、知ってんの?みかちゃんが帰ってきたこと」

圭司の何気無い言葉に、海香子は一瞬だけ固まる。しかしすぐに、取り繕うように笑った。

「知ってるよ、でもまだ会ってない。何だかんだタイミング無くてさ」
「……そっか」

海香子の様子を気にはしながらも、言及する程には無いように感じた。だから、何も言わなかった。
電車が到着し、二人で乗り込む。すると、帰宅ラッシュは終わったはずなのに珍しく人が沢山乗っていた。どうやら、座れそうにない。

「圭司は、今義姉さんと住んでるのよね?それだけは聞いた」
「うん、でも親父ともちょくちょく会うよ。来週も会うし」
「そうなんだ……」

海香子の顔が、少しだけ曇った。さすがに何か言いそうになったが、その瞬間進んでいた電車が急に止まった。

「わっ……」
「あぶなっ」

乗客皆がよろめき、それは海香子と圭司も例外ではなかった。
とくに海香子のよろめきがひどく、圭司は慌てて海香子の体を受け止めた。その体は、柔らかかった。

『緊急停車いたしました。申し訳ございません……』
「だ、大丈夫?」
「うん、ごめんね」

すぐに海香子は体勢を戻した。しかし圭司は表情は冷静を装いながらも、内心心臓が暴れているのを感じた。
初めて、触れた。仕方ないこととはいえ、腕に……海香子の胸が当たった。その柔らかさを思い返すと、股間が熱をもつのを感じた。

(ダメだって、今は……!)

こんなのが海香子に知れたらと思うと焦りばかりが募り、圭司は慌てて口を開いた。

「あ、あのさ!来週みかちゃんも来ない!?」
「え?」
「親父には俺から言っておくしさ。せ、せっかくなら、ね?」

急な言葉ではあったが、海香子は少し考えるようにして「行こうかな」と呟いた。圭司の半勃起には気付いていないようで、心底安心した。
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