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第十二章 求婚
9.お兄様の話
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それから一度だけお父様とラウツェニング宰相から呼び出しがあったが、私は体調がすぐれないとか言って応じなかった。
あの場にいた、ルートヴィヒとマルグリートは私を絶賛し、尊敬してくれたが、私の気は晴れなかった。
リンディア語なんて使うんじゃなかった。
私、ソロモンと結婚したいみたいじゃない。
イドリースだってあの言い方!
『スレイマン殿下はリンスター様のご希望を叶えた上でお妃としてお迎えするため、本国のお父上であらせられる皇帝陛下に幾度も幾度も嘆願し、最低でも4~5人は必要なお妃の数を、リンスター様ただお一人で良いという許可をもぎ取られました』
まるで、私とソロモンの間に結婚の約束があったみたいに感じられる。
やっぱり一筋縄ではいかない。
もしかして、ルーマデュカの王と何か、結託していたとか?
クラウスがバルバストル放逐の準備の時、協力を申し出たソロモンのことをこんなふうに言っていた。
『何か見返りを要求してくるつもりのようでございますから、やらないということはないと思います』
その「見返り」が私…?
それに。
あの献上物…
ヤバくない?
果たして、お兄様が深刻そうな顔をして私の部屋に来た。
「リンスター、あなたの結婚について、父上と宰相はまたもや考えを変えたようだよ」
「それって…もしかして」
「リンディア帝国に嫁すことになりそうだ」
やっぱり。
私は大きくため息をつく。
お兄様は腕組みをして私を見下ろした。
「最初は、交易は多少しているものの、さすがに国交も全然ない国との婚姻は…と考えていたようなのだが。
あの献上物の中に、スパイスや調味料がたくさん入っていて、考えが変わったらしい。
特に砂糖は今、世界中で高騰していて、我が国でも手に入れるのに四苦八苦している。
リンディア帝国は砂糖の巨大な生産地で、市場も流通も牛耳っているのだよ。
あなたがリンディア帝国の皇子と結婚すれば、砂糖だけでなく様々なもので利を得られると考えたようだ」
「しかも、求婚相手の皇子はあなたにベタ惚れの様子だ。
リンディア帝国の皇子の妃が1人だけだなんて俄に信じがたい。
皇帝陛下に嘆願して、それが許可されるところからも、スレイマン皇子という人はきっと皇帝陛下の信頼の篤い皇子なのだろう。
そこにつけこんで、宰相は居丈高な条件を呑ませるかもしれない」
「ソロモンやイドリースはとんでもない策士だもの。
冷徹な戦士でもあるし。
ルーマデュカでの公爵の弾劾も、裏でソロモンが暗躍してくれなかったら絶対に成し得なかった。
わたくしのことは…何か勘違いをなさっているとしか…」
私が呟くように話すと、お兄様は心底驚いたように少しのけぞった。
「あなたは…本当にルーマデュカで、宮廷の中枢にいたのだね。
王は何故そんなリンスターを手放したのだろう。
しかもあんなにあっさり…おかしなことだらけだ」
ふう、とため息をついてお兄様は私を見た。
「ともあれ、明日にはもう、ルーマデュカの王が到着なさる予定だ。
これでお姉様との婚姻がまとまって、お二人がルーマデュカへ帰国なさればいよいよあなたの番だ。
…リンスターは、フォルクハルトよりスレイマン皇子が好きなのか?」
私はうつむいて首を横に振る。
私が好きなのは…
フォルクハルトでもソロモンでもない。
多分。
お兄様は私の様子を見て、心配そうに眉をひそめた。
「もし嫌だと思うなら私に言いなさい。
私が王太子として、断固反対するから」
お兄様は強く言い、私は「ありがとう、お兄様」とうつむく。
お兄様は「つらいな、あなたも」と言って私の頭を優しく撫でた。
あの場にいた、ルートヴィヒとマルグリートは私を絶賛し、尊敬してくれたが、私の気は晴れなかった。
リンディア語なんて使うんじゃなかった。
私、ソロモンと結婚したいみたいじゃない。
イドリースだってあの言い方!
『スレイマン殿下はリンスター様のご希望を叶えた上でお妃としてお迎えするため、本国のお父上であらせられる皇帝陛下に幾度も幾度も嘆願し、最低でも4~5人は必要なお妃の数を、リンスター様ただお一人で良いという許可をもぎ取られました』
まるで、私とソロモンの間に結婚の約束があったみたいに感じられる。
やっぱり一筋縄ではいかない。
もしかして、ルーマデュカの王と何か、結託していたとか?
クラウスがバルバストル放逐の準備の時、協力を申し出たソロモンのことをこんなふうに言っていた。
『何か見返りを要求してくるつもりのようでございますから、やらないということはないと思います』
その「見返り」が私…?
それに。
あの献上物…
ヤバくない?
果たして、お兄様が深刻そうな顔をして私の部屋に来た。
「リンスター、あなたの結婚について、父上と宰相はまたもや考えを変えたようだよ」
「それって…もしかして」
「リンディア帝国に嫁すことになりそうだ」
やっぱり。
私は大きくため息をつく。
お兄様は腕組みをして私を見下ろした。
「最初は、交易は多少しているものの、さすがに国交も全然ない国との婚姻は…と考えていたようなのだが。
あの献上物の中に、スパイスや調味料がたくさん入っていて、考えが変わったらしい。
特に砂糖は今、世界中で高騰していて、我が国でも手に入れるのに四苦八苦している。
リンディア帝国は砂糖の巨大な生産地で、市場も流通も牛耳っているのだよ。
あなたがリンディア帝国の皇子と結婚すれば、砂糖だけでなく様々なもので利を得られると考えたようだ」
「しかも、求婚相手の皇子はあなたにベタ惚れの様子だ。
リンディア帝国の皇子の妃が1人だけだなんて俄に信じがたい。
皇帝陛下に嘆願して、それが許可されるところからも、スレイマン皇子という人はきっと皇帝陛下の信頼の篤い皇子なのだろう。
そこにつけこんで、宰相は居丈高な条件を呑ませるかもしれない」
「ソロモンやイドリースはとんでもない策士だもの。
冷徹な戦士でもあるし。
ルーマデュカでの公爵の弾劾も、裏でソロモンが暗躍してくれなかったら絶対に成し得なかった。
わたくしのことは…何か勘違いをなさっているとしか…」
私が呟くように話すと、お兄様は心底驚いたように少しのけぞった。
「あなたは…本当にルーマデュカで、宮廷の中枢にいたのだね。
王は何故そんなリンスターを手放したのだろう。
しかもあんなにあっさり…おかしなことだらけだ」
ふう、とため息をついてお兄様は私を見た。
「ともあれ、明日にはもう、ルーマデュカの王が到着なさる予定だ。
これでお姉様との婚姻がまとまって、お二人がルーマデュカへ帰国なさればいよいよあなたの番だ。
…リンスターは、フォルクハルトよりスレイマン皇子が好きなのか?」
私はうつむいて首を横に振る。
私が好きなのは…
フォルクハルトでもソロモンでもない。
多分。
お兄様は私の様子を見て、心配そうに眉をひそめた。
「もし嫌だと思うなら私に言いなさい。
私が王太子として、断固反対するから」
お兄様は強く言い、私は「ありがとう、お兄様」とうつむく。
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