婚活男の理想の結婚

丸井まー(旧:まー)

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21:誕生日パーティー

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セガールは昼休憩もまるっと仕事をして、なんとか定時で上がれるようにした。シェリーとカールを待たせる訳にはいかないと、大急ぎで帰り支度をして、海軍の建物を出れば、ちょうど出入り口の門のところに、カールとシェリーがいた。シェリーはカールのコートの中に潜り込んで、顔だけを出している状態だった。仲良しな2人が可愛くて、思わず笑みを浮かべてしまう。
カールが先にセガールに気づいて、ゆるい笑みを浮かべた。


「セガールさん、お疲れ様です」

「あっ、パパ。カール。時計見せて。おぉ。時間ピッタリだわ」

「待たせたか?」

「そんなに待ってないわ。ほんのちょっとよ。さっき着いたばっかりなの」

「そうか。寒くないか?」

「動かないと寒いからカールのコートに入ってる」

「ははっ。入られてます」

「ははっ。身体が冷える前に移動しよう。『至福亭』だったな」

「はい。『至福亭』の2階の個室を予約しました。シェリー。念の為、俺達と手を繋ごう。夜の大通りは人が多いし、酔っ払いもいるから」

「はぁい」


シェリーがカールのコートの前を開け、カールのコートから出てきた。シェリーも白いコートを着ていて、どうやら下にはワンピースを着ているようである。髪も可愛らしく結い上げて髪飾りを着けているし、どうやらお洒落をしているようだ。

セガールはシェリーと手を繋ぎ、反対側のシェリーの手をカールが握った。3人並んで、『至福亭』を目指して歩いていく。
まだギリギリ夕方の時間だが、夕食や酒を求めて、多くの人が大通りを歩いている。足早に歩く人からシェリーを庇いつつ、ワクワクしている様子のシェリーを連れて、『至福亭』に入った。

2階の個室に入り、丸いテーブル席に座ると、3人でメニュー表を眺め始めた。
『至福亭』は料理も酒も種類が豊富で、しかも味がいい。


「あっ!チョコレート!食べたいわ!」

「今日は特別にケーキを頼んであるから、チョコレートは持ち帰りね」

「やったわ!」

「セガールさん、酒はどれにします?」

「このブランデー。折角の誕生日パーティーだ。たまには、いいものが飲みたい」

「おっ。それは俺、飲んだことがないです。俺もそれにします。シェリーはジュースでいいか?」

「うん。オレンジジュースがいい。この子羊のステーキが気になるわ」

「美味いぞ。それにするか?」

「うん」

「俺はー、どうしようかな。子羊も好きなんだけど、蟹グラタンも気になる……」

「分けっこすればいいじゃない」

「そうだな。じゃあ、とりあえず蟹グラタンで。セガールさんは何にします?」

「そうだな……どうせなら違うものを頼むか。タンシチューにする」

「タンシチューって何?」

「牛の舌のシチュー」

「牛の舌!?そんなとこ食べるの!?」

「美味いぞ」

「マジで?」

「あぁ。一口食べてみるといい」

「えー。じゃあ、試してみる」

「あとは、適当に摘めそうなのをいくつか頼みますか」

「あぁ」

「店員呼びますねー。シェリー。そこの鈴を鳴らしてくれ」

「これ?紐を引っ張ればいいの?」

「そ。多分一回でいいよ」

「はぁい。えいっ」


シェリーが天井からぶら下がっている紐を引っ張ると、すぐに店員がやって来た。カールが店員に注文を全て伝えると、店員が笑顔で頭を下げて出ていった。
すぐに飲み物が運ばれてきたので、先に乾杯をすることになった。
シェリーが軽く咳払いをしてから、笑顔で口を開いた。


「2人の誕生日にかんぱーい!」

「「乾杯」」

「おめでとう!2人とも、また一つおじさんになったわね」

「俺はギリギリお兄さんです」

「ははっ。本当にギリギリになってきたな」

「まだ大丈夫です。まだギリギリお兄さんです」

「わぁ!このオレンジジュース美味しい!」

「このブランデー、めちゃくちゃ美味くないですか?香りがやべぇです」

「美味いだろう?俺も飲むのは随分と久しぶりだ」


飲み物を片手にわいわいお喋りしていると、今度は料理が運ばれてきた。それぞれ注文したものを交換して食べたりしながら、美味しい料理と酒を楽しんだ。
何度か酒の追加注文をして、料理が全て空になると、シェリーがまた天井からぶら下がっている紐を引っ張って店員を呼び、ケーキを運んできてもらうよう頼んだ。
然程間を置かずに運ばれてきたケーキには大きなクッキーがのっていて、クッキーにはチョコレートで『セガールとカール お誕生日おめでとう』と書かれてあった。なんとも気恥ずかしいが、嬉しくて思わず笑ってしまった。
果物がふんだんに使われている美味しいケーキを食べると、いよいよプレゼント交換の時間になった。

シェリーが楽しそうに笑いながら、鞄から2人分のプレゼントを取り出した。


「はい。こっちはパパで、こっちはカール」

「ありがとう。シェリー」

「ありがとな。シェリー。セガールさんには俺からも。どうぞ」

「ありがとう。カール。これは俺からだ」

「ありがとうございます!」


セガールはカールからもプレゼントを受け取り、自分の鞄に入れていたプレゼントをカールに手渡した。


「ねぇねぇ。開けてみてよ」

「あぁ」

「うん」


先にシェリーからのプレゼントを開けてみた。品のいいデザインの皮の手袋とカモメ模様のエプロンである。手袋はセガールの手にピッタリだった。
セガールは嬉しくて、満面の笑みでシェリーにお礼を言った。


「エプロンは3人お揃いなのよ!」

「それはいいな。明日から早速使おう」

「うん!」

「カールのは……硝子ペンか!いい色だな。ありがとう。持ちやすいし、ありがたく使わせてもらう」

「カール、言っていい?」

「いいよー」

「硝子ペンも色違いのお揃いなのよ。パパが海とカールの色で、私が空の色で、カールがパパの色」

「海はともかく、カールの色?……あぁ!瞳の色か!」

「そう!あれな2人は瞳の色のものを贈り合ったりするのよ!」

「なるほど。……ちょっと照れくさいな」

「はははっ。セガールさんからのプレゼントも開けていいですか?」

「あぁ。気に入ってもらえるといいんだが」


セガールは少しドキドキしながら、カールが包装紙を外し、箱を開けるところを見守った。
箱の中を見たカールが、嬉しそうな歓声を上げた。


「腕時計!しかも羅針盤つき!」

「防水加工がしてあるから、海に落ちても壊れない。羅針盤で方向が分かれば、どんな時でも俺達の元へ帰ってこれるだろう?」

「ありがとうございますっ!大事に使わせてもらいます!」


カールが本当に嬉しそうに笑って、自分が着けていた古ぼけた腕時計を外し、セガールが贈った腕時計を着けた。ベルトが丈夫なものだし、時計本体も頑丈なもので、ちょっとやそっとじゃ壊れない。カールの身を守る、ちょっとした一つのアイテムになるといい。
カールが嬉しそうに笑って、シェリーに腕時計を自慢している様子を眺めながら、セガールはなんだか胸の奥が擽ったくて、小さく笑った。

家で食べるようにチョコレートも買い、3人で手を繋いで、暗くなった道を歩いて帰る。シェリーがスキップするような軽やかな足取りで、嬉しそうに笑った。


「最高の誕生日パーティーだったわね。ご飯もケーキもすっごく美味しかったし」

「そうだな。2人ともありがとう」

「いえいえ。俺もありがとうございます」

「帰ったらチョコレートね!」

「カール。チョコレートに合うブランデーがある。飲むだろう?」

「勿論いただきます!セガールさんのおすすめの酒は全部美味いので!」

「ははっ!俺のとっておきの一つだ。多分、気にいると思うぞ」

「やったー。楽しみです」

「私はホットミルクがいいわ」

「帰ったら作ろうか。チョコレートのお供には蜂蜜抜きの方がいいよな」

「えぇ!」


丘の上の家に帰り着くと、順番に風呂に入り、皆パジャマで、お楽しみのチョコレートの時間である。セガールとカールはブランデーを、シェリーはホットミルクを飲みながら、美味しいチョコレートを楽しんだ。
明日が休日ならよかったのだが、セガールは明日も仕事だ。まだまだカールと酒を飲みたかったのだが、諦めて、そこそこの時間になったら解散して自室へと引き上げた。

セガールは貰ったプレゼントを書き物机の上に並べて、小さく笑みを浮かべた。
シェリーからのプレゼントは本当にものすごく嬉しいし、カールからのプレゼントもすごく嬉しい。
硝子ペンを手にとって、海とカールの色を眺める。明日から早速使おう。使うのが少し勿体無い気もするが、折角のプレゼントだ。使わない方が勿体無い。
今は離れた海の色に懐かしさを感じるし、カールの瞳の色だと思うと、自然とカールの笑顔が頭に浮かぶ。
硝子ペンも色違いのお揃いだというのも嬉しい。カールはセガールの色を持っているそうだ。なんだか照れくさい。恋人のフリをしているから買ったのだろうが、それでも、何故だか妙に嬉しい。

セガールは硝子ペンを仕事用の鞄に入れると、ベッドに上がって布団に潜り込んだ。
どうにも嬉し過ぎて眠れる気がしないが、寝ないと明日の仕事に支障が出る。セガールは幸せな溜め息を一つ吐いて、目を閉じた。

今年の年越しは3人で過ごせる。カールと今度は一晩中酒を飲んでみたい。休みになったら、酒を多めに買わなければ。久しぶりにゆっくりと酒を楽しめそうだ。
セガールはワクワクしながら、眠りに落ちた。

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